危ない目にはあわないよう前もって自分で注意しておくことはやはり必要だとは思うのだ。
ヘッドフォンやイヤフォンは人類が生み出した便利な道具の一つだ。
その本人にも、周囲の人間にも非常に有益な品である。
その存在がなかったとしたら我欲にまみれた個人主義によって発せられるおびただしい量の大中小様々な音が社会に溢れることになる。
もちろん俺も人類の端くれであるからイヤフォンくらいは持っている。持ってはいるが外で使うことはない。
それは外で他人に迷惑をかけたいと願っての行動ではない。外を歩きながら音楽を聴いたり、ラジオを聞いたり、落語を聞いたり、電話をしたり、食事を作ったり、泳いだり、反復横跳びしたり、眠り込んだりする趣味が俺にはない。だからイヤフォンをする必要がないのだ。
その外でイヤフォンをしない俺の生活習慣に命を救われたことがある。
ちょっと大袈裟だが、本当の話だ。ただ、大どんでん返しとか、意外な結末とかはない。話は淡々と進むだけだ。それでも良ければ読み進めてほしい。それで嫌ならハートをクリックだけしてこの場を離れていただいて構わない。
ある夜職場からPacificHWYを家に向かって歩いていた。
ガソリンスタンドの向かいにMowbray roadに行くために左に曲がるところがある。横断歩道のないその道を渡っていると、背後で車のブレーキを踏む音がした。
反射的に振り向くと、そこには一台のタクシーが、左折しようとしていたのかどうなのか、とにかく中途半端な感じで止まっていた。
ここからは本当に一瞬の出来事ではあるが結構なスローモーションで時が進む。
俺がタクシーを認識した次の瞬間、
その後ろから四駆の乗用車がそのタクシーの尻に物凄い勢いで追突したのだ。その力で後ろから押されたタクシーが前方に、つまり俺の方にぐいーんと向かってくる。
やばいと察してタクシーの進行方向とは違う角度の右前方にダッシュする。
いや、もしかしたら瞬間移動したかもしれん(ドラゴンボールを読んでおいてよかった)。
タクシーはその勢いのまま、曲がり口の奥に立っていた建設工事の説明の書かれた大きな看板(記憶違いなら申し訳ない。現在そこはメトロの工事中。)に追突…っていうか、それにぐいんと乗り上げる形で車体が一旦斜めになる。そしてそのまま重力その他、いろんな作用反作用の力によってがーんという大きい音とともに地面に叩きつけらつつ、揺り戻されたような感じで道路に少し戻ってきた。
その看板は、歩道と空き地を仕切ってるフェンスのところまで見事にぐっしゃり折れていた。
で、その後ろの四駆。
ほんの数秒は止まっていたと思うが、キュルキュルとバックしすると、これまらすっげえ勢いで逃げた。
バックしてからこちらに向かってきたように見えたから、俺を轢き殺しにくるのかと一瞬びびったが、ヤツはもっとハンドルを切ってHWYを南へぶるるるーーーーーーーっって走り去ってしまった。
目が悪いもんでナンバーとかみえていないし、
車にも疎いんで、車種とかも分かんない。
周囲に誰もいなかったし、
俺が事故の目撃証言とかしなくちゃなのか??と思ってもみたけど、
タクシーのオッちゃん(無事!!車からでてきてオーマイガッみたいななポーズしてんの)が特に俺を求めてはいなさそうだったから、どきどきしながらその場を離れて急いで家に帰った。
興奮して家に帰ったのに、フラットメートたちはすでに寝ているようで、誰も俺の話を聞いてはくれなかった。とりあえず俺は、冷蔵庫の中の作り置きの麦茶を飲んで熱を冷ました。
しかしこれはまじで怖かった。
タクシーのブレーキの音に振り向いて本当によかった。
危うく轢き殺されるところだったのだ。
ヘッドフォンやイヤフォンをして大きな音量で音楽を聴いていたら気が付かなかったかもしれない。神様がもうちょっと生きさせようとしてくださったのだろう。このとき俺はそう思ったのだ。
相変わらず俺は外でヘッドフォンやイヤフォンを装着せねばならない状況に身を置く生活を送ってはいない。
ヘッドフォンやイヤフォン会社の営業を妨害したいわけでも、いちゃもんを付けたいわけでもないのだが、危ない目にはあわないよう前もって自分で注意しておくことはやはり必要だとは思うのだ。
写真はベランダに来るコッカトゥ。
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