カスタマーハラスメントとは?概要や注目される理由、対応動向について解説
近年、カスタマーハラスメントはニュースで頻繁に取り上げられ、注目度が高まっているキーワードです。しかし、以下のような疑問を持っている方は少なくありません。
・カスタマーハラスメントって何?
・カスタマーハラスメントが注目される理由は?
・カスタマーハラスメントへの対応方法とは?
カスタマーハラスメントとは、顧客による過度で不要な要求を伴う言動のことです。職場での迷惑行為の中で大きな増加傾向を示しており、業務停止や従業員の離職・休職をもたらす行為として、国や企業が問題視しています。
この記事では、カスタマーハラスメントの概要とともに、注目度が高まっている理由や最新の対応動向について順にお伝えします。カスタマーハラスメントを重大かつ頻発するリスクとして捉え、ビジネスを担う従業員保護を推進しましょう。
1.カスタマーハラスメントとは?
カスタマーハラスメントは、ビジネス運営に悪影響を及ぼす過度な迷惑行為として広く認識されています。
国や企業が本格的に対策を講じ始めたカスタマーハラスメントに関して、押さえておきたい基本事項は3つに整理されます。
カスタマーハラスメントの定義
スターハラスメントと正常なクレームとの違い
カスタマーハラスメントの実態
カスタマーハラスメントは受ける側だけでなく、加害者にもなりかねないため、実態を適切に把握しておきましょう。
1-1.カスタマーハラスメントの定義
カスタマーハラスメントとは、一般的に顧客による過剰・不当な要求や、行き過ぎたクレーム言動のことです。
昨今、カスタマーハラスメントが報道などで取り上げられ、対処すべき迷惑行為として国も対応を進めようとしています。
そこで、2021年に厚生労働省が関連対策マニュアルを発行し、その中でカスタマーハラスメントを以下のように定義しました。
顧客からの要望はビジネスチャンスにもなり得ますが、全ての要望を受け入れる必要はない点を国も明らかにしています。
1-2.カスターハラスメントと正常なクレームとの違い
カスタマーハラスメントと正常なクレームの違いは、妥当性の有無で分類するアプローチが挙げられます。
妥当性を判断する上では、厚生労働省の関連マニュアルにある「要求内容」と「要求手段・様子」の2軸でアプローチするのが賢明です。
例えば、東京都が示したカスタマーハラスメントの概念例は、以下のように整理されます。
ポイントは、明確に白黒をつけるのが困難であり、特にグレーゾーンに該当する領域の捉え方が不明瞭である点です。
そのため、カスタマーハラスメント対策を講じる際には、企業単位での判断基準の設定が重要です。
1-3.カスタマーハラスメントの実態
職場でのハラスメントの発生率を比較すると、2021年からの3年間で最も発生率が高かったのがカスタマーハラスメントです。
厚生労働省が2024年5月に公表した調査結果によると、約87%の企業がカスタマーハラスメントが発生したと回答しています。
また、カスタマーハラスメントと判断された事案の90%以上が顧客(消費者)から従業員への行為です。
さらに、60%以上の企業がカスタマーハラスメントで業務遂行が困難になったり、従業員の労働意欲が低下したりしています。
参照:厚生労働省「令和5年度 厚生労働省委託事業職場のハラスメントに関する実態調査報告書」
つまり、カスタマーハラスメントはB2Cビジネスで頻発し、ビジネス運営に悪影響を及ぼす問題行為である点は明らかです。
2.カスタマーハラスメントが注目される理由
カスタマーハラスメントへの注目度は、ここ数年で急激に高まっています。
注目度が高まっている理由は、次の3点に整理されます。
発生件数が増加傾向
ビジネスへの影響度の拡大
企業によるカスタマーハラスメントへの対応必要性の高まり
社会全体が対処すべき問題と捉え始めているカスタマーハラスメントの動向を、さまざまな切り口から理解しておきましょう。
2-1.注目理由1:発生件数が増加傾向
カスタマーハラスメントが注目されている理由の1つとして、他の迷惑行為と比べ、発生件数が増加傾向である点が挙げられます。
厚生労働省の報告によれば、過去3年間の相談件数が最も増加しているのがカスタマーハラスメントです。
また、先述したように過去3年間の発生率を比較すると、カスタマーハラスメントが最も多く、3年前の調査からの増加幅も最大です。
年は企業への過度なクレーム行為がSNSなどで拡散され、アクセス数やフォロワー数の増加目的に実施されるケースも少なくありません。
つまりSNSにより消費者の発言力が増して、企業が無視できなくなっている状況も、カスタマーハラスメントが発生しやすい要因と言えます。
2-2.注目理由2:ビジネスへの影響度の拡大
カスタマーハラスメントが注目される理由には、ビジネス運営を左右する影響力がある点も指摘されています。
