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”株式投資の本来あるべき姿について話し合いましょう(パート2):真の投資家にとってESGとは”を読んで投資家の責任を考えてみよう!

株式投資の本来あるべき姿について話し合いましょう


#ベイリー・ギフォード  さんが発信されたレポート”株式投資の本来あるべき姿について話し合いましょう”を、昨年読んで大いに感銘を受けました。

そのレポートの続編がベイリー・ギフォードさんのWebサイトで公開されています。

https://www.bailliegifford.com/jp/japan/professional-investor/insights/

題して

株式投資の本来あるべき姿について話し合いましょう(パート2):
真の投資家にとってESGとは

です。レポートの「はじめに」からです。

投資とは「インデックス を上回る」ことや他の市場参加者に勝つことを目指す ものではなく、社会が必要とする製品やサービスを生 み出す新たな優れた方法を追求するための技術的及び 文化的な進歩から利益を得ることです。長期的には、 こうした進歩によって獲得される利益の大部分を獲得 するのはごく少数の企業です。

こうした考えに基づく投資を「真の投資(Actual Investment)」と定義されています。

今回のレポートの主眼は次のように述べられています。

投資先企業とのエンゲージメントを行うこ とによる恩恵や、企業文化、ステークホルダー資本主 義、社会的責任投資等の広範なトピックにとってのエ ンゲージメントの重要性が挙げられます。今回のレポ ートでは、個別企業の定点のデータよりも、経済シス テム全体の進歩を慎重に計測することが必要だという 点に重点を置き、多くのアジェンダの最上位に位置する複雑な領域についてより詳細に議論していきます。

地球環境、社会から投資の成果を受け取っている以上、それらが健やかであり続けるためにはどうあるべきか、それを考える責任がある。その責任を考えて投資判断すべきだというのが  #責任投資  だと考えられます。その責任投資を実践するに当たり考慮すべき要素がEであり、Sであり、Gであるわけです。つまり、責任投資の実践のプロセスの中では、ESG以外の要素が重要になってくる可能性もあり得ます。

環境を傷つけ、従業員の処遇が劣悪で、或い は社会構造を破壊するような企業は、やがて規制によって収益性を失うか、 又はクライアントに見捨てられるという考え方があります。従って、信頼性の高い長期投資プロセスでは、こうした要素について考慮することが不可欠です。

最近急速にその機運が高まってきたように感じますが、投資、とりわけ時間を掛けた後にリターンを享受することを目指す投資においては、この種の機運が盛り上がるかどうかとは一切関係なく、当たり前のこととして必ず考慮すべき要素であると僕は考えています。投資するなら当たり前、ってことです。

受益者が現在、投資マネージャーに考慮することを求めている幅広いトピック の一部を示したものです。

として、環境、社会、ガバナンスについて具体的な論点が列挙されています。

おそらく、これは欧州の話だと思います。僕自身、投資信託を保有する、追加投資する受益者として、この種の論点に関する定期的な発信をマネジャーに期待しています。しかし、極めて少ないマネジャーのみしかこれを実践できていないのが、日本の投資信託の実状であるように感じます。

「ESGと長期主義の大統一理論」

幸いなことに、業界の多くのが今や一体 となって統一理論のための枠組みの策定に取り組んでいます。

これも欧州の事情のように思われます。

次の指摘は非常な気づきがありました。

保有していない企業であっても、汚染(或いは労働 者への過少な支払い、安全・衛生規制の違反)を発生させます。仮に石油メジャーが競合他社に油田を売却 し、その売却代金で再生可能エネルギーに関する事業資産を購入した場合、同社の炭素排出量に関する指標は劇 的に改善するでしょう。しかし、買い手がただ閉鎖する ためだけに油田を買収したのではないことは確実です。 新たな事業者が原油生産による環境への被害を減らすこ とができて初めて、環境にとって正味でプラスの影響が生じます。

問題ありと感じた投資先をポートフォリオから除外しても、それが問題の解決に向けた行動とは限らない、と指摘されています。

2022年1月より、域内の大手運用会社は、自社の投資による環境と社会への悪影 響を開示することを義務付けられます。

EUは着実に責任投資の道を進んでいますね。

ESG要因を投資プロセスに適切に組み込むことができれば、現世代の貯蓄者、次世代、更に次々世代の貯蓄者にとってプラスの結果を生むことに本当の意味で寄 与するでしょう。

