【指揮者メモ】解釈のヒント/表題
【解釈のヒント/標題】
ベートーヴェンのピアノソナタ第17番は「テンペスト」と呼ばれ、この曲を解釈するヒントを聞かれた作曲家が「シェイクスピアの『テンペスト』を読みなさい」と答えたという秘書シンドラーの“証言”に基づく。ただしシンドラーは捏造の多いことで悪名高く、この話も創作の可能性が高い。
とはいえ、解釈のヒントを求める路線は悪くはないと思う。ベートーヴェンはシェイクスピアを確実に読んでいただろう。ロマン派でもないから標題音楽として処理すると変な方向にいくけれど、あの戯曲との精神的な繋がりを感じることは大いに解釈の手助けになるはずだ。
他の例をあげれば、ピアノソナタ第23番「熱情」で私は「リア王」の精神を感じる。史料的な根拠はない。自分の生徒に悪いので具体的なことはレッスンか有料記事で伝えるべきだけれど、私の場合、「リア王」とそれを翻案した黒澤明の「乱」に触れて「熱情」終楽章の解釈がかなり定まった。
ただし、「解釈上のヒント」と「標題(英語では program で、この日本語訳は良くない)」の区別はしておいた方が無難だろう。
©伊藤玲阿奈 2024
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