②観る将歴2年の女が指す将を始めてみたら泣きながら帰った件
ステータス
まつお(地方民)
観る将歴2年、社畜歴10年以上、本州外在住、漫画・小説・ゲームが大好きなオタク。フットワークは軽め。
指す将を6月から始めて、将棋ウォーズを6月の中旬くらいにインストールした(無課金)。以下はスクショからの記録。
6/22 25級
6/24 22級
7/2 12級
7/9 8級
①地方民の大人が指す将を始めてみたら、しんどい
前回のnoteから2か月が経ち私の指す将歴は3か月になり、スマホではなく実際の盤を挟んだ回数は人生で5回10時間弱になった。
ステータスに書いた通り私はフットワークの軽いオタクだ。そのフットワークの軽いオタクにして、3か月でたったの10時間弱しか盤を挟めていない。予想はしていたが予想以上に機会に乏しい。しかも相手はガチ教室の先生オンリーだ。
前回のnoteで買った「日本将棋連盟 ○○支部」(○○は地名)数回分の回数券を律儀に使い切り、予想以上に楽しくないどころか通うのがしんどくてきっちり詰んだ。
結論:無理。
個別指導の枠でお邪魔しているので、先生1人に生徒数人というごく普通の形式になるわけだが、私の完全な勘違いで個別指導とは大人枠だと思っていた。
横の席に初等教育「将棋」のガチ勢小学生男子。めちゃくちゃ怖い。初心者大人女私、すくみ上がりながら横を見ないようにして盤だけを凝視しつつゲロを吐きそうな気持ちになった。空気になりたい、頼むからこっちを認識しないで欲しい。場違いなのもアウェーなのも分かってるのよ、ごめんなさいごめんなさい。
別に何を言われることもないのだが、自分がお呼びでないことを明確に思い知ることが出来る。俗な例えをするのなら、合コンで高収入高容姿高学歴コミュ強同性が隣の席、を想像して欲しい。何か攻撃をされるわけではないが「帰りたい」「来るんじゃなかった」と大体の人はなると思われる。
僅少化した社会であまりに価値評価が違うものに隣接されると萎縮する。初心者であるので空気だった自己肯定感が、マイナス方向にばかり下がった。彼がダイヤの原石なら、私(女、大人、初心者)は不法投棄されたゴミだと思った。
私と似たようなデバフステータスでお金とメンタルをドブに捨てたい方は試してみて欲しい。私はメソメソ泣きながら帰った。
自分の給料からお金を払って仕事外の時間を使って、私はなんでゲロ吐きそうな気持ちになって泣きながら帰っているのだろう。
集会などに行って年配男性から嫌がらせを受けてくるのを期待した方もいたかもしれないが、初等教育将棋の子供のほうが予想しなかった分ダメージが大きかった。
明記しておくがガチ教室の先生に非は一切無い。当県の文化的資本が貧しいことは知っており、私がガチ教室のメインターゲット層でないことも承知の上だ。自分から飛び込んでおいて、楽しくなかったぞゴルァと文句を言う気もさらさら無い。全オタクの必修理念はnot for meだ、住み分けよう。住み分け先が無いから詰んだわけだけども。
ガチ教室は当県唯一の初等教育の場としての仕事をきちんと果たしている。ただ、観る将から入った私とて地元出身の棋士や女流棋士を応援してみたかった、そこは少し残念である。
このnoteは『観る将よ、今こそ指す将へ(女性普及を考える)』に対して、「実際にやってみたらどうなるか」を提示するために開設した。観る将女性が指す将を始め、将棋を楽しんでいる男性を理解して欲しいと書いた人は女性に何と言って欲しかったのだろう。『合コンのさしすせそ』でも言うと思ったのだろうか。
観る将から指す将になってみた私の感想は怨嗟のあいうえおだ。
ああ
いいなあ
羨ましい
永遠に
追いつけない
私は自分のステータスが著しく不利だと認識しており現状も想定内だが、観る将が指す将になって3か月、楽しいどころか、子供、男性、都会と比べてガチでしんどい。
趣味って始めたてが一番楽しいものじゃない?こんなに楽しくない趣味、私初めて♡
私の所持ステータスが指す将社会で最悪なデバフ故に、指す将棋くんがものすごく不憫な評価になっている。マジでごめん、君は悪くない。君は悪くないが、いい年した社会人女が泣きながら帰ったのも事実だ。
②47都道府県ガチャ
私の怨嗟ばかりを書くのも忍びない、建設的な話をしよう。そう、都道府県ガチャだ。建設的なガチャとは。
ルール:「将棋 カフェ ○○」「将棋 Bar ○○」○○に県名を入れて検索。支部やら道場やらではなく初心者、大人、女性、ライトユーザーな観る将が行けそうな将棋の場所が、有る県か無い県か。ググりました、47都道府県分。
以下結果
北海道 1/1
東北 1/6
関東 5/7
北陸中部 6/9
関西 2/7
中国 2/5
四国 0/4
九州沖縄 3/8
行けそうな施設が何かしら有る県、20県/47都道府県。
有り無し判定はかなり緩めの設定にしており、昼か夜か食事か酒か、設備や客層などで絞り込んでいない。各種情報誌に掲載される有名スポットが存在する東京愛知大阪近郊都市圏を除くその他の県に、私(初心者・大人・女・運転手)でも飛び込めそうと思えたスポットは5未満という感覚だった。
