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人生は負けるが勝ちなのか
若い頃から人生は戦いで、勝ち続けなければいけないと思っていた。
働くようになってからの20代、30代もそう。常に上を向いて登り続ける。今ここで立ち止まってどうする!何もならない!と思っていた。頑張り続けることこそ意味があり、成長し続けることこそ人生を生きる意味があることと考えていた。会社にもそれを求められてきたし、それに応えることこそ使命と思っていた。だから育児でなかなか仕事に全力集中出来なくても就業時間内には最高のパフォーマンスをしなくてはいけないと焦っていた。フルタイム勤務になってからは更に仕事に貪欲になり、出来ないなんて言葉は存在しないし、断るなんてあり得なかった。仕事の意識高い系の自己啓発本も読んだし、YouTubeでもそんな動画ばかりを見ていた。今では最後の方は狂ってたな。と感じる。
それが、異動になり、うつ病になってから事態は一変した。正直、負けた。と思った。何に負けたのか。わからないけど、終わった。もうわたしはダメだ。立ち止まってしまったらどうしたらよいのかわからない。あんなに頑張ってきたのに…ガラガラと何かが崩れ落ちる音が聞こえた。それでもまだその時はすぐに復職すれば、取り戻せるかもしれない。と少し思った。でもすでに心は折れていてもう無理なんだとすぐに気付いた。もうわたしは立ち上がれないし、立ち上がりたくない。
負けてしまった後はどうすればいいんだろう。途方に暮れた。毎日、自分を責めて、自問自答を繰り返し、悪夢を見続けた。何がいけなかったのか、どこで間違えたのか。しかし、だんだん冷静になってきて、考えたのは、ただ頑張り過ぎたのだという事。自分も周りも見えていなかった。仕事が辛いと言いながら自分からのSOSを見逃していた。気のせいだとやり過ごした。今思うと伏線はいっぱいあったのに。
人生は負けるが勝ちの時もある。と人は言う。今回のわたしはまさしくそうだったのかもしれない。負けたおかげで自分のこと、家族のこと、友達のこと、色々なことが見えるようになった。自分が好きなこと、やりたかったことを思い出すことができた。これはまさしく勝利と言ってもいいのだろう。でも。
でも。と思う。今まで勝とう勝とうとしてきたわたしの人生は無駄だったのか。すべては茶番で何も成し得なかったのか。
違う。頑張ってきたわたしがいるから今のわたしがいるのだ。あの時歯を食いしばって頑張ってきたからこそ、気付けたのだ。そして手に入れた穏やかな生活はあの時努力したからこそ得られたと言っても過言ではない。
負けるが勝ち。そういう時もあるだろう。でも、負けない。絶対に。と思って頑張る時期だってきっと大切だ。今はあの頃のわたしに、よくやってる。頑張ってる。と労いの言葉をかけたい。あなたのおかげで今のわたしがいる。
あとは任せて!あの頃のわたし!
#エッセイ部門
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