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現代を生きる上で持つべき武器とは。 #樺恋課題図書

365日後にフリーライターになる鈴木樺恋です。ライターのオバラミツフミさんのご指導のもと、日々より良い文章を書く勉強をしています。そのなかの読書課題は、題して #樺恋課題図書 です。

今回の #樺恋課題図書 は「僕は君たちに武器を配りたい」です。今から10年以上前に刊行された本書ですが、その内容は現代の私たちにも色鮮やかに映るものでした。

本書で何度も挙げられるキーワードは、「投資家的に生きる」ということ。これは、決して読者に投資家になれと説いているわけではありません。頭を使わず、受動的に生きるのではなく、能動的にチャンスを掴みに行け、ということです。

新しいモノやサービスが溢れる経済の「流れ」のなかで、私たちはどう思考し、道を切り拓き、ゲリラのように生きるのか。本書の内容から辿っていきます。

まず、本書の内容は大きく分けて3つ。

  1. 現代社会において陥りがちな「コモディティ」とは

  2. 日本で生き残る4つのタイプ

  3. 「投資家的に生きる」とは

一つめから見慣れない言葉が出てきました。コモディティとは、平たく言えば、「個性のないものすべて」です。たとえば、歯ブラシは企業によって性能やデザインこそさまざまですが、「歯が磨ける」という基本的な性能は変わりません。

とにかく安い歯ブラシが欲しい人にとっては、「歯が磨ける」という性能があるものであれば、どんなにデザインが凝っていても、最新技術を駆使した毛を使っていても、全て同じ「歯ブラシ」として捉えますよね。

そういった一定のスペックでそれを定義できるものを「コモディティ」と呼ぶのだそう。

著者である瀧本氏はこのコモディティが、人にも適応され始めていることを言及していました。

決められた時間に出社して、決められた仕事を決められた手順で行い、あらかじめ予定していた成果を上げてくれる人、そういう人であれば、その中でいちばんコスト(給料)が安い人だけが求められるのが、現在のグローバル資本主義経済システムなのである。

「第1章 勉強できてもコモディティ」より

いくらスキルを持っていても、そのスキルを最大限に活かせる場所を自分で得られなければ、安く買い叩かれるキャリアとなってしまう危険性があるのです。

では、この「現在のグローバル資本主義経済システム」のなかで、主体的に生き残ることができるのはどういった人間なのか。第4章から抜き出していきます。

瀧本氏は生き残る人材を「儲かる漁師」、「投資家的な漁師」に例え、彼らを6つのタイプに分類しました。

1、商品を遠くに運んで売ることができる人(トレーダー)
2、自分の専門性を高めて、高いスキルによって仕事をする人(エキスパート)
3、商品に付加価値をつけて、市場に合わせて売ることができる人(マーケター)
4、まったく新しい仕組みをイノベーションできる人(イノベーター)
5、自分が起業家となり、みんなをマネージ(管理)してリーダーとして行動する人(リーダー)
6、投資家として市場に参加している人(インベスター=投資家)

「第4章 日本で生き残る4つのタイプと、生き残れない2つのタイプ」より

たしかに、どのタイプも優秀そうですね。ですが、この6つのなかでも、2つのタイプは今後生き残ることができないそう。

その2つのタイプとは、1のトレーダーと、2のエキスパート。コモディティとネットワークが進んだ現代では、消費者は購入すべきものを自分ですぐに比較、検討できるので、トレーダーの営業力は不要になってしまいます。

エキスパートは、目まぐるしくトレンドが移り変わるなか、自分の専門分野が廃れたときに、もはやなんのスキルもない人となってしまうのです。

つまりこれまでのビジネスにおいて重要とされてきた「営業力」と「専門性」、その二つが実は風前の灯となっているのである。

「第4章 日本で生き残る4つのタイプと、生き残れない2つのタイプ」より

第5章から第8章では、残った4タイプ(スペシャリティとも呼ばれています)の解説です。まずは、マーケターについて。

コモディティ化が進んだ現代において、唯一の富を生み出す時代のキーワードは「差異」であると瀧本氏はしています。そしてその「差異」はそのモノがもつ「ストーリー」とも言い換えることができ、このストーリーの有無こそが、プロダクトにとてつもない違いを生み出すのだそうです。

マーケターとは、差異、つまりストーリーを発見し、もっとも適切な市場を選ぶことができる点から、競争の激しい現代で生き残ることができると言えます。

自分が得たスキルや知識を、どのように売るかによって、得られる報酬はまったく違ってくる。それはすなわち、「個人のビジネスモデル」を変えれば活路は拓ける、ということだ。

「第5章 企業の浮沈の「カギ」を握るマーケターという働き方」より

次に、イノベーターは、「まったく新しい仕組みを創造する」役割です。イノベーターになるといっても、最初からひとりでイノベーションを生み出すことはできません。その力を培うには、まず興味のある業界に飛び込み、経験と知識を養うことが必要だと瀧本氏は説いています。

