14. 就職なんてしないと思ってた④
2つの採用通知の中から、どちらが自分の行くべき道かを早急に決めなくてはならない。
私はとにかく比較した。
東京に居たい気持ちがあったので、地方転勤があるのは嫌だ。
これはどちらもクリア。
仕事内容と給料が重要かな、と思った。
まずは仕事内容。
イベント関連会社の方は主に全ジャンルのイベントを担当。
チケット販売の管理のほか、新しいイベントの企画をする部署もあるらしい。
音楽事務所は、もちろん音楽に特化。アーティストケアなどのいわゆる現場マネージャーからスタートすることが多いが、担当アーティストのライブ制作にも具体的に関わることができる。
内容としては、音楽事務所の方がやりたいこと、これまでやってきたことに近いなと思った。
そして、給料。
これがなかなか驚きで、初任給が音楽事務所16万、イベント会社26万くらいの開きがあった。
10万円!
この業界での仕事を志してから、気にしないでいようと思っていたお金のこと。
ライブハウスのバイトも時給800円だったし、大丈夫だと思っていたのだが、いざ自分が選ぶときになるとやっぱり重要だった。
大学生が終わり、一人で生きていかなくてはならないのだ。学生マンションは引き払い、仕送りがなくなる。借りた奨学金は返さなくてはならない。16万円の額面では、手取りは更に少なく、生活していける気がしなかった。激務で忙しいことも覚悟していたので、副業なんてできるはずもない。
これはイベント会社の圧勝だった。
そんな中、ふっと面接で会った社長のことを思い出した。両者は対極のタイプで、イベント会社の方はきらきらと夢を語る社長。音楽事務所の方はこの業界を生き抜いてきたプライドとギラギラ感のある社長だった。
どちらについていきたいか?
と考えたとき、答えは決まった。
私は音楽事務所に内定辞退の連絡をして、イベント会社への就職を決めたのだった。
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