正論がいつも正しいとは限らない
長男が高校受験に失敗した。
私立高校はすでに合格していたので行く高校はあるが、本命の公立高校に落ちてしまった。
合格発表を見た途端にわたしは固まってしまった。しばらく放心状態になり、何も言えなかった。
隣で長男も放心している。
すぐにハッとして、いけない、何か慰めの言葉を言わなくては。と思うのだが、どの言葉も傷つけてしまいそうで言葉が出てこない。
とりあえず、学校に報告に行かなくちゃね。と言って制服に着替えてくるように指示する。
制服を着た長男は行きたくないと言う。部屋をウロウロしはじめた。
そうだよねえ。行きたくないよねえ。わかる。わかるよ。
でも行かなくてはいけないからね。
しばらく部屋を彷徨っていたが、ふいと部屋を出て行った。
さて、わたしは私立高校の入学手続きを進めなくてはいけない。でもショックで思考が停止して、何をしたらよいのかわからなくなる。
あんなに頑張っていたのに…
泣きそうになるのを堪えながら頑張って手続きをすすめる。
わたしがしっかりしなければ。長男はもっと辛いのだから。わかっているけど気持ちが追いつかない。
LINEでは仲良しのママ友同士でおめでとうを言い合っていた。
出遅れた。みんな受かってるんだ。
わたしも辛さを堪えてみんなにおめでとうと入力する。うちは不合格だったけど。
お祝いムードの中ちょっと言いにくい。
一通り慰めの言葉をもらいLINEを終える。
羨ましい気持ちでいっぱいになる。
どうして…どうしてうちの子はダメだったんだろう。何度も同じ事を考えてしまう。
塾の先生にはわたしがとりあえず電話で報告した。
長男はすぐに帰宅して、ベッドに寝込んでしまった。よほどショックだったらしい。
塾にも英語の先生にも報告せずにベッドから出てこない。
先生方には今日直接報告した方がいいよ〜と声をかけたものの起きてこない。
在宅勤務のため、夫が仕事から帰宅する。
"自分1人で戦ってきたわけではないんだから、辛くても先生方にすぐに報告に行くべきだ。
もう過去のこととして前を向くためにも早めに気持ちにケリをつけた方がいい。"
と長男を説得する。
わかる。そうだよね。わたしもそう思う。わたしも前を向きたい。
でも頭ではわかっていても身体がどうしても動かない時、あるよね。
正論がいつも正しいとは限らない。
初めての挫折。初めての辛さ。
なかなか立て直せない気持ち。すごくよくわかる。何度も挫折してるわたしですら、ほら、今立ち直れてない。
子供に寄り添いすぎるわたしは甘いのだろうか。
でも今日ぐらい、今日一日ぐらい、思いっきり落ち込んでも良くない?
明日は嫌でも学校に行ってみんなに会わなくてはならない。平気なふりをしなくてはいけない。
長男は夜、やっと起き出して英語の先生にだけ報告をしに行った。
長いこと帰ってこなかったが、何を話したか覚えてないという。
この経験はきっと将来彼の役に立つだろう。
挫折を繰り返して人は強くなる。
人より早く経験をしただけ。
そして同じような気持ちになった人に寄り添うことができる。
きっと今はまだわからないだろうけど、あの時があったから今の自分がある。と思える時がくる。
そう信じて今はゆっくり前を向こう。
焦らなくて大丈夫。時間はたくさんある。
わたしは寄り添って見守ることしかできないけれど、いつでも手を差し伸べる用意はしているから。
4月からの高校生活。君が笑顔で通えるようになるのをわたしは知っている。
春はもうすぐそこだよ。きっと。
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