リサーチを広げるモメンタム【RESEARCH Conferenceプレイベント レポート】
デザインリサーチ、UXリサーチをテーマとした日本発のカンファレンス「RESEARCH Conference 2023」を5月27日に開催します!「より良いサービスづくりの土壌を育むために、デザインリサーチやUXリサーチの実践知を共有し、リサーチの価値や可能性を広く伝える」ことを目的とした本カンファレンス。第2回目の開催である今回のテーマは「SPREAD 広げる」です。
本イベントに先駆け、4月17日にプレイベント「RESEARCH Conferenceプレイベント 〜リサーチを広げるモメンタム〜」をオンライン配信しました。本記事ではその模様をお届けします。
ゴールドスポンサーとしてプレイベントの会場提供をしていただいた株式会社ユーザベースのオフィスにて、株式会社ニューズピックス Product Design Team Leader・鳥居 大さん、株式会社LIFULL UXリサーチャー・小川 美樹子さん、株式会社ユーザベース 執行役員 SaaS事業CDO・平野 友規さん、株式会社Shippio プロダクトデザイナー&プロダクトデザインディレクター・西藤 健司さんを迎えてLTやトークセッションを実施しました。
プレイベントでは、各社におけるリサーチの広がりの事例紹介や、昨年の本カンファレンスで生まれた変化、それらを加速させるためのヒントなど、リサーチの浸透と拡大を感じられるトークが展開しました。
リサーチが浸透しなかった組織が、経営層の理解をきっかけに変化
前半パートでは、株式会社ニューズピックス Product Design Team Leader・鳥居 大さん、株式会社LIFULL UXリサーチャー・小川 美樹子さんにご登壇いただきました。「リサーチを広げるモメンタム」がテーマのLTです。ニューズピックス社とLIFULL社でそれぞれで起きた社内のリサーチ文化の盛り上がりについてご紹介いただきました。
鳥居さんのLTのタイトルは「NewsPicksにおけるユーザーリサーチのモメンタム」。ニューズピックス社では、2023年1月にプロダクトデザインチーム内にUX Research Unitが誕生。組織OKRにリサーチ前提のKRが複数組み込まれたことにより、組織全体でリサーチブームが起こっています。「実は2018年あたりからリサーチには取り組んでいたものの、組織へ浸透せずじまいだったんです。活動は部活動レベルに留まってしまい、ナレッジが溜まりづらい状況にありました」と、鳥居さん。
そんな状況が変わったのが、2022年末。ニューズピックス社 CTO/CPO・文字 拓郎さんが西口 一希さん著『顧客起点の経営』を読み「リサーチに向き合うことは経営に向き合うことだったのか」と気づきがあったとのこと。「ここがタイミング」だと感じ、鳥居さん発案でリサーチチームが立ち上がりました。
チーム発足前の1年半を、鳥居さんは“過度な期待と期待されなさをバランスする期”と呼びます。この期間では①リサーチは銀の弾丸ではない、②息を吸うようにリサーチをするのだ、③やる・見せる・巻き込むの3つの柱でリサーチを推進し、組織への浸透を図りました。
鳥居さんは、浸透した組織全体でリサーチに取り組んでいる現在のモメンタムを「親会社であるユーザベースのバリューの一つ、"ユーザーの理想から始める"が重要なタイミング」と捉えます。「"ユーザーヒアリングは大事だけれど、そのままはつくらない"、そして"自分が本当に心からほしいものをつくる"。バリューの軸となるこの2つの行動指針を改めて意識してリサーチと向き合っています」
同じくOKRで事業推進を図っている株式会社メルペイの草野さんは、OKRだけに固執しすぎない重要性を示唆。「目標が変わったのならOKRを再設定したり、再設定することにより生まれる価値をしっかりすり合わせたり」と、勢いを損ねないための工夫を目標設定に盛り込んでいるそうです。鳥居さんは草野さんの柔軟な目標設定に頷きつつ、「リサーチで得られる成果は、定性・定量の両側面がある」と話します。「短期的なファネルの改善をし、プロダクトサービスの価値を引き上げることに挑戦するなど、分かりやすいOKRを設定して実績を作ると、社内理解が進んで環境がさらに整いやすかったかもしれませんね」とモメンタムを加速するヒントを与えてくださいました。
とにかく行動を続けること。モメンタムはつくらず波に乗る
続いて、小川さんのLT「UXリサーチを組織に広げる次のステップ」です。LIFULL社には、ユーザーファーストな開発を促進するため、組織を横断してUXリサーチなどを実施するユーザーファースト推進ユニットが存在します。一部署のグループだったものが、UXリサーチを会社全体に広げるべく、発足7年目で独立した組織へと拡大したそうです。
「組織が大きくなるのはモメンタムを感じる瞬間の一つ」と小川さんはチームの成長を噛み締めながら、「1〜2年ごとにモメンタムがありました。そして、大きな勢い・はずみが起こる前にはいつも、新たな取り組みに挑戦していたことに気づいたんです」と、これまでの変遷を振り返ります。「リサーチから縁遠い人から相談を受けることが増えたり、社外の事例を参考にしつつ新しいリサーチの取り組みを提案されたりして、モメンタムが増しているのを実感しました」と、小さな変化がやがて大きな波となっているようです。
