くちマスクなんかしていると、している本人が病人なんじゃないかと疑われ、あからさまに嫌な顔をされたものだった。
くちマスクをしている人がチャツウッドに増えた。
オージーが街中でマスクをするなんてこの一連の惨事以前は考えられなかったことだ。
ああ、もちろん仮装系のイベントのときに変な被り物のマスクなんかする奴らはいるし、歯医者さんなんかはマスクをしているけれど、ただの一般人が病気の予防および不拡散のためのあのマスク姿で街を出歩くなんてそんなの全く見たことが無かった。
くちマスクなんかしていると、している本人が病人なんじゃないかと疑われ、あからさまに嫌な顔をされたものだった。
今年の4月、5月ごろなんて、オージーは東アジア人を見るとあからさまに嫌な顔をして3mぐらい遠ざかった。マスクをしていようがいまいが、東アジア人は皆中国人だと思われて、近づきたくない人種ナンバーワンだったのだ。もちろんオージーは避けるだけで、マスクはしていない。
武漢であんなことがあったからに違いないが、オージーの中国人に対する嫌がらせは悪い方に向かっていたと思う。
そして俺らがヨーロッパ人を国別に分別できないように、彼らも東アジア人を見分けることができない。だから彼らは中国人だと思って避けたつもりでも、日本人の俺も避けていたりした。一応言っておくと、俺の言う東アジア人とは、日本人、中国人、南北朝鮮人、台湾人、香港人のこと。
そんなオージーがどうだ。
メルボルンに第2波がきて、2度目のロックダウンになったあたりからだと思うが、オージー自身がマスクをして歩いている姿をよく見かけるようになった。ジムのスタッフもマスクの人が増えた(全員とは言えない)。
人は変われば変わるものだ。オージーがマスクをするようになったのだ。
冬も完全に終わったが、そのお蔭なのか今年はインフルエンザの流行もなかったように思う。インフルエンザにかかったという人に全く会わなかった。
なんせ今はトイレの手洗い場に「正しい手の洗い方」のポスターまで貼ってある。
まだたぶん「うがい」のところまではいっていないと思うが、「外出時はマスクをして、家に帰ったら手洗いとうがい」という日本の小学生の域まで彼らが達するのももうすぐなのかもしれない。
いや、どうかな。