このままでは日本は滅びる
諸行無常
フォーブスの日本長者番付で毎年首位に位置している某実業家が、日本が直面している問題に直視した上で上記のオワコン発言と、もう一人の実業家がそれに反論したことが少し前に話題となった。
これをデフレの象徴とも言える、ファッション業界の価格破壊をかつて行ったことで、今の地位を築き上げた人が、国際競争力まで考えると価格破壊は決して持続可能ではないことに気づき、スケールメリットを活かす形での高品質な衣類を適正価格で販売して、従業員に還元するデフレ脱却路線に軌道修正した上で、日本オワコン発言をしているのだから、重く受け止めるべきだと考える。
デフレの覇者が価格破壊しておいて、今更何を言っているんだ的な意見も散見されるが、個人的には時代の変化に適応して、社会全体のバランスを考えたグローバルスタンダードな経営を行っているからこそ、ガラパゴス化して縮小再生産を繰り返しては、徐々に等しく貧しくなっている日本社会の現状に警鐘を鳴らしている前提に立ち返れば、些か論点がズレているのではないかと思う。
今の若年層からすれば、ユ○クロはファストファッションの代名詞なんかではなく、高級品の部類となっており、もはや1,000円でロンTが買えてお釣りが来る時代ではない。ユ○クロこそデフレの覇者論者は凝り固まった平成の価値観を令和にアップデートした方が良いだろう。
諸行無常の言葉にあるように、世の中は常に変化し続けている。だからこそ過去の成功体験に固執せず、リスクを取って変わり続け、経営で結果を出している凄い人が、「このままでは日本は滅びる」と危惧しているのだから、素直に重く受け止めるべきだと思うが、いかがだろうか。
少数の若い人で大多数の老人をどうやって面倒見るんですか
反論で「僕はなんだか逆のように感じます」とお気持ち表明をするのは勝手だが、日本は滅びるおじさんの「少数の若い人で大多数の老人をどうやって面倒見るんですか」のド正論に対して、お金配り宇宙旅行おじさんから具体的な解決策が提示されていない以上、外部(=移民)に頼らないと近い将来、大多数の老人を面倒見るのに労働力が圧倒的に不足する現実は直視するべきだろう。
少数の若い人で大多数の老人の面倒を見るのは、何も介護などの直接的なものだけに留まらず、年金や医療と言った社会保障制度や、生活基盤となる社会インフラの保持まで広義に渡る。
出生数80万人割れからも分かるように、18年後に成人する将来世代が80万人を超えることは絶対になく、人口減少による圧倒的な労働力不足がどの業界でも起こることは、人口動態からして目に見えている。
「少数精鋭」の言葉にもあるように、徹底的に効率化して、生産性を上げていかない限り、日本人だけで日本社会を維持していくことが難しくなってくのが、2040年以降の中央値ベースのシナリオだが、ステレオタイプとしてJTCと揶揄されるような組織の中堅〜年長者が、その危機感を持って動いているようには思えない。
というのも、2024年の残業規制を発端に、私の古巣である公共交通機関のドライバー不足に伴う減便や休止、廃止が話題となって久しいが、成り手を集めるために取り組んでいることが、要約すると”やりがいアピール”以上でも以下でもなく、”賃上げ”に言及している事業者を見た試しがない。
失われた30年は、手取り20万円に満たない現業従事者の薄給激務を、いわゆる”やりがい搾取”で正当化することで、安くて便利な社会インフラが成立していた。
しかし、主に外資系企業のグローバルスタンダードな適正賃金が可視化されたことで、電車やバスのドライバーは花形職種から薄給・激務・重責と三拍子揃ったブラック労働の代名詞に成り下がり、成り手が激減した。
これは物流・輸送業界に限らず、社会にとって必須ではあるものの、構造上、直接利益には貢献しないエッセンシャルワーカー全般で、これらの労働力不足が表面化するのが、2040年に至るまでの、これから15年間に起きることだと人口動態的に予想できる。
生活必須職従事者の待遇改善ができるだけの、適正コストを社会全体が負担しない限り、ゴミの回収が来ない。郵便物が届かない。電気・水道・ガスが頻繁に止まる。子どもや老人を預ける場所がない。病院がキャパオーバーで受診できない。
そんなことが珍しいことではなくなる未来が、15年以内に地方からあちこちで表面化することを鑑みたら、徹底的に効率化して、生産性を上げていかない限り、少数の若い(日本)人で、日本社会を支えていくのは”無理ゲー”だろう。
若者は2040年に仮に日本が滅びても、身動きが取れる
その未来が到来する前提で、そうならないために、本来であれば組織内で権限を持っているであろう、中堅〜年長者が効率化や生産性を向上させるための投資と、若手の育成という名の人的資本経営のための投資を、両輪で行う必要がある。
しかし、現実は定年まで逃げ切れれば後のことは知ったことではないと、見ざる言わざる聞かざるの事なかれ主義で、現状維持という名の縮小再生産に徹し、若手は目の前の膨大な作業に忙殺されて、将来への投資をするだけの余裕が、時間的にも経済的にもないのが実情だろう。
とはいえ、今の若い世代は「このままでは日本は滅びる」ことを前提に、自助努力で資産形成をしたり、自身のスキルアップが見込める職に就くなど、会社という組織や、日本社会に依存しない前提の生き方を模索している。
そのため、いざ2040年に今の社会が維持できなくなった意味で”滅んだ”としても、40歳前後であれば「日本を見捨てる」という選択が取れる。
むしろ、15年後に身動きが取れなくなるのは、定年まで逃げ切れれば、後のことは知ったことではないと考える中堅〜年長者側の方であり、老後に沈没船で座して死を待つしかない、因果応報的な結末を老後に迎えたくなければ、少しでも将来世代のためになる方向に、今持っている権限を行使していただきたい。