ユーザーファーストを浸透させるためにUX成熟度を意識したサポートの実施や、開発チームで広がっているプロダクトマネジメントとの連携を始めたことが、現在のモメンタムにも影響していると小川さんは考えます。
リサーチチーム発足から7年が経過しているLIFULL社。順調に組織が拡大しているようですが、勢いが凪いでいる時期もあったそうです。「力を注いでも後押しがなくて波に乗れないときは、後回しにしていた業務に着手するなどメリハリをつけていました。普段できないリサーチに挑戦したり、数年後を見据えてデータの整理を行ったり。絶えず行動を起こしていれば、後からちゃんとモメンタムがついてきます」と、リサーチャーの背中を押す言葉でLTを締めくくった小川さん。
LIFULL社のモメンタムに触れて、鳥居さんは「モメンタムを最高潮にまで高めるためには、絶やさずリサーチの波を起こし続け、タイミングを見極めてアクセルを踏み込む必要がありますよね」と小川さんの体験に共感。草野さんも「リサーチのモメンタムは“つくる”というより、“来るべきときに備えていかに準備をするか”“今までやってきたことをいかに活かすか”がポイントになるんですね」と2社の事例から新たな視点を得ていました。
リサーチの社内認知獲得で、開発現場や採用活動が前進
後半パートは、「昨年登壇からの変化」をテーマに株式会社ユーザベース 執行役員 SaaS事業CDO・平野 友規さん、株式会社Shippio プロダクトデザインディレクター・西藤 健司さんにご登壇いただきました。
平野さんの昨年のセッションテーマは「リサーチ文化を組織に埋め込むために実践したこと」。デザイナーとしてユーザベースに参画してからの3年間での、リサーチ文化を根付かせた活動をフェーズごとにご紹介いただきました。
平野さんの昨年のセッション内容はぜひレポートをご覧ください!
「登壇後、反響や変化はありましたか?」という松薗さんからの質問に、「リサーチ活動をまとめたことで社内認知が得られて、社内の雰囲気が変わった」と答える平野さん。
また、ご自身のリサーチとの向き合い方にも変化があったそうです。「当時は、“プロダクト開発の全てをプロダクトオーナーが決めていいものか”とモヤモヤしていた時期で……。しかし、登壇後、“BtoBとBtoCのリサーチは違っていい”“事業フェーズにおいて求められるものは違うから、当然リサーチのやり方は変わっていい”と気がつきました。PdMの方とも認識が揃ったことでプロダクトの方向性が定まり、疑いなく開発のメンバーとも話し合いができるようになりました」
公募セッションにご登壇いただいた西藤さんのセッションテーマは、「Shippio全社員UXリサーチャー化計画 - 顧客理解・仮説検証を全社員で行う組織へ」でした。サクセスケースモデリング(顧客の成功事例理解と成功に至るまでのプロセスのリサーチと、それらのモデル化)を用いたサービス開発の取り組みをご紹介いただきました。
西藤さんの昨年のセッション内容はぜひレポートをご覧ください!
株式会社Shippioは、本カンファレンスへの登壇により採用活動が活発化したそうで、西藤さん1人だったデザイン組織は1年で5人にまで増加。プロダクトマネージャーやデザイナーに関しては、RESEARCH Conferenceでセッションを視聴し、求人に応募したとのこと。会場のスタッフから喜びの声が上がりました。
また、平野さんと同じく、社内でポジティブな変化も起きたそうです。「デザイナーの役割が見えづらい環境にあったのですが、セッションによって"リサーチからUIまでカバーできるのがデザイナー"という認識が広がったと感じます」と嬉しい声を聞かせていただきました。Shippio社の採用実績に、松薗さんは「スポンサーや登壇をしてくださる企業は、リサーチにとても力を入れていらっしゃいます。リサーチャーが"この会社でリサーチをしてみたいな"と、思うきっかけとなるのは嬉しいですね」と、本カンファレンスを通じて広がるリサーチャーの輪に期待を寄せました。
ご登壇いただいた4名のゲストの変化や挑戦から、1年間のリサーチの裾野の広がりが垣間見えたプレイベント。本イベントでは、24名の多種多様な業界で活躍するリサーチに携わる方々のトークセッションを予定しています。さらにリサーチが広がるその瞬間に立ち会えるのではないでしょうか。また、今年はオンライン配信と同時に、オフラインでの開催も!参加者同士の出会いの広がりもぜひご期待ください。
プレイベントは、YouTubeでアーカイブ視聴が可能です。ぜひご覧ください!
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それでは、次回のnoteもお楽しみに🔍
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