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サンフレッチェ広島ユースを2日連続で見てきた話 【安芸高田市訪問】


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11/25~11/27の2泊3日で広島へ行ってきた。メインの業務は会社のメディア「AZrena」でサンフレッチェ広島のスタジアムビジネス担当の方と、サンフレッチェ広島レジーナ所属の中嶋淑乃選手のインタビューならびにクラブの方との打ち合わせだ。

このnoteを見ている人にもAZrenaのコンテンツは響くと思うのでぜひ見てほしい。


上述の通り3日間で3アポとはいえ、空き時間は多い。その中で全て作業に当てるもの味気ないのでせっかくだから何処かに取材へ行きたいと思った。その中で候補として上がったのが"サンフレッチェ広島ユースの練習場と寮を見にいく”であった。国内サッカーファンはご存じの方が多いと思うが、広島の練習場は安芸高田市という広島の中心部から車で1時間以上かかる場所にあり、アクセスが良いとは言えない。フラッといけるような場所ではないので二の足を踏んでいたが、ちょうど1年前に石丸伸二さんと対談したときに「また行きます」と話したので、嘘になってはいけないと思い来訪することにした。


コーチに連絡をして許可を取っていったのだが、広島のアカデミーとはおそらくアポ無しで行っても受け入れてもらえるだけの関係値がある。複数人のコーチとは過去の取材で繋がっているし、アカデミーダイレクターの澤田謙太郎さんも仲良くさせてもらっている。アカデミースカウトの佐々木直人さんは誇張ではなく毎週のように中学サッカーの現場で会って3種の情報交換をしている。

一度NEWS LETTERで広島のアカデミーのスカウトについて触れたが、かなり県外選手の獲得に力を入れているので、全国各地の現場で佐々木さんとは遭遇するのである。

そんな彼らからも「ぜひ」との返答をもらったのでユースの練習を見にカーシェアで車を借りて向かった。

市内から北上し10kmほど進んでからは片側一車線国道のひたすらにまっすぐ進んでいく。電波も通らぬ山道を越えていく家庭で左右に並んでいる家の感覚も徐々に広くなり、間に畑や空き地が増えて商店やコンビニの遭遇率との下がっていく。1都3県や都心で過ごしていての1時間の運転でこのような情報量の少ない光景に遭遇することはないので、同じ1時間でも体感時間が長く感じたものだ。

平和記念公園から安芸高田サッカー場までの道のり


そして着いた練習場は、トップのクラブハウスの横にある。人工芝は遠くない過去に張り替えられたようで、新しさを感じた。1.5kmほど離れた三矢寮から選手はママチャリで練習場まで通う。ちなみに自分が訪れた火曜日は強雨だったが、ほぼ全員が自転車出来ていたようだった(それはそれでちょっと危ないのだが)。

ちなみにこの安芸高田市(その当時は吉田町)が選ばれた経緯までは知らないが、1993年に広島のユースが出てきてから今まで、ずっとこの場所が拠点であり続けている。当時の総監督である今西和男氏がいまや各クラブが取り入れているユース全員が同じ高校に入学する座組を作った。そして、1998年に久保允誉社長(当時)が主導しトップチームが練習拠点がユースの練習場がある吉田町に移し、ユースの選手がトップを間近で見れる環境が整ったのだ。

このママチャリでみんな来ている
帰りに寄った三矢寮

練習場につくと佐々木直人スカウトと、自分もよく取材させてもらっているとある3種の街クラブの指導者がいた。この街クラブは来年度に多くのJクラブのアカデミーから注目を集めるある選手が所属しているのだが、その彼に広島も声をかけており、その練習参加の日がたまたまこの日だったのだ。自分は持っているな、と思った。ただ、その選手の名前は伏せておく。

そしてピッチ外に作られたテントに入れてもらい、その中のパイプ椅子に座って練習を見学させてもらった。前述した通りかなり強い雨が降っていたのでかなりありがたかった。普段から関係値を作っておくとこういうメリットがあるんだな、とも思ったものである。

その日はオフ明けだったのでボール回しとゲームのみと少し軽めのメニューで終了し、その後に寮の外観を見に行った。Twitterでもポストをしたが、周辺に本当に何も娯楽がない。これはサッカーに集中するしかないなと思ったし、だからこそ優秀な選手が輩出されるのだろう。実際に広島はJで最多となる15人のホームグロウン選手を抱えている。

寮を見終わった後、18:00からジュニアユースの練習が広島市内寄りの揚倉山健康運動公園で行なわれてるという話を聞いたので、車を1時間ほど走らせて練習を見にいった。その日はちょうど沢田謙太郎アカデミーダイレクターが指揮を取っており、持ち前である熱量ある指導がグラウンドに響き渡っていた。もちろん突如決まった訪問で先方には伝えてなかったので、練習後に話しかけたらとても驚かれた。県外から広島まで練習を見に行くメディアはなかなかいないようでとても喜んでくれて、こちらも嬉しかったものだ。

現場へ足を運ぶ意味はここにある。こうやって信頼関係を作ることで、他者が簡単には手に入れることのできない情報を得られるようになる。

結果として広島市内のエディオンピースウイング広島近辺で車を借りて安芸高田へ行き、揚倉山で練習を見てホテルに戻ったときには22:00前だった気がする。体力もけっこう削がれたが、沢田さんはじめアカデミーのスタッフにとってはこの3点を移動することは日常的だそうだ。

その翌日の水曜日レジーナの中嶋選手の取材があったのが、広島の最終の飛行機まで時間があったので、再び安芸高田へ向かった。

この日のユースは沢田さんが指揮を取る日で、野田知監督は静かに見守るのみ。長きに渡り広島の育成に携わってきた沢田さんの指導は「一対一を制する」「誰よりも早くボールに触る」「ゴールを目指す」というサッカーの本質を捉えるシンプルなものだったが、前日に見たジュニアユースの練習と同様に一つ一つの指示に熱がこもっており、強い組織の雰囲気を作り出していた。

ちなみに2日連続で遠くまでわざわざ見に来たのは理由がある。前日の火曜日の練習で不在だった髙橋成海を見たかったのだ。彼は徳島ヴォルティスのジュニアユースから今夏に広島へ移籍してきた選手なのだが、広島のジュニアユースではなくユースに中3生ながら唯一参加しており、寮にも入って吉田の中学校に通っている。当然、ユースの選手と通う学校が違うことでスケジュールも異なり、練習に参加できない日も稀にあるのだ。

ちなみに髙橋については2年前に徳島の育成について書いたnoteで触れている。

188cmながらしなやかさと機動力があり、ゴール前でのフィニッシュのパターンが多彩で、自ら仕掛けることもできる。この世代では突出した能力の持ち主で、2年もすればトップチームで出場すると自分は読んでいる。

そんな中学3年生の彼が高校生の中に入ってどれだけできるのかを見たかったのだが、遜色なくプレーをしていて外から見ていれば彼が中学生と分かる人はいないだろうと思ったものだ。間違いない才能を、広島は手に入れたなと。

そんなこんなで帰りの時間も迫ってきたので、お世話になったスタッフに挨拶をして市内へ戻った。

渋滞にハマってカーシェアの返却時間に遅れたことで広島バスターミナルから広島空港への最終バスを逃し、タクシーで17,000円かけて空港まで行く羽目になるという最悪のアクシデントに見舞われたものの、この2日間で見たものを考えればその出費も全く痛くないと感じられた。そんな実り多き広島出張だった。

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小学生からJリーガーまで幅広く日本サッカーの現場を追いかけ発信するスポーツレポーターの竹中玲央奈が、…

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