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【指揮者メモ】天才デュ・プレ/不吉な曲について

【天才/不吉な曲】

ジャクリーン・デュ・プレがチェロではなくピアノを弾いている映像があったのだけれど、上手くてビックリした。音楽性が抜群で、タッチを変えて相応しい音色をちゃんと作る。当時夫だったバレンボイムが隣にいたが、少しアドバイスを受けていたかもしれない。彼が若い頃に録音したモーツァルトのピアノ曲もとても良かった。

チェロの天才といえばデュプレだけれど、彼女のトレードマークだったエルガーの協奏曲は、バレンボイムよりもバルビローリの指揮した録音に震撼させられた。あの厭世観あふれふ解釈こそ晩年に心を閉じてしまった孤独なエルガーに近い気がする。

とはいえ、あんな演奏をやる人だから悲劇的な人生になったのは分かる気がする。マーラーが娘の死をはからずも予言したのと同じで、天才は入り込むあまり作品と同じ状況を引き寄せてしまうことがある。

私は凡才も凡才だけれど、なんとなくゲンが悪いのでエルガーのチェロ協奏曲はなるべく聞かないようにしている。たしかデュプレと友人だったメータも、ある時点からこの曲を封印したんだったか。念がこもった曲はあるからね。

指揮者メモ 伊藤玲阿奈・玲於奈・レオナ

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伊藤レオナ(在NY指揮者)
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