ちなみに同県で同い年くらいの観る将女性と話す機会があったため、「指す将はどうですか」と尋ねてみた。「一か所(ガチ教室)しか無いから…」と答えが返ってきた。人間は危機や嫌なことを予想で回避できる生き物だ、彼女が扉を叩かなかったことは責められない。なぜなら、飛び込んだ私が泣いて帰ったからだ。
想像でしかないが、観る将はそこそこググってると思う。ググった上で都道府県ガチャでハズレを引いて諦めた観る将、結構居ると思う。
③余談
ガチ教室通いは第7波の落ち着きか怯えずにすむまで当分遠慮したい気持ちだが、行かなければ良かったとまでは思わない。その理由として幾つかの解像度が上がったことがある。
・「研究せずに対局することは無意味」
ガチ教室の日に際しては家でなにかしら勉強して行かなければ意味がなく、お金と機会を棒に捨てるようなものという強迫観念に駆られた。「戦法を指定してくれていいですからね」「この先は勉強してきてからにしましょう」ガチ教室は自宅での学習を前提に対局し、さらなる課題を貰う場なのだろう。ガチ勢の子供さんも次に勉強して来るべき定跡を指導されていた。
しかしその時の私は時世の煽りを受けて週55時間労働し、何なら自治体に日曜日も開けろと要請されている社畜であった。超絶にタイミングが悪い。大人、女、地方民に続く四重苦目には(現役労働者)が入った。
推しの言葉を身をもって理解させられ、対局に挑む先生方の気持ちを少しばかり体験できたのかもしれないが、都道府県ガチャに外れているせいなので嬉しくはない。
自動車運転の免許を取りに教習所に行ったつもりが、免許は自宅で勉強して来ようねのサーキット場だった。ガチ教室の先生よりも毎回帰りがけに寄っていたパン屋の奥様と仲良くなり、サンドイッチやらクッキーやらをおまけに貰う仲になったのはネタ高が高い。
生えかけの牧草くらいになりたい人生だった。小学生男子の着ぐるみが欲しい。
・「将棋は受験勉強になった」
つい先日も「学歴よりも経験重視」がツイッターで話題になったばかりだが、3年前に大学入学共通テストの英語民間試験導入で「自分の身の丈に合わせて勝負して頑張ってもらえば」と発言して燃えていた政治家の方はお元気だろうか。
教育は地方(賃金)格差と性差が顕著だ。私の持つステータスはおよそ受験勉強においてもマイナス方向にしか作用しない。男のいとこ達より成績が良かった私は「しつけのなってない娘」と伯父に罵られたこともある。
『好きな将棋を、好きなように、好きなだけ』とは対極にある『身の丈にあった将棋』という地獄のスローガンが浮かぶ。
私(女・大人・初心者・本州外ガチャ外し)の身の丈に合った将棋
『そこに無いなら無いですね』
である。牧草になりたいと言ったが、草も生えない。
ストロー効果という言葉がある。新幹線、飛行機など交通網が整備されると大都市に経済活動が集中し、市町村や地方都市から人口が流出し地方が貧困過疎化する現象である。シンカリオン無印は全人類が見るべきアニメだ、間違いない。
私は年に数回東京の同人誌即売会に出るオタクであり、都市圏の友人も多い。よって、私のこの現状が都会では全て何も問題にならず、欲しい教育資本に容易にアクセスできることを知っている。
地方民初心者女の活路はオンライン将棋教室しか無いが、インターネットも新幹線と同様に「都会ならば全部叶う」絶望的格差を教えてくれる。
羨ましい。
「女性だけで固まらず、勇気と希望を持って男性に対局を挑み、将棋を楽しんでいる男性を心から理解してほしい」
などとのたまえる無自覚な傲慢さと、この発言に至れる初等教育を受けられている恵まれた環境が、心の底から羨ましい。私は盤の前に座ることすらまともに楽しめていないのに。
進学、受験、就職、人生の折々で散々バトった相手と久しぶりに戦っている。環境ガチャと戦うに努力の限界を感じる、この既視感は確かに将棋は受験勉強だ。
④次回
「ガチ教室しか無いぞ、地元死ね」
という愚痴をつらつらと書いてしまったが、無策で地方に住んでいるわけではない。問題を解決する唯一の方法、4重苦目はデバフでもありバフでもある。
定職&課金。
そもそも、Abemaトーナメントや将棋本の話をしながらコーヒーを横に置いて将棋を盤で指してみたいエンジョイ勢なのに、何で私は泣きながらこのnoteを書いているのか。
強くなければ人権が無い地方ガチ教室ゆえのバイアスな気がする、距離を取って正気に戻りたい。
真面目な話、せめて達成感か楽しいかのどちらか片方でもあれば通い続けられたと思う。段位者だらけの教室で怯えて、通うのが憂鬱になって。ひと月で将棋ウォーズは8級まで上げたものの戦型を覚えていないレベルで1~3級の人と当たり始めたのが怖くて、起動もしなくなった。
「頑張ってますね」と褒められてみたい。努力が評価されるのは義務教育まで、なんて言葉を仕事以外で使うものじゃない。
ということで次回のnoteは
『経験は金で買え。デバフを万札で殴り倒した編』です。引けるまで課金すれば実質無料。「経験だけはお金で買えない」と発言された方の経験代は誰が払ったのか。
経験はお金でしか買えない。