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「君は、偽善者だね」 夢の底から、私は必至で水面へ顔を出す。 心臓が全速力で走った後みたいに苦しい。 毛布を強く握りすぎて爪が痛かった。 あの日以来、夢で何度その言葉に貫かれただろう。 あの日、国語辞典くんが放った言葉は、棘みたいにずっと私に刺さったままだ。 小学三年生の時だった。 「あーちゃん、ごめん。今日はエミちゃんと帰るね!」 昨日もそう言って、サキちゃんはカナちゃんと帰った。 「ううん、大丈夫」 どうにか口だけは笑う。 「じゃーねー、明日は一緒に帰ろう