さりげない言葉で自信を取り戻す瞬間がある
自信がなかった。何もかも。
毎日ヘトヘトで生活するのに必死だった。
1人目が産まれた時、赤ちゃんがいる生活がこんなに大変なのかと心底驚いた。舐めていたつもりはないがそう思われても仕方ないくらい、なす術がなかった。
毎日毎日、赤ん坊は泣き続け、必死でその理由を考える。何を試してみても泣き止まない。
もう、イライラする。つらい。誰か助けて。
毎日お世話と家事に追われて、それがいつまで続くのか、子供を2人育てあげている姉にしつこく聞いた。
もうすぐ、もうすぐで落ち着くから。
って言われても、いつまで経っても落ち着く気配すらない。わたし、子育て向いてないのかも…毎日泣きそうになりながら自分を責めた。わたしが母でこの子は嫌なんではないだろうか。そう思うほどに追い詰められていた。
その時勤めていた会社を育児休職していたので、ご挨拶にいかないと行けないと思ってはいたが、余裕がなかった。ご迷惑をお掛けしているのだからとやっと重い腰をあげて、ある日、遠い職場へ向かった。
何とか子供をあやしながら職場について、みなさんにご挨拶をする。可愛いねーと言われてもヘトヘトなわたしは愛想笑いをするので精一杯だった。
そこで、前の職場でお世話になった、子供がいる女性の上司が通りかかり、わたしの子供の顔をじっと見てこう言った。
「この子、幸せそうな顔してるね。うん、やっぱり、ほら、幸せそうだよ。」
「えっ?」と、まさかそんなこと言われると思ってなかったわたしは、ゆっくり子供の顔を見た。そう言われてみればこっちの切羽詰まった表情とは裏腹に、呑気におもちゃを触って無邪気な顔をしている。幸せそうかはわからない。子供が幸せかどうかなんて、毎日のお世話でいっぱいいっぱいで考えたことなかった。子供が笑っている時だってあったはずなのに。
でも、そう言ってもらえて心から嬉しかった。
この子は他の人から見たら幸せそうに見えるんだ。もしかしたらこの子は幸せと思ってくれてるのかもしれない。素直にそう思うことが出来た。
わたし、育て方間違えてなかったんだ。この子はきっとわたしがすごく大切に思っていることをわかってくれている。
自信をちょっと取り戻した瞬間だった。
上司は本当に子供が幸せそうに見えたのかはわからない。わたしの不安を瞬時に察してくれたのかもしれない。でもわたしはその言葉で救われて、これからはもっと子供の顔をゆっくり見ていこうと思った。わたしが自分を責めるほどではなく、この子は意外と毎日楽しかったのかもしれないと思えるようになった。
それから今、子供はすっかり大きくなって、思春期を迎えている。
たまに子供の顔をじっと見る。
うんうん、幸せそう。例え眉間に皺をよせてこっちを見ていたって、わたしにはわかる。
彼が周りから愛情たっぷり受けて、幸せに育ってくれたことを。
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