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十一人の賊軍初見。MERGEも添えた。

時代劇を映画館でみるのは初めてなので少し不安だったけど、まさか泣くと思わなかった。
2時間半あるのに展開もどんどん変わっていくから最後まで楽しめました。
一応戊辰戦争は学生時代に習ったきりだから動画サイトで概ね学び直し、なんとなく時代背景は理解出来た。冒頭説明はしてくれるけど丸腰だったらちょっと大変だったかも。
2回目も行きます。山形の舞台挨拶もあるし。ムビチケも残ってるし。何度か観て新しい解釈や発見があるといいな。


以下映画内容のネタバレは極力ないようにしたけど無意識に入ってる可能性あるので注意。
簡単なまとめ
キャストのおかげで最後まで楽しかった。
繋ぎ止めてくれるひとがいて、次々に個の魅力が見えてきて、最後には罪人なのに全員にめちゃくちゃ情がわいてしまってその果てに涙がでた。
長丁場彼らの生き様を見届けてるんだからしかたない。また彼らに会いたくなった。
推しの鞘師里保はなつを目と声で美しくかっこよく表現していた。彼女の瑞々しさに救われた。
みたいなことです。


最後まで見続けられたのはキャストさんの力が大きいなと思う。
山田孝之さん仲野太賀さんのおふたりは、主役なだけあって双方の意思の強さが桁違いだった。
兵士郎ね……いやぁずっと繋いでくれてた。泣いた。力強かった。兵士郎の信念が政にも伝わっていったんだと思ってる。
映画見終わってから予告見返すと思い出して泣く。いまも書いてて泣く。

最初は悪人たちが集められた段階でもうめちゃくちゃ汚れているし疫病の表現もあるし、官軍側がそれはもう綺麗な環境にいるからよけいに目立っちゃって体が強ばる感覚。目的もバラバラだし泥まみれで暗くて。
でも詐欺師の赤丹がさすがの口達者で、今でいう陽キャ感が空気を混ぜてくれて、観てるこちら側をホッとさせてくれた。口が上手いひとは賢いんだよね。
あと爺っつぁんね。"好きでしょう、こういう何も言わないけど戦いのときにめちゃくちゃ冷静に立ち回り斬る元役職ある系おじい様"といわんばかりの差し出され方。
はい好きです。願わくば過去を知りたいと思うくらい。なにがあったの爺や…。話聞きたいよ。
医学知識に長けてるおろしやがいたり、見た目で惹き付けるような二枚目がいたり、明らかに戦強いですよねっていう辻斬がちゃんと強かったり、時間が動いていくことで罪人なんだけどわたしみたいな一般人ができない能力がどんどん見えてくる感じ。
あとノロね。じつは最初に泣いたのはノロの姿なのよ。まだ書けないけど。
政は本当に極端で、一歩間違えば孤立してしまうかもしれなかったのに、山田さんの圧倒的存在感と、ノロ中心とした彼を取り巻く賊たちがちゃんと上手く導いてくれて、全員を理解したくなった。
最初は兵士郎の実直さがわたしにとって親しい存在だったけど、次第に賊軍たちそれぞれに広がっていって、終盤は11人全員に情が入りまくって泣いてしまった。


映像は結構薄暗い。白黒でもなく黒の濃淡で表現されているような印象。目の悪いわたしは最初慣れるのに時間かかったけど(席が前のほうで良かった)、「黒ってこんなに鮮やかなんだな」とか最後のほうは考えられるようになるくらいまで視えた。
明るい場面もどこか淡くみえたのはわたしの視力のせいかもしれない。白じゃなくて、まろやかな光の感じ。

ひとの首はバンバン飛ぶし転がるし血は大量に溢れるし爆音だし、エンタメ映画と銘打ったのはこのあたりなのかなって思った。たしかに派手で見応えあるから海外の方とか好きかもしれない。
このスピード感やエンタメのスパイスは若干和製●NEPIE●Eみを感じたのはわたしだけ?キャラではなくてこの派手さみたいなのが…ちがうかな。
世代だからゆるして。わたしは良いなと思ってます。

溝口内匠のことはね わたし阿部サダヲさん好きだから 半泣きで観てた。父親の姿以外は初見では心情が読めなかった。
会見のときに映画観た友人から「溝口ーっ!!!💢」って怒りのLINEがきたって話してたけど、わたしは「マジか溝口ぃ……」って感じだった。
現代社会でも挟まれたりどっちつかずの悩みはよくあるけど規模が違う。でもサダヲさんだから嫌いになれなかった。
ちなみに白石監督の作品って眼光を入れないのが基本なのかなってくらい目の表現すごいと思う。死刑にいたる病は阿部さんだったし、今回もあのひとがそうだった。すごかった。

 とにかくキャストの皆さんが魅力的だった。
しかたないよ、そりゃあ愛着わくよ、だって2時間半ずっと彼らの生き様をこちらもみてるんだから。
しんでほしくない、って思ってしまったよ。
また逢いに行きます。



最後に、推しについて。
息つまるような時間が長くなってきて窒息しかけたときに、なつの存在にめちゃくちゃ救われた場面が本当に多かった。
薄暗い空気のなかで、なつの柔らかいのに涼しげで静かな眼差しと声色が好きだった。罪人だけどずっと瑞々しかった。最後までぜんぶ。
(余談だけど、やっぱり鞘師に踊ってもらいたかったのかなって思うセリフが最初にあってちょっと微笑んだ。監督の意志を感じた)
鞘師の演技、贔屓目を少し外したとしても、とても良かったと思ってるんだけどどうですか。


わたしは鞘師の、自分に与えられた役を大切に受け止めて等身大で表現してくれようとするところが大好きで、それが時々彼女にとって無理な負担になったり悩みすぎたりしちゃうのかもしれないって思いながら、やっぱり今回もそういう鞘師に心動かされている自分がいた。

白石監督が、「魂を削るようにこちらに届けてくれる鞘師さんにとても惹かれた」と話してくれたように、鞘師が表現するなつは、苦く強く美しかった。


エンドロールに流れた名前をみて、本当に凄い作品に出たんだ、また彼女は新しい魅力を纏うんだと震えました。
見つけてくれたキャスティングの方、白石監督、本当に感謝しています。
もしまた新しい作品をつくるときに鞘師を思い浮かべてくれるなら、彼女は与えられたものを大切に見つめて、まっすぐに演じてくれると思っています。


そして東京国際映画祭のレッドカーペットをさらっと歩く鞘師をみたとき、やっぱりあなたの魅力は本人が知らないところで絶対誰かが気づいてくれるんだ、って心が熱くなった。

この映画を見た後に、彼女のMERGEという歌を聴いたらよけいに。

「そのスコープで私見ても すでにもう そこにはいないよ」

鞘師里保はカッコいい。ずっとずっと知ってた。




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