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持続可能ではない、地方のインフラ。
少子化対策の効果が表れるのは20年後。
移住先で有効活用していた、ある公共施設が突如休業した。設備の不具合らしく、復旧の目処は立っていない。今ほど少子高齢化が深刻化する前の時代に、財政のザの字も考えずに造ったであろう箱物である。
ランニングコストなど、考えただけで悍ましく、利用者から多少の金を取ったところで、平時から税金で補填している、赤字垂れ流し状態なのは見て取れるため、地方で被災したJR線みたいに、そのまま廃止となってもおかしくない。
地方生活で考えたことすらなかった、盲点とも言える公共事業の存続危機だが、この傾向は今後20年で間違いなく加速するため、移住の際の懸念材料に追加した方がいいだろう。
先日公開された、YouTubeチャンネルのPIVOTでも、安芸高田市の石丸市長が、これからの20年で公共インフラの設備更新が到来するが、人口動態を鑑みれば財政が破綻するのは明白で、公共施設の削減は必須と訴えている。
宇都宮市が次世代型路面電車であるLRTを開業させたのも、鉄道とバスの中間の輸送力を持つ公共交通機関を、コンパクトシティの「核」とすることで、次の世代以降が中心地を選んで居住するようになる。
結果として僻地から人が居なくなり、限界集落がゴーストタウン化することで、住民感情を逆撫ですることなく、末端部の公共インフラの削減に着手したい思惑があるのだろう。
時期に団塊世代の全てが後期高齢者となるものの、出生数80万人割れの現状から、仮に明日から少子化対策に本腰を入れたところで、人口増で歳入に効果が現れるのは20年後。
現状では兵庫県明石市を皮切りに、市町村のトップダウンで子ども政策に力を入れる自治体が波及しているが、政府は予算を渋るため国全体としては期待できない。
つまり、これからの20年間が、生産年齢人口もとい現役世代に、最も税負担が重くのし掛かることが想定され、現状の財政に致命的な破綻がないからと、役人が大した仕事もせず、現状維持で先送りしようものなら、道路や水道管などの耐用年数が次々に到来した瞬間に、財政的には詰みとなる。
身軽さは確保しつつ、地方都市が最適解?
そんな時代に、我々はどう生きるか。私が調べた人口動態のデータが古くなければ、今後20年で少なくとも人口が減少しない見込みの自治体は、日本全国で東京都の千代田区、港区、中央区とたったの3箇所である。東京都内の話ではなく、日本全国である。
上記3箇所の自治体に居住している人であれば、そこに居住できる経済力と相まって、何ら心配することなく、終の住処を購入して定住するのがベストな選択となるだろう。
しかし、それ以外の場所に住まうパンピーは、どこの自治体も爆弾を抱えいるものと捉え、ヤバいと感じたら1年以内には移住できる程度の身軽さが、今後の人口減少時代の日本で生きていく上で、重要な要素になるだろう。
そこで狙い目になるのは、個人的には以前から繰り返し主張している、地方都市である。札幌、仙台、広島、福岡、北九州は鉄板だが、今後の人口減少を鑑みても、人口10万人超の中都市以上の規模であれば、そこそこインフラが整っていて、住む分には困らない。
あまりに人口が少なく人口減少が深刻だと、今は不便なくとも商圏人口の観点から、大型スーパーが経営不振で撤退するリスクが高く、税金の塊に等しい乗用車ありきの生活となる可能性が高い。
とはいえ、地方で一般的なクルマ社会での生活も、加齢とともに判断能力は低下し、免許返納の選択肢が付きまとう。何かの拍子にクルマが持てなくなると、最終的には割高な移動販売に頼らざるを得なくなるだろう。
若ければフットワークの軽さから、思い切って移住できるが、ある程度、歳を重ねると身動きが取りづらくなるのが一般的で、身動きが取れなくなってから限界集落化すると、医者が街に居らず、救急搬送はドクターヘリなんて事態になりかねない。
身軽な時期は住む場所を好きに選べば良いが、身動きが取れなくなる頃には、住み慣れた街を捨てることを含めて、住む場所を慎重に選ぶ必要に迫られるのが、未来の日本社会の姿なのだろう。
ライフラインの寸断に備える。
これからの時代、公共インフラは機能して当たり前ではなくなり、老朽化によって偶に寸断するものという認識が一般化するかも知れない。
これはかつて鉄道員として勤めていたことで、見える景色なのかも知れないが、現状の社会インフラ全般、エッセンシャルワーカーの低賃金によって、ギリギリの状態ながら、かろうじて支えられている状態に等しいからだ。
鉄道、バス、コンビニ、郵便、物流など、民間企業が担う事実上の公共インフラに限らず、電気、ガス、水道などの独立採算制の公共事業も、軒並み人口減少で収入源。
警察、消防、救急、図書館といった公共施設や、ゴミ収集などの事業も、税収減により予算が削減されている傾向にあるため、大局的な構造は変わらない。
収入が増える見込みがない以上、赤字を防ぐためには支出を削減する他なく、それは社会に必要な仕事をする労働者が、低賃金でこき使われることを意味するが、社会にとって必ずしも必要ではない仕事の方が稼げる傾向にある時代に、敢えて薄給激務な職に就きたがる者など居ない。
結果として、現状のバス業界のような、慢性的な人手不足でコストカット(減便)、更なる減収、人件費カット、人手不足…の負のループを繰り返し、誰のためのインフラなのか、よく分からない状態となる未来が見え隠れしている。
バスなら移動できず不便で終わるが、電気や水道が同じ道を辿ると、時には生命に関わるのは想像に難くない。現に全国各所で耐用年数を超えた水道管が計画的に交換できず、破損してからの修繕対応と後手に回っており、自然災害などで同時多発的に破損して、キャパオーバーとなれば、いつ復旧するか定かではない。
だからこそ、この先ライフラインは寸断し得るものと捉えて、仮に寸断しても何かしらの支援が受けられるまでの、自衛手段は確保するのが、地方での生き方となるだろう。私は断水に備えて携帯浄水器を所有している。
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