虚無
翼があると信じていた頃
誰も甲冑を被らなかった
崖に挑む風を感じながら
僕は甲冑を被らなかった
射干玉の夜を彷徨い君は
甲冑の在処を気にかける
有為の奥山が浮き上がり
みな甲冑を背負い始めた
いつしか僕らは
武装した世界の住人となる
適応者には祝福を
反逆者には制裁を
無数の羽が舞い散る中
僕は甲冑をかなぐり捨て
夢を結ぶ旅に出た
あの大空を飛ぶことはできないらしい
それでも僕は歩き続ける
浜辺に流れ着いた甲冑が一つ
拾って中を覗き込む
この果てしない虚空の中で生きていくのか
僕は初めて甲冑を纏う
深海が大きく口を開け
青空は涙した
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