見出し画像

お地蔵さんに救われた話①

昭和人間なら誰でも知っている「かさ地蔵」
という昔話をご存知だろうか?

〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 
藁で作った笠を売って生計を立てる貧しい老夫婦

正月までに、せめて餅代を稼ごうと、
編んだ傘を売りに出かけた爺さん

思うように売れなかった笠を持って
雪が降ってきたので帰りを急ぐ道、
ふと傍に6体のお地蔵さんが佇んでいた。

降り始めた雪が6体のお地蔵さんの頭に積もり始め…

お爺さんは、5つあった売り物の笠を
お地蔵さんの頭にかぶせてやり
もう一体には自分の傘をかぶせて帰った。

自身の傘さえない爺さんに驚いたお婆さんが理由を聞くと、
お地蔵さんの話をした爺さん。

お婆さんは
「それはそれは良い事をした」と大層喜び
「餅は買えなかったが、これで地蔵様も冷たい思いをしないで
正月を迎えられる」と
二人で貧しい年越しを過ごそうとした大晦日の夜

床についた爺さん婆さんが眠ろうとする時
何やら外の物音に気づき
老夫婦が戸を開けると、
家の前にお餅や財宝が置かれていた。

驚いた爺さん婆さんが足跡の先を見やると、
遠くにお地蔵さん達が去って行く姿が見えた。
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜

という昔話だったと思う。


それで、お地蔵さんに救われた話というのは・・・


何年か前のある夏、

家族でキャンプに出かけた時のこと、


その話の前に、

当時、小学校低学年だった息子は
幼少の頃から、何も教えていないのに
お地蔵さんや祠があると、
必ず手を合わせて一礼をする習慣があった。

おそらく誰かの、そんな行為を見ていたのだろう


一度、それを目の当たりにした時

「えらいね、いい子だ」と誉めた

それ以来、ずっと・・・

件のキャンプに行く道すがら…
ネットの情報だと徒歩15分程とのことだったので、
駅から歩いて山道を上り始め、しばらく行くと
傍にお地蔵さんが祀られていた。

比較的、大きめの身長1m余ある
顔も優しそうで良く造られたお地蔵さんだ


息子はいつものごとく両手を合わせたので、

親の僕らも息子に習って3人揃って

「これからキャンプに行ってきます
  無事故で楽しく過ごせますように」

と声に出し
お地蔵さんに手を合わせた。

息子は傍の野花を摘んできて
お地蔵さんの前に置いた。

そして3人でキャンプ場に向かい再び歩き始めた。


しばらく行くと、

後方から来た一台の車が、我々の横に停まり

「どこまで行くのですか?こんな山道を」と

運転していた男性が声をかけてきた。


キャンプ場を告げると、

「乗っていきますか?わりと遠いですよ」とのこと

しかし見ず知らずの方に世話をかけるのも憚られたので

「ありがとうございます、でも山に来ることも少ないし
 物見がてら歩きますので」
と言って頭を下げて好意を辞し、

車はそのまま走り去った。


ところが、しばらく行くと、
さっきの車が停まっていた。


会釈して通り過ぎようとすると
「やっぱり遠いですよ、あそこは…乗ってって下さい」と

ご丁寧に待っていてくれたのか
お言葉に甘えて乗せて頂く事にした。

話のとおり、歩いたなら15分どころか結構な距離であった


無事キャンプ場に到着し、送ってもらったお礼を述べ

その車が走り去ると、息子が

「車の人、あのお地蔵さんだったなぁ」と言った。


ハッと夫婦で顔を見合わせ
「確かに、まじか!」と……

あまりにも
あのお地蔵さんそっくりな顔だったことを思い出し、
思わず車が去った方へ合掌した。

……そりゃ僕も大人ですし、
何もお地蔵さんが本当に動くワケない、

それくらい理解しています

でも そういう不思議な話は信じたい


子供が手を合わせる純真な心に…

宇宙が呼応したのか
お地蔵さんの見えない神通力?が人を動かしたのか
真相はわからないけれど、

何かが働いたことだけは確かだと、信じて過ごしたい。


幼い息子よ、
何かとても大切なことに気づかせてくれてありがとう
と感謝した思い出。


・・・という第一話

いいなと思ったら応援しよう!