いつものベトナムのパン屋にベトナムロールを買いに行った。昼過ぎだったから程よく混んでいた。
今日はボディコンバットがいつもより30分長い、90分だった。
大学の授業(1コマ90分)を受けていたときは思ったことがただの一度もなかったが、ボディコンバットはいつも90分ならいいのに、と思う。
それにしてもチャツウッドのFITNESS FIRSTの中国人の占有率はものすごい。中国人だらけだ。「どこの国か?」と思ってしまう。
今日のクラスは9割がた中国人と言っていい。韓国人も居るにはいるが、中国人には遠く及ばない。
日本人はほぼほぼ見かけないが、ともあれ、俺自身も東アジア人であるのでオージーにしてみれば同じこと。苦々しく思っているオージーもいなくはないんだろうな。
とくに中国発の感染症なんかのことが入り込んでくるとなおのさらである。
さて、話は全然変わる。
この間、いつものベトナムのパン屋にベトナムロールを買いに行った。昼過ぎだったから程よく混んでいた。
ベトナムロールをご存じない方も多いと思うからもう少し補足の説明をしておくと、ベトナムロールとはベトナムの美味い食べ物である。それはギリシャの美味い食べ物とは全然違うし、ボリビアの不味くない食べ物とも違う。そう、全く違うのだ。どうだろう、お分かりいただけただろうか。
と、ガラスの商品棚越しに、主人のベトナム人のおじさんとオージーのおばさんが問答をはじめた。
「ホットチョコレートが欲しいの」
「うん」
「私はホットチョコレートが飲みたいのよ」
「うん、でも金はないんだな」
「ホットチョコレートが飲みたいの」
このおばさん、何というか、少し障害があるようで、普通の会話ができていない。そしてどうやら金も持っていないようだ。
金を持っていないのに店でホットチョコレートをオーダーして引かないのである。店にはほかに客もいるのにこのおばさんのことで先に進まない。
と、見ていられなくなったのか、インド系と思われる若い男が名乗りを上げた。「俺が払うよ」
店主のおじさんがそれに笑顔で応え、「心配するな」と諫める。そしてスタッフの女の子にホットチョコレートを作るように言う。
それを潮に店内は動き始める。インド系の彼も自分が買ったものを手に店を出る。
しばらく待っておばさんはホットチョコレートを手に入れ、もちろん金は払わずに、そしてお礼を言うこともなく出て行った。手に入れたホットチョコレートにすでに夢中のようだった。
「俺にもタダでホットチョコレートをくれよ」と追従する輩はいなかった。
新しい客が来て新しい注文をした。そしてまた新しい客が来た。
もう何事もなかったようだった。
なんだかオーストラリアの懐の広さを見たような気がした。