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本の感想11『緋色の研究』シャーロック・ホームズ

『緋色の研究』は、かの有名なシャーロック・ホームズシリーズの記念すべき第1作目だ。

他の人の漫画や小説を読んでる時に、「この作品(あるいはシーンや設定)はシャーロックホームズからインスパイアを受けてるな」というのがひしひしと伝わってくる時がある。

デスノートやコナン、ジョーカーゲームなどなど、(あからさまなものからちょっとしたシーンにいたるまで、)少なくとも探偵ものの今日の作品でコナン・ドイルの精神を感じないものはあまりないくらいだ。

コナンドイルがいなかったら生まれなかった名作が沢山存在するというわけだ。

そんな傑作集であるシャーロックホームズシリーズは、もちろんかなり楽しませてくれたし、そして数多くの知恵や考え方をもたらしてくれた。ちょこっと自分なりにまとめてみた。

推理分析は多くのことをもたらしてくれる

ホームズは、作中で以下のような記事を新聞に寄稿している。

観察力に富む人間は、多くのことを学ぶことができる。ある一つの提示されたモノから、見たり聞いたりしたことがないものの存在を推定、想像できる。また、顔面筋肉のちょっとした動きや、視線の移動というような瞬間的表情によって、人心の奥底まで見抜きうる。

有名なものだが、ホームズは物語の中でしばしば初めて会った人物に対して「中国に行っていた」「海軍兵曹だった」と言い当てる能力を見せる。足跡から身長や年齢、その人物の行動を推測したり、落ちている灰から煙草の銘柄を突き止めたりもする。

このように観察力というものは、事実としての多くの知識や判断材料をもたらし、それを使ってさらに推理をすることができる。これまで存在を知らなかったものまで気づかせてくれるのだ。

こんな能力がほしい。これを読んでる人も同じ感想を抱いたかもしれない。そんな人に朗報がある。というのも、作中でアドバイスをしてくれているのだ。また、コナンドイルは、そんなホームズの観察能力を、実在の医師の実在のクセからアイデアを得ているのである。つまり、我々もそれを手に入れる可能性は十分にある。

さて、お待ちかねのアドバイスの内容が以下だ。

‥そういった推理分析学は、簡単に身につくものではない。そこで初心者は、まず他人に会った時に一見して経歴職業を判別できるように修練を積むべき。

まずはこれが第一歩らしい。これこそが観察力を鋭敏にし、また、どこに目をそそぎ、何物を探り見るべきかを教えてくれる。指の爪、靴、指のタコ、表情、カフスなど、いずれもそれぞれの人物を教えてくれる一例である。

ただ、今の時代人の服装から職業を判断するのは難しくなっているかもしれない。ホームズの時代とは比べものにならないくらい多くの職種があるし、服装も多様化で自由化している。

だから、俺が思うさらなる方法はマインドフルネスになることだ。小学生のときみたいに、周りの物事をまるで初めてのもののように観察するのだ。考え事をしていてぼんやりと歩くのではなく、雑草や人々、建物などの細部に注目しながら、精神を今その瞬間に集中しながら歩くのである。

推理分析学とは具体的にどのようなものか?

「推理」と聞くと、どのようなイメージを抱くだろうか?たぶん、具体的には以下の一順のことを考えるだろう。

あるできごとが起こる。そのできごとの内容を最初から順を追って話していく。結論だけは伝えない。そしてその結果がどうなったかを考え、言い当てる。または言い当てようと考える。これが一般的に考えられている推理だ。

個々のできごとを総合して、そこからある結果を推測するという方法だ。「数ある事実が与えられた状態から、一つの事実を導き出す」という方法。

繰り返すが、一般的にほとんどの人が推理といわれて思い浮かべ、実際に行っているのはこういった未来への総合的推理だ。

それに対し、ある一つの結果だけを与えられて、「はたしてどんな段階を経てそういう結果に立ち至ったか」ということを論理的に推理するのが、ホームズが常とする逆推理、分析的推理だ。

例えば今、自分の目の前に置いてきぼりにされたコーヒーカップがある。飲み口に口紅がついている点から、99%女性が飲んでいたのだろう。かなり大きな容器なのに、飲み切ってあるところから、喉が乾いていたかもしれない。コーヒーが好きな人かもしれない。あるいはあの量のコーヒーを飲み切れる点からカフェインに耐性がありそうだ、ということは日頃からよくコーヒーをのんでいるのだろう。という風なもの。

ホームズが良く持ち出す推理や、数々の難事件の解決はこの後者の推理方法が可能にしている。「過去にさかのぼって逆に推理する」「ある事象から別のものを見出す」という、すばらしい方法だ。しかし大抵の人は前者の推理をしがちだ。後者の方をそもそも知らないし、難易度も高い。

たしかに、「見えるものや事実をかき集めて1つの事実を導き出す。」よりも「一個の提示された事実からさまざまな情報や事実を見出す」方が圧倒的に難しい。しかし訓練を積み習慣化することで、あらゆることに使える能力となる。

あるいは、一見平凡なようなものにこそ大きな発見がある、ということを再認識させてもくれている。

知識は武器となる

日の下に新しきものなし。すべて事象は必ず前にあったことの繰り返しにすぎない。

これは、作中でホームズが発した名言だ。ホームズは、20世紀に起きた恐るべき犯罪をすべて記憶している。それというのも、手口、事件現場などで過去に同じようなものが思い当たれば、犯人の像や動機、背景などを推測しやすいなど多くのメリットがあるからだ。

この考え方は、物事を極める者にとって最上のアドバイスとなりうる。例えばプロ棋士は膨大な棋譜を研究したり記憶しているが、これは実際の対局で似たような場面に出会ったときにより多くの選択肢や最善手をもたらしてくれるからだ。

株やFXなど投資であれば、チャートの移り変わりを良く勉強し、パターンを暗記していれば、同じような場面に直面した時に参考にできる。

歴史や過去の政治を知り尽くしている政治家は、今現在で同じようなことが起きたときにより良い対応ができる。

他のnoteの繰り返しになってしまうが、このことは勉強することの意味を理解させてくれる。

話がちょっとそれるが、東大王という番組でおなじみのクイズ王である伊沢拓司さんも、youtubeの動画内で

「結局は知識なんだよ、分からないこともすべて自分の持っている知識で応用が利く」

的な発言をしていた気がする。確かに受験も全てを知り尽くした者勝ちだ。トップになれる。

まとめ

ホームズは、犯罪と戦うものとして、過去の事件、犯罪学、科学などに精通している。それらが犯罪解決に有効であるから、博識になる。当たり前のことだからやっているだけだと彼は言う。世間から冷たく、心がない非常識と言われることがあるが、それは正反対だ。彼は正義のために実際に最も行動を起こし、成果を出している人間なのである。

世間体や目の前の人を気にして優しくしたり、薄っぺらいことを言うのが優しさではない。言葉で何かを励まし続けるのは、いい人のようで現実には何も変化や改善をもたらしてくれない。やはり、行動なのだ。

俺はこれから言葉でなく行動で人間を見ようと思う。人当たりが良い人間が「いい人」「まともな人」では無いと知ったから。彼らは何もしない。そして自分も行動で人間性を見せ、そして行動で人を助ける人間になる。


さて、シャーロックホームズシリーズは、読んでおいて損はない。むしろ現代の作品の中に、このシャーロックホームズの影響が見えてくるようになるので、非常におもしろい。

読書初心者で、薄っぺらい本は読みたくない、為になる物が読みたい、と思ってる人に必ずオススメするやつ。


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