すべて神様の計画通り
オフィスに到着してコーヒーを入れて、
じゃあミルクを少し…、と冷蔵庫を開けたところ、
水?
え、水?
なんで、水?
みずみずしい。
冷蔵庫の中がやけにみずみずしいのだ。
しかし「瑞々しい」のではなくて、「水水」しいのである。
ワンドアの冷蔵庫、
中の冷凍の部分に存在した大量の霜がとけ出して
なんだか庫内だけ雨が降っている。
外はあんなに晴れ上がってるのにかかわらずだ。
もう幾日雨が降っていないと思っているのだ。
降るなら外に、しかも貯水池にピンポイントで降ってほしい。
ああああ、一番下の野菜庫は水が溜まって池になっているではないか。鯉が泳いでいたって不思議ではない。
このオフィスを引き継ぐ時に前の塾から貰い受けた冷蔵庫。
塾ができた時からだとすでに10有余年、
しかも新品で買ったかどうかもわからない。
寿命ってことだな。
人も冷蔵庫も寿命は突然訪れる。
(気をつけよう)
痛い。実に痛い。
実家のこたつの角で不意に向う脛を打ったときと同じくらい痛い。
ただでも金欠で辛いのに、今この時期の出費。
痛い、痛すぎる。
そう言えば今朝は洗濯をしようとして買って何回かしか履いていないジム用の七分丈パンツがないことに気づいた。ジムに忘れてきたんだと思うけど、さすがにもう捨てられていよう。
「DANCE」ってピンク文字で書いてあって結構恥ずかしかった(ダンサーの肩書きだけは持っていない)とはいえ、買ったばかりだから勿体無いことこの上なし。
ここで考える。
モノにはいつか寿命がやってくる。冷蔵庫はたまたまこの時期、暖かくなって片付け作業がしやすくなった今の時期を狙って壊れてくれた。最期まで俺のことを気遣ってくれたいい奴だ。お葬式を出してあげられなくてごめん。
パンツは恐らくダンサーじゃない俺のところでは居心地が悪かったのだ。それを俺に直接言うと俺が傷つくと思ったのだろう。何も言わず、黙って去っていく道を選んだ。優しさに気づかずごめん。
とにかく今やっている仕事をきちんとやり遂げればちょっとは収入があるわけで、新しいのはそれで買っちゃえばいい。
そう考えると、神様は先にもう仕事をくれていて、出費のショックが和らぐように設定してあったのだということに今更気が付いた。
すべて神様の計画通りなのである