そして、入った環境の「脆さ」を発見し、それを知識と経験を活かして打破する方法を考えることこそ、イノベーションなのです。

「イノベーション」を生み出す発想力は、何も特殊な才能の持ち主のみが持っている限られた能力ではない。努力次第で誰でも伸ばすことができる力だと考えている。

「第6章 イノベーター=起業家を目指せ」より

イノベーションの本質は、既存のものを今までとは違う組み合わせで提示することにあったのでした。

三つ目はリーダーに関してです。リーダーに求められるスキルとして「マネジメント」があります。マネジメント力と言われると、優秀な人を育て上げる力のように捉えてしまいますが、それよりも重要な能力があるそう。

それは「優秀ではない人をマネジメントする力」です。優秀な人は、ほんの一握りしかいませんが、優秀でない人は世の中に溢れています。大多数を占める優秀でない人をどう動かすか。ここにリーダーの力量が試されるのでした。

「駄馬」を使いこなすのが本当のマネジメント。

「第7章 本当はクレイジーなリーダーたち」より

第8章では、インベスター(投資家)のあり方の説明がなされます。何度も登場する言葉「投資家的」の根幹とも言えるこの章ですが、つまりリスクとリターンを正確に把握することこそ、投資家としての生き方に必要なものでした。

投資は常にリスクとの隣り合わせです。絶対に安全な投資は存在しません。ですが、そこで失敗を恐れてはいけません。

リスクを徹底的に回避すれば、もちろん成功率は上がりますが、ここでの成功率はチャレンジしなかった結果の数字に過ぎないのです。

成功率が多少低くなっても、広くリスクを分散させた投資をしていけば、全体でみたときの利益は、チャレンジしなかった人よりも大きなものとなっているでしょう。

つまり投資家として生きるのならば、人生のあらゆる局面において「ローリスク・ローリターン」の選択肢を選んで安全策をとるより、「ハイリスク・ハイリターン」の投資機会をなるべくたくさん持つことが重要となる。

「第8章 投資家として生きる本当の意味」より

このリスク管理の概念は、「普通に会社に入って定年まで働く」という選択にも疑問を投げかけています。終身雇用が崩壊した現代で、会社が倒産するリスクや自身がなんらかの原因で働けなくなるリスクを考慮しない選択をしてしまう。

つまり、リスクを自分で背負わないこと自体が最大のリスクなのではないかということです。

人生の重要な決断をするとき、覚えておくべき2つのこととして以下が挙げられていました。

  • 「リスクは分散させなければならない」

  • 「リスクとリターンのバランスが良い道を選べ」

人生のあるタイミングにおいて、たとえリスクが大きくてもそれに伴ってリターンも高く、かつ自分で責任の取れる範囲ならば、その投資はするべきだということですね。

第5章から第8章を通して、生き残る人間としての生き方を追っていきました。

瀧本氏はどれかひとつのタイプを極めるのでなく、場面に応じてそれぞれのタイプを使い分けるべきとしています。

4つのタイプに共通しているのは自ら主体的に思考、行動できる人間だということです。他人軸でなく自分軸で意思決定することにこそ、豊かな人生があると瀧本氏は考えていました。

自分で選んだ会社でも、労働環境がなにか違うと感じれば、すぐにその環境を変えてみる。それも、ただ職場を変えるのでなく、その職場のなかの自分のポジションを変えてみる。

自分の労働力と時間という投資に対して、リターンを得られるポジションに身を置くことがお金を投資するのと同じ重みの行為となるのである。そして、その自分の書いたシナリオが正しければ、リスクに見合ったリターンを得られるのである。これがまさに投資家的に働く、ということなのだ。

「第9章 ゲリラ戦のはじまり」より

考え方を変えるだけで、自分の価値はマイナスにも大きなプラスにも変化するのです。自分というブランドをいかにコーディネートしていくか。

これは、自分自身にしかできないことであり、他人に任せていては「自分」はどんどん安売りされてしまいます。

自分の価値を最大化するために、リスクとリターンをうまく把握し、取捨選択する。これが投資家的に生きていく、ということなのでした。

これからの日本はますます混沌としたものになるという瀧本氏の予測は見事に的中し、私たちはたくさんの情報で溢れた現代から、どう自分の価値を見出すかという問題を抱えて生きています。

「僕は君たちに武器を配りたい」はまさしくそんな私たちに、その問題を突破する「武器」を授けてくれるものでした。

スキルはあるのに輝けている気がしない、なんだか自分の力がうまく発揮できていない気がする。そんな方にぜひ読んでいただきたい一冊です。

本書を読んで「武器」を手に入れられたなら、自分がすべき選択も自ずと見えてくるのではないでしょうか。




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