カスタマーハラスメントを受けると、業務の停滞や従業員の休職・離職、市場における評価が低下する場合があるためです。
実際にカスタマーハラスメントの被害を受けた企業が被った主な損害内容と発生比率は以下のとおりです。
特に業務遂行が困難になったり、従業員における業務への意欲低下が顕著に見られます。
カスタマーハラスメントにより、業務を止めざるをえなかったり、従業員が働けなくなったりするのは、企業において無視できない損害です。
2-3.注目理由3:企業によるカスタマーハラスメントへの対応必要性の高まり
カスタマーハラスメントが注目される理由には、企業がカスタマーハラスメントからの従業員保護を求められるようになった点も挙げられます
もともと、労働契約法において安全配慮義務が規定されており、事業主は従業員をさまざまな迷惑行為から保護しなければなりません。
さらに、2019年に改正された労働施策総合推進法を踏まえて、厚生労働省は企業に向けてカスタマーハラスメント対策の指針を出しています。
参照:厚生労働省「令和2年厚生労働省告示第5号」
その結果、カスタマーハラスメントによる被害を目の当たりにした企業が、自主的な対応方針を策定・公表するケースが増えています。
一方で、「お客様は神様」との考えから、過度な顧客要求であっても拒否せずに受け入れようするケースは少なくありません。
3.カスタマーハラスメントへの対応動向
カスタマーハラスメントの防止や抑止に向けて、国や企業が積極的に動き出しています。そこで、カスタマーハラスメントへの対応として、押さえておきたいポイントは次の3つです。
カスタマーハラスメントからの従業員保護を義務化検討
カスタマーハラスメント対応方針の公表拡大
カスタマーハラスメントの加害者になるリスクの把握
ひとたびカスタマーハラスメントを受けると、ビジネスに影響するだけでなく、直接被害を受けた従業員の生活にも影響します。
そのため、さまざまな切り口から対策を講じていくことが重要です。
3-1.カスタマーハラスメントからの従業員保護を義務化検討
政府はカスタマーハラスメントからの従業員保護を義務化すべく、関連法案の改正を視野に入れています。
職場における迷惑行為への対応として、2019年に労働施策総合推進法を改正してパワーハラスメントへの対応が義務化されました。
それを踏まえ、政府は同法にカスタマーハラスメントへの対策規定を追加する改正案を検討しています。
また、自治体もカスタマーハラスメント防止に関する独自のルール作りを進める機運が高まっています。東京都は全国初の関連条例の策定を目指しており、今後は自治体によるカスタマーハラスメントの抑止に向けた取り組みも加速するでしょう。
3-2.カスタマーハラスメント対応方針の公表拡大
社外に対してカスタマーハラスメントへの取り組み内容を公表し、自社の考えを明示する企業が徐々に増加しています。カスタマーハラスメントに毅然と対応する方針を顧客に示すことで、業務停止や従業員離反のリスク低減を狙った取り組みです。
カスタマーハラスメントの対象行動や該当する言動への対応方針を示している企業例は以下のとおりです。
社内向けの対応方針策定に加え、社外への自社の考えを公表により、カスタマークレームの発生抑制を図る取り組みは今後拡大するでしょう。
3-3.カスタマーハラスメントの加害者になるリスクの把握
カスタマーハラスメントの加害者になる場合のリスクを理解しておくことも、抑止策として効果的な方法です。なぜなら、カスタマーハラスメントは受けるだけでなく、自分自身がする側になってしまう可能性も考えられるためです。
万一加害者として訴えられた場合には、損害賠償責任を負ったり、刑事罰の対象になったりする場合もあります。
想定される刑法上の罪には以下のようなケースが挙げられます。
侮辱罪
脅迫罪
強要罪
暴行罪
傷害罪
名誉毀損罪
威力業務妨害罪
カスタマークレームが単なる迷惑行為ではなく、犯罪として扱われる可能性を理解しておきましょう。
カスタマーハラスメントはビジネスリスクの1つとして対応する必要あり
この記事では、カスタマーハラスメントの概要とともに、注目されている理由や最新の対応動向について紹介しました。
カスタマーハラスメントは、過度・不当な要求を伴う言動を指し、職場において発生件数が急増している迷惑行為です。
被害にあうと業務がままならなくなったり、従業員の業務意欲が低下してしまい、最悪の場合は従業員が休職や離職する場合もあります。
そのため、国・自治体・企業はカスタマーハラスメントを重大な問題と捉え、それぞれの立場から対策を講じています。
カスタマーハラスメントをビジネスリスクとして的確に対処し、業務停止による売上低下や従業員の離反を防ぎましょう。
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