長い前書き
「子どもを守る」ことがより良い社会、戦争を含むあらゆる暴力のない社会をつくるため大切な実践であるとの思想を持つようになったのは、東京大学名誉教授・安冨歩氏の影響による。
氏は、2019年、現参議院議員・山本太郎氏が立ち上げたれいわ新選組の立候補者として同年参院選挙に「子どもを守る」という公約を掲げて立候補した。結果は落選だったが、これにより多くの人々が氏の存在や思想について知ることとなり、わたしもその一人だった。
以下は、2020年1月元日のラジオ放送による安冨歩氏と坂本龍一氏との対談である。この短い対談は、安冨氏の経歴や人となりを簡潔に知ることができ、「子どもを守る」思想についても触れられているので、まずはここに置いておく。
氏は、世の中のあらゆる暴力の源泉は、幼児期の過度なしつけ、教育、虐待などによる「暴力」にあり、あらゆる暴力から子どもを守ることによってのみ、個人および組織的な暴力から人類が解放されると説く。
アリス・ミラー、アルノ・グリューンの思想からの影響、マイケル・ジャクソンが自らの幼少時代の虐待と向き合い、これを克服し、「子どもを守る」ことの勇気ある実践者であったとともに、福音を告げた者の定めであるかのように、「子どもを守る」という理念を掲げた故に子どもを虐待しているという過酷なバッシングに合う運命にあったと述べる。
※わたしはこの放送をリアルタイムで聴いていたが、最終部分のシューベルト「魔王」という歌曲と人類と原子力との関係性についての安冨氏の秀逸な発言があったが、YouTubeではすべてカットされてしまっているのが残念である。
氏の思想に非常に感銘を受け、自分なりにこれを実践する方法を模索した結果、学童保育支援員(約3年半間)、学校児童支援員(約2年間)、障がい者児童支援(約2年半間)の職に就くことになった。
はじめは半年、否、1か月でももてばいいと軽い気持ちではじめた仕事だったが、細々と今でも続いているというのが自分でも驚きである。
一応付言すれば、残念ながら上記職は、やりがいがあり、資質を求められるものでありながら、一般に高給とは云えない。わたしは、編集者としての多少のキャリアと僅かばかりの専門知識があるので、これを活かした職のほうが経済という点においてはメリットが多く、子ども支援の職は、上記一人一揆のようなものが主たる目的という位置づけになる。
職に就いたといっても、すべて正規雇用ではなく、週1~3回、短時間のパート勤務、現在は週1、2回、一回3時間とほんのお手伝い程度である。
2014年くらいから数年間、司法試験予備試験の受験のため、ほぼすべての人生を捧げていたため、気分転換兼という意味合いもあった(もちろん、常勤では「気分転換」などという甘い気持ちでは務まる仕事ではない)。
ちなみに、元々大学および大学院で美術史を学び、「美術科」教科書編集者として生きてきて、40代になってまったく畑違いの「法曹」国家試験、司法試験予備試験を受験するに至ったのは、東日本大震災の経験の影響が大きい。東北の母方の親せきを家族のように親しくしていた者も含め、両手程亡くした。震災直後現場に赴き、幼き頃長期休みを海山遊んで過ごした街が灰色になり、深い悲しみにくれる地元の人々を見て、思考のパラダイムが大きく転換し、より直接的かつ迅速に弱者にされてしまった人々に寄り添う実力が欲しいという気持ちに突き動かされてしまった。
しかし、人が何らかの行動に出るとき、いつも理由はそれほど単純ではない。この件は別の機会に言語化してみたい。
この無謀なチャレンジは達成目前(自分としては)で歯科治療をきっかけに稀な病を発症し、体調が激変するという想定外の事態に見舞われ断念せざる負えない状況となり、無念さと体調管理との葛藤は現在も自分の中の大きな課題である。
さて、次回はまず学童保育に現場の入ってみたら、驚愕のハラスメントの温床になっていことあたりから書いてみようか。