欧州オケと違い、公的支援はほぼゼロ、伝統もゼロからスタートした『フィラデルフィア管弦楽団』世界トップクラスに昇りつめた原動力は市民のサポート。市民の心に響かせてきた活動とは?
2021年9月23日(金曜)午後1時~ クラブハウスで。
https://www.clubhouse.com/event/PQN7zbGB
一人のフィラデルフィア市民の個人意見として
指揮者、共演者などからの評価
真似できない強烈的な個性(ヤニック・ネゼ=セガン)、並外れた機能美、磨かれた美、輝かしい音色、分厚く柔らかくて優しくて弾ける音、伸び伸びと広がる豊麗なシルクのようなゴージャスな弦楽の音色、究極のダイナミズム、力強いカンタービレ、万能で柔軟、一緒に冒険できる、フェラーリーだ! アクセルをグングン踏める! Those Fabulous Philadelphians! 等々
➡ いわゆる『華麗なるフィラデルフィア・サウンド』
・クラシック音楽界で「〇〇サウンド」と言われているのは二つのみ。
・カジモト特別連載 ① ② ③
・でも最初はアマチュア ➡ ローカルのプロ楽団 ➡ 現在
今日の会話
・ローカルからワールドクラスに昇りつめるためには?
・121年の歴史を振り返えりながらヒントを探る。
カーネギーホールとの特別な関係
・史料館フランチェスコーニ館長が語る(ビデオ)。
・1960 NYCがホール買収 ⇒ CHC自主経営 ⇒ ホールの蘇生
⇒ 新オープン・セレブレーション・コンサート(ビデオ)
⇒ 第一回の定期演奏会(ビデオ)
ラフマニノフとの特別な関係
・ピアノ協奏曲第3番(自作自演 with フィラデルフィア管(ビデオ) 1939/40年記録)
・「世界最高のオーケストラ」と賞賛
・「交響的舞曲」
・フィラデルフィア・サウンドを想像しながら作曲
・フィラデルフィア管弦楽団に献呈
・指揮者リッカルド・シャイー「ここに来るとラフマニノフの霊を感じる」
本拠地(音づくりに影響?)
1900年~2000年 アカデミー・オブ・ミュージック歌劇場
2001年~ キメル・パフォーミング・アーツ・センター
弦、コンサートマスター、オーボエ、カーティス音楽院
・フリーボウイング(クリーヴランド管弦楽団との比較)
サンプル:弦楽セレナーデ (レコーディング)
・ノーマン・キャロル(オーマンディ・ムーティ・サヴァリッシュ)
スタニスワフ・スクロヴァチェフスキ、バイオリン協奏曲を献呈
キャロルのソロ・バイオリン(ビデオ)を少し
・ジョン・デ・ランシー
・シュトラウスの《オーボエ協奏曲》誕生の契機
・カーティス音楽院校長 ⇒ チェリビダッケを指揮科に
・ウィーン音楽院 ➡ VPO と同様、カーティス音楽院 ➡ Phil Orch で独特の音づくりを継承
音楽監督:強力なリーダーシップ
1)1900年 フリッツ・シェール(独)楽員を欧州系に
2)1908年 カール・ポーリヒ(捷)ラフマニノフを米へ
3)1912年 レオポルド・ストコフスキー(ビデオ)(英)
- 欧州が伝統重視ならこっちはイノベーション!
- 左右両翼、フリーボウイング、管楽器のビブラート etc.
- テンポも自由自在に操ってやる(レコーディング)!
- バッハのオルガン作品もオーケストレーションしてやる(レコーディング)!
4)1936年 ユージン・オーマンディ(レコーディング)(匈)色っぽい音に洗練さを!
5)1980年 リッカルド・ムーティ(ビデオ)(伊)音楽はドラマだ(レコーディング)!
6)1993年 ヴォルフガング・サヴァリッシュ(レコーディング)(独)新しい血を!
【前世代】サントリーホールでのこのコンサート(ビデオ)
【新世代】楽団員からの並々ならぬ敬慕(ビデオ)
7)2003年 クリストフ・エッシェンバッハ(レコーディング)(波蘭)私のこだわりについて来て!
(2008年 暫定 シャルル・デュトワ(ビデオ)(瑞)第8代目が見つかるまで守護神。)
8)2012年 ヤニック・ネゼ=セガン(ビデオ)(加)もっと歌って!オケは人声だ!
