
【指揮者メモ:#400】いき過ぎた謙遜が心を病ませる
【第400回:いき過ぎた謙遜は猛毒】
数年前の話だ。ピアニストを目指している小学生の女の子が私の帰国レッスンを受けにきた。その子の先生が同伴して。
いつも通り、質問をして自分で考えさせながら、それを自分の想像力で音に変えるように導いた。プロを目指すだけあってよく出来るし、なにより自分で音楽をつくる喜びを感じているのが手に取るように分かった。自信がついて演奏もどんどん変わる。
充実したレッスンが終わり、先生に「素晴らしい生徒さんですね!」と興奮して語りかけたら、「いえいえ全然!」と言った。その先生は謙遜したのだけれど、決して忘れられないのは、その瞬間に女の子がみせた表情。一気に哀しそうな顔になってしまって、うつむいた。せっかく彼女の音楽だけでなく先の人生でも糧になるよう1時間頑張ったのに・・
いき過ぎた謙遜を子供たちに対してぶつけることが、自分をいまいち信じることができず、他人と比べて一喜一憂する癖をつくる。大人になっても心が病みやすい。そしてそれは遺伝する。我々が真剣に向き合うべき問題だ。
指揮者メモ 伊藤玲阿奈・玲於奈・レオナ
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