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信念の人、冤罪弁護士・今村核
弁護士・今村核(いまむら・かく)先生が一昨年(2022年)8月に亡くなられていたことを知ったのは2023年1月のことだった(享年59歳)。
有罪率.99.9%という日本の刑事裁判の中で14件の無罪判決を勝ち取り、「冤罪弁護士」の異名をもつ。
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NHKのドキュメンタリー番組『ブレイブ/勇敢なる者「えん罪弁護士」』(2016年11月放送)を偶然観て存在を知り、こんな方がいたのかとたいへん感銘を受け、尊敬していた。
「世の中の見方が大企業中心で、弱者への視点があまりない。とても嫌なやつに見えた」と大企業の副社長を務める父親と袂を分かち、「(冤罪の)被告人を単にかわいそうだとか思わない。彼らの孤独は自分と重なる」と、まったく金にならない事件を全身全霊で取り組んでいらした。
今村先生の死は、今の日本という国にとってとてつもない損失だと心から思う。
※FCCJでは日本の「人質司法」の問題性を語り、改善を訴えた。
ちょうど亡くなられた数ヶ月前、東京高裁に傍聴に行った際偶然先生のお姿をお見かけしたことがあった。「応援してます」「尊敬してます」などとお声がけしてたかったのだけれど実行に移さなかったことが今も心残りだ。
訃報は当初伏せられていたようで所属事務所の発表で周知された。報道は大手新聞ベタ記事程度の扱いだったようだ。
欺瞞に満ちた世の中で、弁護士という職業のみならず、生き方というものに信念や矜持というものを信じたいと少しでも思う方には、今村先生の存在を知っていただき、ご冥福を祈っていただきたいと思うのです。
※上記番組はNHKオンデマンド配信で現在も見ることができ、書籍化もされています。(『雪ぐ人』佐々木健一、新潮文庫。番組は、探せばネット上でも全編観ることができてしまうのですが。)
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講談社現代新書