「適切に」というのが非常に大切と感じます。ESG要因を考慮した投資が社会にプラスのインパクトを与えて、かつ、投資の果実を享受するためには時間が必要です。当然、投資家にも忍耐、粘り強さ、我慢強さが必要になってきます。そうした忍耐もここで言う投資プロセスの中に含まれくるはずです。腰の据わった、どっしりとした意思を持った資金が集まらなければ投資プロセスへの組み込みは適切なものとはなり得ないと感じます。

ESGを巡る動向はこうしたクライアント との対話を良い方向に変化させつつあるようにみられます。現在、 業界は長期主義へと回帰しつつあるのかもしれません。今後、クライアントがマネージャーに対して非財務的要因のプロセスへの組み 入れと報告の双方を要求する場合、それがマネージャーにとって、 本来あるべき前向きな長期主義へ回帰する好機となる可能性があるからです。

ここで述べられた「長期主義への回帰」が本当に実現するのか、ここは非常に強い関心を持ちますが、正直、僕は悲観的です。

”インデックスに対する相対的リターンと絶え間ない短期的 なコメントの提供”ばかりをマネジャーに求め続ける投資家、そして、インデックス運用のリターンさえ確保できればヨシ!とする投資家が大多数を占め続けるのではないか、というのが僕の予測です。

ESGへの定量的なアプローチの欠点は、同じ 企業に対するESG格付けがデータプロバイダ ーによって大きく異なるケースが多いことにも表れています。
格付機関が選択する計測方法に特に左右さ れやすいカテゴリーは人権と製品安全性の 二つです。この問題の背景にあるのはESG格 付が非常に主観的だということです。

こうした欠陥(不十分さ)があるだけに、ベイリー・ギフォードは異なる形で実践していると説明されています。

個々の投資先企業とのエンゲージメントによって、企業が現実世界にどう適応しているかを判断しつつ更なる適 応を促すことが重要だと考えています。

投資先企業との個別、個別でのエンゲージメント、対話です。

全ての企業に対して画一的なアプ ローチを採用することはありません。企業は発展段階に応じて思考や行動を変えなければなりません。

エンゲージメントの実例として、投資先のAlibaba、Tesla のケースが紹介されています。

ESGは投資業界の「数値に固執する」という悪癖が出やすい特に危険な分野です。

非常に的確な指摘だと感じます。

ダイベストメントはESG問題への取り組みとして的外れではないものの、現実世界における影響力は限定的なのです。

重要なことはやはりエンゲージメントだ!ということが示されています。

どのプロジェク トに投資するかを選択するのは経営陣です。そのた め、企業の経営陣とESG課題(又はESGに限らず全般的なテーマ)についてエンゲージメントを行うことは現実世界を変えるための最も明確な方法と言えます。
目先の満足な結果を求める短期主義の株主の圧力に屈しない 精神を持ち、私たちと利害が一致する経営陣を有する ことも必要です。四半期業績にばかり目が行く株主に 解雇される恐怖に怯える経営陣に対して、5~10年先 を見据えて投資するように説得することは非常に困難 であり、恐らく無意味でしょう。
ベイリーギフォードでは、ESG問題をビジネスモ デルに組み込もうという考えの経営陣を有する比較的少数の企業を発掘する方がより生産的であると見てい ます。これは私たちが常に実践している長期主義と変わりません。


私たちはガバナンス項目を機械的にチェックするという奇妙な行動を避け、自らが支持する経営陣だけに投資している

Rio Tinto への投資

ベイリーギフォードは一部のファンドで鉱 山会社のRio Tintoに投資しています。私た ちがESG要因を運用プロセスに組み込んでい ることを踏まえると、これは一見驚きかも 知れません。しかし同社への投資は、より 広い視野を持って企業とのエンゲージメン トを行うことが、単に投資機会を否定する よりも有効となり得ることを示す良い例で あると考えています。
ESGの観点から見て、環境を傷つけているよ うに見える鉱業業界を回避するのは果たし て最善の方法でしょうか。業界最高レベル の企業と協力し、事業慣行の改善を促し、 環境への影響を最小限にするように努める 方がより責任ある行動と言えるのではないでしょうか。

