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死生の美学

先日、京セラ美術館で開催中の写真家・蜷川実花さんの展覧会に行ってきました。

これまでは美術館に行くことは多くなかったですが
昨年からカメラを持ち始めたことで、それまで気づかなかった風景にも足を止める機会が増えました。
他の人々のセンスに触れたいという気持ちも芽生えています。

今回の展覧会で感じたのは、まさに没入体験そのもの。
異世界に迷い込んだ感覚で、死んだらこんな景色を見るのかなと(笑)

偶然にも、2025年の読書初めとして「植物に死はあるのか」を読み終え、生と死について考えていたところでした。

タイミングよく出会う本は何冊もありましたが、これもまたそんな一冊でした。

「植物に死はあるのか」は、大学教授で植物学者の稲垣栄洋さんによる一冊です。

稲垣さんの元に寄せられた学生たちからの疑問に答える形で、植物を通じて生命や死の本質について考察していく内容が描かれています。

印象的だったのは、植物が動かない理由や、植物と動物の違いに焦点を当てた部分。植物の死は単なる終わりではなく、環境や繁殖、エコシステムにおいて重要な意味を持つことが語られていました。

恥ずかしながら今回初めて知ったのは、リプラスのサウナでも使っている薪の元となる木も、樹木として立っている時から死んでいるという事実。

木の外側の柔らかい細胞だけが生きており、内部の死んだ細胞は硬くなって木を支えています。

死んだ後も人を温める薪として役立つ木。
植物の死が命の循環の一部であることを実感しました。

さらに広大な視点で見ると、星の死が新しい生命を生み出す源となっている宇宙の仕組みが思い浮かびます。

壮大な流れの中で、偶然地球という星に生を享けた人間が、死を恐れることがどれほど矮小なことかと感じさせられました。

与えられた生命を生き、与えられた死を受け入れる。
そんなシンプルな真理に立ち返るきっかけとなる体験でした。

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