こよなく愛された3人の客演指揮者(1993~):
・ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス(西/独):読響
・ジョルジュ・プレートル(仏):プーランク、マリア・カラス
・サイモン・ラトル(英):米でフィラデルフィア管に限定
オーケストラの向こう側 ~ フィラデルフィア管弦楽団の秘密(映画)
・予告編ビデオ
アメリカと欧州のオーケストラの決定的な違い - サヴァリッシュ
・政府か市民か?あなたのパトロンは。
・1999年10月16日 イーヴォ・ポゴレリチ の出来事
・1994年冬のある日の「暴風雪の日の演奏会」(日経記事)
サヴァリッシュが行った市民の心を掴めた活動
・シーズンを通じてナチス迫害を受けたユダヤ人作曲家に焦点
【例】Terezín『いのちの旋律』収容所のオーケストラ、収容所の子供達
(参考:NHK)
・パヴェル・ハース:Study for strings(レコーディング:例 他のオケ)
最近の草の根活動:Our City, Your Orchestra 構想
『この街は私たち皆のもの。このオーケストラもあなたのもの』構想
・Community Rush Ticket 100枚の低価格チケットを常に確保
・多民族国家ならではの楽団員の構成
・フィラデルフィア = 古代ギリシア語で「兄弟愛の街」
・街のエスニックな魅力を引き出し、多民族・異文化を音楽で繋ぐ
・ヒスパニック系住民地区でのコンサーㇳ(ビデオ)
・日系バスーン奏者、ピッコロ奏者、メキシコ出身クラリネット奏者
・メキシコ出身ホルン奏者、イタリア系楽器奏者
・移民局でのドヴォルザーク『カヴァティーナ』(ビデオ)
・Welcome to America! 新米国市民へのお祝い演奏
・日系チェリスト、台湾出身ヴィオリスト、中国出身バイオリニスト
・チェロ、ヴィオラ、バイオリン三重奏にバイオリニストが編曲
・青少年(高校生)オーケストラへの厚い指導
・Philadelphia Youth Orchestra (ビデオ West Side Story)
・伝統の「Side-by-Side」:プロと青少年がスタンドを一緒に
・『英雄の生涯』コンマス・ソロ(ビデオ) ⇐ フィラデルフィア前コンマスのノーマン・キャロル氏が自身の楽譜(上げ弓と下げ弓の表示付き)のコピーを渡し、直々に教授。「弦楽器(String Instruments)と呼ぶのは間違っている!弓の方が難しい。弓楽器(Bow Instruments)に改名すべき!」がキャロル氏の主張。
・Magnificent Seven (写真) ⇒ National Youth Orchestra of USA に合格(街の誇り)
・一つのユースオケから7人(❣)が全米最高峰のユースオケ(100人)は全米で最多。
➡ カーネギーホール公演 (ビデオ) ➡ 世界ツアー
ちょっと変わったサービス
・Free ticket change 同じプログラム(木・金・土・日)
・Program Notes - コンサート版 FMラジオ(NPR)版
・歴史的出来事、音楽・文学・美術(同じ時期の作品)
・フィラデルフィアによる初演、最近の演奏、レコーディング
・作曲家とフィラデルフィアの関係
アメリカ合衆国の文化大使として
・古都の文化的シンボル:活発な世界ツァー(ビデオ)
⇒ 財政圧迫、でもやらねば!(比較:ボストン響)
⇒ 団員一人ひとり、ツァー先から絵葉書を「フィラデルフィア管弦楽団子供ファンクラブ」の子供達に送る。団員みんなで手分けして。
・日本ツァーの場合、虎ノ門米国大使館でレセプション
⇒駐日アメリカ合衆国大使、団員やフィラデルフィア関係者を招待。
⇒写真:金出教授と筆者
・1973年、欧米のオーケストラとして中華人民共和国へ
⇒ 1971 Ping-Pong 外交 ⇒ 1972 ニクソン/毛沢東 ⇒ 1973 Phil Orch
⇒『運命(オーマンディ)』と『田園(毛沢東夫人江青)』の戦い
⇒ 江青「この世に運命はない!、曲目変えろ!」団員中国到着後に。
⇒ オーマンディ「何様のつもりだ。変えるもんか!」
⇒ 優秀な米国若手外交官(Nicholas Pratt 氏)が問題解決へ。「農民が中国の原点なのです。マエストロご理解を!」
⇒ オーマンディ納得。リハーサル無しぶっつけ本番の『田園』。大成功を収める。
⇒ 後で判ったこと。江青はディズニーのファンタジア(ストコフスキー指揮、フィラデルフィア管、『田園』)が好きだったからでは?
⇒ 運命はしかしあった。幼い Tán Dùn はラジオでこの演奏に接し、音楽の道を進むことを決心したという。
2011年 リーマンショックの煽りを受けて民事再生法の更生手続きへ
・内部で現状維持派と改革派が対立(理事会、涙の投票へ)
・「来るネゼ=セガンに財政難の遺産を残したくない!」
・「やるなら今しかない!」⇒見事に財政立て直しに成功
・NPR(米国公共放送):特集フィラデルフィアの復活を報道。他のオーケストラにこれほどの勇気があるのか、を問う。
年間予算 USD55m (約60億円)
・予算金額全米第7位:ホールの経営を手放すことで身軽に
・団員数:100人弱 (年収: コンマス/首席/一般 = 5/2.5/1 千万円)
収入源
・募金(76%)、チケット(18%)、その他(6%)
・募金の方法もクリエイティブ
・団員が座る椅子に募金者名(「私はこの奏者が好きだ!」)
・市民から成る「ボランティア協会」の募金活動がスゴイ
・お金が集まりやすいマッチング募金システム
・Philadelphia Orchestra Association (楽団協会)
・経営・運営に目を光らせる。
・一般市民、少額募金者であっても協会理事の選定に口出し
(例)団長の解雇(事件)
・世界ツァー同行(ビデオ):大口募金者である必要はない。
日本国内オーケストラ(参考資料)
・中原朋哉氏「日本のオーケストラに関する公的支援制度の研究」論文
・38のプロ・オーケストラ(正会員25・準会員13)
【例】瀬戸フィルハーモニー交響楽団(四国唯一)
・最新情報(準会員13):中原氏のアドバイスにより
・プロとアマチュアの境界 ➡ 一層曖昧になりつつある(discussion)
・数々のアマチュア・オーケストラ(1000楽団以上?)
【例】愛媛県でも5つ楽団(以上?))
・愛媛交響楽団(あいきょう)
・伊予管弦楽団
・松山バッハ合唱団・管弦楽団
・愛媛大学交響楽団
・大洲市民吹奏楽団