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本の感想17『家族八景』筒井康隆

「人の考えを読み取れる能力があったらなぁ。」

こう願ったことがある人は一定数いるはず。好きな子の頭の中とか、ポーカー中の相手の手札とか、人間は実は知識欲がかなり強か存在する。

相手の考えを読み取るなんて、ピンポイントで使えれば非常に有益な能力すぎる。でも、現実的にこの能力は優秀なものだろうか?意外とそうではないかもしれない。友達の軽蔑を知ったり、目の前にいる女の子から心の中では罵倒されていたり、上司から実は嫌われていたりとか、拾いたくなかった思考まで読み取ってしまうのが実のところじゃないだろうか。

この作品は40年以上前のSF作品。主人公の七瀬(女子高校生)は人の意識を覗くことができるいわばエスパーだ。作中で七瀬は、人の死の瞬間まで読み取ってしまったり、自分に向けられた性的な考えを生々しく何度も向けられることになる。中年の女性からの嫉妬や、勝手な偏見や思い込みからの悪口も散々のぞいてしまう。こんな日常は、並みの神経では耐えられないだろう。

この小説に書かれている文字の80%くらいが、人の心の中と、それに対する解釈や補足になっていてかなり新鮮だった。

ストーリーとして楽しみながら読み進めていくのだが、自然と「人間」というものの勉強になっている。ストレスに対抗しようとする人間の心理や、深層での考えやそれに気づかず行動する人の描写など、普段の感覚的なものを文で書かれているのがすごい。デカルトの本を例題と照らし合わせて読んでいるみたい。

今現代のSFや、超能力物の作品は、少なからず過去からのインスパイアを受けて誕生しているはずだ。その中の大きな1つの要因が筒井康隆ではないかと思う。ちなみに『時をかける少女』の原作はこの人。

↓勝手な考察、想像↓
作中でいう意識を覗く能力は、人の観察や心理学、電波とかによって得られるものではないガチモンのテレパスだ。一定距離以内なら、その人を見ていなくても障害物があろうとも考えを感知できる。さて、どうしてそのような能力を持ってしまったのか?現実にあると考えてみた。

まずこの能力は、現代科学で解明できないようなことである。心理学を極め、観察眼を研ぎ澄ませば、似た能力はつくかもしれない。しかし七瀬は違う。もっとSF的で高度な能力だ。俺が考えるのは、高度な文明をもった地球外生命体が実験のために持ち込んだ説だ。たまたまその対象として七瀬が選ばれた。人間の生態の観察か?はたまた能力を確かめるのか?それはわからんが、それが最も有力な説じゃないか。

ありとあらゆる可能性や方向性を探って、最後に残ったものが、それがどんなにありえなそうなものであっても、真実となる。       ーコナン・ドイル



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