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冬になって、8月になって、金曜日になるとふと思い出す。
今朝も冷気が隙間までびっちりと立ち込めていて、緩まぬ寒さの中のチャツウッド地方。オフィスに着いてすぐに生姜レモン湯を飲んでいる。
本当はホットチョコレートの方が飲みたいのだが、カロリーのことが頭をヒュッと過ったのだ。いろいろ恐ろしい。
毎年8月は寒いシドニーではあるが、
そんな凍える毎日に、こんな心温まる話もあった。
午前中のお稽古のとき、毎週金曜日に通ってこられているある女性が
来る早々小さな包みを俺に差し出しておっしゃった。
「これ、鳥にあげてください。」
包みの中身は鳥の餌だった。(※写真)
「え。」
「鳥、いるでしょ。あげてください。」
首をちょっとだけ傾けてニッコリ微笑む。
「Youtube.」
「鳥。」
ちょっとだけすれ違った時間。
「えっと、あの鳴き声、Youtubeですけど。」
「え。」
書道教室ではBGMにクラシックか、自然系の森の音とか川の音とかを流している。俺のデスクスペースはお稽古しておる方からは見えないので、彼女はその鳥の鳴く声を本物の鳥だと思って餌をわざわざ買って来てくれたのだ。(カッコーとか色んな鳥が鳴いてたはずだか、彼女の中では一体何羽くらい飼っていると思ったのだろう…)
寒い心にぬくもりを。
いい話。
残念ながらこの女性はもうお稽古にいらしてはいない。
冬になって、8月になって、金曜日になるとふと思い出す。
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