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トラック一杯の薬より、一台の自転車


地方×自転車生活の合理性

 タイトルはドイツのことわざと言われているが出典不明で、どちらかといえば医療費抑制政策のための常套句感が強いが、言わんとすることは理解できる。

 文明が発達したことによる過度な効率化で、自家用車や交通機関で移動することを前提に、社会システムが構築されていることで、現代人の宿命とも言える運動不足を引き起こし、数々の現代病を生み出しては、薬漬けとなっているが、適度な運動に勝る薬はない。

 私が実家に帰省した際に、10万円近いロードバイクを買った話をしたら、そのお金の使い方が有り得ないと肉親に反応されたことは過去に記したが、ランニングコストがほぼゼロで、運動しながら効率よく移動するための道具が、たったの10万円という、一台の自転車的な発想には至らないらしい。 

 そうして、利便性も長閑さも中途半端な”トカイナカ”で、軽自動車を保有しては運動不足でジムの契約をしている方が、お金の使い方としては、よっぽど有り得ないと個人的に思うだけでなく、典型的なトラック一杯の薬コースだろう。

 そう考えると、都市部のロジックに毒されて消耗している方ほど、ドロップアウト組の私が行う、地方移住はするものの自家用車は所有せず、生活圏内を自転車と徒歩で完結させるスタイルが、数年先に見直される可能性があっても良いのではないかと思う。

 僻地にもなると、最寄駅から徒歩○分的な発想は皆無であり、駅に限らず、コンビニやスーパーへのアクセスが平気で5km、10km先になるため、生活を完結させるために、否応にも自転車で運動する習慣が身に付く意味で、これほど強制力のある運動習慣も他にないのではないかと思う。

 デブではないが出不精かつ、運動嫌いで自主トレの類を継続できた試しがない私が、実体験をもとに有効だと思うのだから、多くの方にとって有効な、再現性のある運動習慣づくりだと考えるが、いかがだろうか。

レール上の人生=トラック一杯の薬コース?

 その原型となっているのは株主優待の有効期限に追われて、自転車で爆走して優待消化に勤しむ桐谷さんかもしれない。

 しかし、そもそも地方だと金券タイプの株主優待券が利用できる場所が極端に限られることや、元鉄道員としてはあるまじき、期日にルーズな私は優待に追われる生活は御免被りたい程度に相性が悪く、毎年絶対に使うものでもない限り、大人しく税引後の配当で、好きなものにお金を使う方が性に合っている。

 そのため、優待は専ら有効期限のないものや、宅配で届く自社製品詰め合わせ&カタログギフト、Webで使えるクーポン券が贈呈される銘柄を選んで保有するよう努めているため、優待消化目的で自転車を爆走させるようなファンサービスは基本的にない。

 いくらブラックで有名な鉄道業界とはいえ、20代半ばで内臓を悪くする程度に、ヒトとして虚弱な個体であることは自覚しているため、20代ながら健康には人一倍気を遣っている側面はあるものの、先の自転車生活も相まってか、地方移住してから四季が一巡どころか、二巡しそうな頃合いになっても、医者に頼るような病気をしておらず、かかりつけ医が居ない。

 世間一般では勝ち組側とされるレール上の人生は、私からすればトラック一杯の薬コース以外の何者でもなかった。

 高卒で社会に出て、半年に一度の職域健康診断を強制されながらも、10代のうちに自律神経がイカれて気管支炎と気管支喘息を患ったり、20代で心電図の異常を指摘されては、定期的に循環器内科でホルター検査をするも虚しく、20代半ばで大病を患った。

 そんな鉄道員時代と比べて、ドロップアウト後の体調はすこぶる良く、悪いのは視力と人付き合いだけと、世間的には負け組と揶揄されるドロップアウト組は、暇を持て余しているからこそ、一台の自転車コースな人生を歩めている節はある。

コロナ禍で病院も自粛した結果、健康になった日本人

 人はいつか必ず死ぬ以上、医者にかかっては、やれ貴方は〇〇の数値が基準値から外れているから〇〇はやめなさいと、健康不安にビビり散らかしながら生きても、私のようにある日突然一発退場のレッドカードをお見舞いされ、20代の1/120が病床でカレンダーを捲って終わる虚無感を味わうくらいなら、知らぬが仏で好き勝手生きた方がどう考えてもQOLは高い。

 現にコロナ禍で医者にかかるのを自粛して、手洗いうがいやマスク着用を徹底したことで、却って日本人全体で見ると健康になったという、ギャグみたいなデータが出てしまっている以上、自分の体調は自分で整えるのが一番だろう。

 20代の若さでトラック一杯の薬コースと、一台の自転車コース、その両方を経験したからこそ、健康とは何か?どちらが人間らしい生き方をしているのか?そして、我々がいかに常識に毒されているのか?考えさせられる。

 ガンガン稼いで、豊かさの象徴とも言える良い車を買っては、維持費に加えて運動不足で医療費や怪しい健康法にお金を垂れ流すくらいなら、良い靴と自転車でも買って、身体を動かす生活をしていた方が、よっぽど健全だろう。

 最近はもっぱら、行きだけ自転車。出先で昼間から飲んだくれて、帰りはダラダラ歩いて帰る、もはや自転車すら使わないアル中ダメ人間スタイルとなりつつあり、雨の日を除いて歩数計が1万歩を超える日が多くなった。

 人生史上、一番運動しているのが、アラサーおじさんに突入している今なのは何だか皮肉だが、せっかく体力が付いているのなら、インドア派の癖してアウトドアウェア好きという矛盾から、名実を合わせるアクションを何かしら起こすべき時期なのか、悶々とする今日この頃である。


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