ニュースを見て反射的に反応するのではなく、じっくりと考えること、投資家としての責任は何だろうかと問いを立てること、が大切だと痛感します。

そして、何度も繰り返し強調されていること。

私たちはこれまで繰り返し、長期志向で成長企業に投資を行う場合、富の大部分(及 び長期的には株式市場のリターン)が非常に少数の企業から創造されることを認識す ることが如何に重要であるかを訴えてきました。

この信念こそがベイリー・ギフォードを「真の投資家」たらしめていると思います。

また、投資家・受益者への報告、説明の重要性も再度、強調されています。

重要なのは、一段と複雑さを増 すESG要因の現実を投資活動にどのように組み込んでいるか、及び私たちが機械的に項 目をチェックするだけでなく、どのように 変化を推進しようとしているかについて、 クライアントに対して包括的な報告と説明を提供することです。これを実行するのは 簡単ではありません。また、これらは主観 を伴うため、ポートフォリオマネージャー と切り離して実施することは不可能です。 しかし、クライアントが私たちに報告・説 明を求めるのは当然であると考えます。

ESGファンドの短期のパフォーマンスを見ただけで「あれやこれや」と評価することは的外れだと感じます。

レポートのまとめからです。

投資運用業が自らの内側に目を向けて「我々は何のために存在するのか」 と自問するきっかけとなりました。投資運用業界はどのように社会に 貢献している(或いは、少なくとも貢献することを求められている) のでしょうか。この疑問は本書のESGに関する全体的なテーマと密接 に結び付いています。社会的責任投資は多くのクライアントが業界に求めることの中核となっており、投資運用会社の目的を定義するもの でもあります。さらに、恐らくそれは世の中の多くの人々が求めてい ることの中核にもなっていると考えます。これまで社会的責任に配慮してこなかったことは、間違いなく投資運用業界に対するクライアン トの足元の信頼度が非常に低い一因となっていると考えます。

レポートはこんなメッセージで締め括られています。

投資運用会社は自分たち自身の資本配分の方法と理由についてより高度で包括的な説明を提供する必要があります。また(少なくとも 投資運用業界の一部が)どのように企業と建設的なエンゲージメントを行い、社会的課題の解決策やその前進を促しているかを説明しなければなりません。さらに、どのような時間軸で投資に取り組んでいる かを説明し、サステナブルな世界を維持するための広範な義務を理解 していることを示すことも必要です。
要約すると、投資運用業界は単に金融市場で資金を賭け合い、上辺だ けの目標を達成するよりも遥かに重要なことについて説明責任を負う必要があります。私たちは現実世界の進歩に説明責任を負わねばなりません。

僕たち投資家側も同じだと思います。投資先からのリターンを享受するということは、地球環境や社会に対して責任を負っているのだと思います。

先日、参加したコムジェストさんでもこんなコメントがありました。

企業の株主になるということは、その企業の成功・成長を共有すると同時に間接的に企業の責任や風評リスクを一部背負うこと

「ESGって儲かるの?」という問いの立て方は適切ではない、そう思います。投資判断にESGの要素を考慮することで、地球環境や社会に対する責任を果たす、課題の解決に事業活動を通じて真正面から取り組む会社に資本を配分する。時間の経過とともにその成果が投資の果実の源泉になるわけです。こうした責任投資を実践し、絶えず投資先をマネージしているマネジャーにこそ、より多くの資金を託したい、このレポートを通じてその気持ちが益々強くなりました。

ESGの要素が投資判断に関わっていない、

個々の投資家に応じた特別、固有な意思を持ったエンゲージメントもない、

投資家・受益者にロクに説明、報告もしない。

それは「真の投資」ではない。

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投資家の責任、責任投資について、「真の投資」Actual Investment を考えてみる機会となる素晴らしいレポートでした。ベイリー・ギフォードさんに大感謝です。

ベイリー・ギフォードさんが運営するファンドを僕は毎月買い増しています。その模様は↓↓のマガジンでご覧ください。


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