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最近の金融経済動向(2024年5月)


実質賃金、24ヶ月連続マイナス

 忘れもしない2022年の、あの日以来、グローバル経済を前提としたサプライチェーンは崩壊し、コストプッシュ型で物価が上昇。30年間デフレ経済だった日本でも、原材料費の高騰が無視できない領域に突入し、値上げラッシュに。

 しかし、大企業の一部を除けば、物価高に見合うだけの賃上げには至っていないのが現状で、その結果が2年間、実質賃金がマイナスであり続ける体たらくである。

 なぜそんなことが起きているのかを端的に記すなら、日本は資源を輸入に頼らざるを得ない性質上、原材料費が高騰した分を価格転嫁したところで、値上げしたお金は外貨に消えていく構造となっているからに他ならない。

 そうして海外で売れるものを作ら(れ)ず、海外から買ってばかりいれば、日本円の価値が下落して、円安となり物価高に拍車が掛かる。

 結果として、物価は上がるが、賃金が上がらず、可処分所得がここ2年間減り続けているのが現状で、危機感を持った人から順に、NISAを駆使して日本円を、インフレ耐性のある株式に変換していることで、投資はギャンブル的な偏見が根強い日本で、投資ブームとなっているものと思われる。

 とはいえ、蓋を開けてみると、オルカンやアメ株が人気過ぎるあまり、更に円安に拍車を掛けている訳で、預金で眠っている個人資産を鑑みると、日銀の外貨準備高という名の、為替介入できるカードがいかに限定的かが理解できる。

年収300万円台で暮らせるの?→無理ゲー

 そうして円安が円安を呼ぶ昨今、観光として日本に訪れる外国人こそ多いものの、円安、激務、低賃金の三重苦で、海外から出稼ぎに来てくれる人は減少傾向にあり、むしろ、日本の若者が海外に出稼ぎに行く時代となりつつある。

 円安により日本はオワコン的な悲観論も度々目にするが、安い国ニッポンに成り下がったことで、TSMCが熊本に工場を建てるような、外資からの大規模投資が実現している側面もある訳で、それにより物作り大国として再浮上するシナリオもゼロではないと考える。

 とはいえ、人口減少社会である事実は変わらず、海外からの働き手が期待できない状況まで悪化すると、絶対的な労働力不足に対して、二進も三進も行かなくなり、機械化やデジタル化が一気に進んだり、需給バランスで労働者の賃金上昇圧力に変わることが期待される。

 そのため、今ほど若者が無駄に苦しめられるような、シルバーデモクラシーであり続けることも、10年、20年スパンで捉えると難しくなる変化を促す意味で、円安も悪いことばかりではないと、敢えて悪い円安を謳うメディアへのアンチテーゼを記しておく。

長期金利上昇、株価にはマイナス

 日銀が金融政策正常化に向けて、日本も金利のある世界に移行しつつある。基本的に金利の上昇は、銀行株を除けば株式市場全体にとっては、マイナスに作用する。

 バブル崩壊前の郵便貯金が典型例で、元本保証で6~7%の利息が貰える状態で、わざわざリスクを取って株式で運用しようとは思わないだろう。

 6~7%以上のリターンが出なければ、郵便貯金の方がローリスク、ハイリターンとなってしまうからで、ゆえに株式にとって利上げはマイナスに作用する。

 また、10年物国債の利回りが上昇することは、住宅ローンの固定金利が上昇することを意味する。お金の若者離れと相まって、昭和的価値観の、結婚して、新築をローンで購入して、マイホームで子供を育てる図式は贅沢品化しており、現役世代が高い利子を払ってまで、新築一戸建て住宅を買うビジョンが見えて来ないのが、当事者としての肌感覚でもある。

 現に先行指標とも言える不動産セクターの銘柄、特に分譲戸建て住宅のシェアが高い銘柄ほど、株価が下がり始めており、住宅市況の冷え込みは間違いないだろう。

 それに加えて、誰も家を買わなくなると、家具や家電などの新調も控えるようになるため、必然的に小売業の業績も悪化する可能性が高く、主要な小売業の決算短信を読む限り、あまり先行きが明るくない展望だと思わざるを得ない。

 実質賃金が2年間連続で下がり続けている結果、完全に内需が死んでいるわけで、痛みを伴ってまで、金融政策正常化をした先に何があるのか、市場は日銀政策が読めておらず、翻弄されているようにも思える。

三井住友カード、中小加盟店手数料3割下げ

 クレカ積立ポイ活界隈で改悪と名高い三井住友カードが、中小加盟店手数料をPayPayと同水準に下げて対抗する姿勢を示したことで、Vポイントの統合然り、キャッシュレス決済の覇権を取るつもりでいることは伝わった。

 個人的には銀行口座やクレカが安易に作れる日本社会なら、わざわざQRコード決済を普及させる意義は見当たらず、クレカ決済が普及してくれた方が理に適っていると考えるため、今回の中小加盟店手数料率の改定は他社にも波及して欲しいとすら思う。

 とはいえ、現在主力の三井住友ナンバーレスカードは、国際ブランドがVISA、Mastercardのみと、決済するたびに手数料の一部が外貨に流れるため、日本で生まれ育ち、今後も日本で暮らすなら、日本の国際ブランドであるJCBを使い、お金を国内で循環させた方が、目先の手数料以上に国益の観点で重要だと考える今日この頃である。

JR東日本、デジタル戦略の誤算


 上記に関しては、元鉄道員の立場もあって、利用者側も一定程度のリテラシーを身に付けた方が、斜陽産業である鉄道が将来存続する上で、プラスに働くのではないか?という視点で記したため、今回はもう少し一般的な切り口で記したい。

 そもそも利用者からすれば、みどりの窓口はJR各社、どこで利用しても同一のサービスが受けられるのに対して、ネット予約などのデジタルサービスに関しては、JR各社でシステムが異なるという、分割民営化のデメリットが表出していて、一向にデジタル化が普及しないの一点に尽きると思う。

 例えば、東京駅を基準に考えると、在来線はJR東日本の管轄だが、東海道新幹線に関してはJR東海の管轄で、それ以外の北に向かう新幹線はJR東日本の管轄となっている。

 それにより、新幹線で北に向かう場合は「えきねっと」、南に向かう場合は「スマートEX」もしくは「エクスプレス予約」と使い分けなければならない。

 東海道新幹線は全区間がJR東海、山陽新幹線は全区間がJR西日本の管轄となっていることで、東京、品川、新横浜、小田原、京都、新大阪、小倉、博多で、在来線とJRの管轄が異なる捻れ現象が発生しており、難解な切符のルールと相まって、とりあえずビールの感覚で、みどりの窓口に集中してしまうのだろう。

 JR各社の垣根を越えて、みどりの窓口みたいな共通のシステムでデジタル化を進めない限り、窓口の需要が自然に減ることはないものと思われる。

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