秩父の逸品岩魚寿司 まったり源作印シャルドネ
週末に避暑を兼ねて長瀞に小旅行した。川のせせらぎを聞き、浅瀬に腰掛けて足を冷やしながら、身も心もリフレッシュした。
秩父駅で夕食後のおつまみを探していると、岩魚(いわな)寿司を見つける。1970年創業の地元のみな寿司が秩父名物の逸品を作ろうと20年前に開発した商品とのこと。
岩魚に合わせるべく、地酒ショップで秩父ワイン シャルドネを買い求めた。源作印ブランドで知られる。1889年秩父両神村に生まれた浅見源作が1933年に息子の愛読書ロビンソン・クルーソー漂流記にヒントを得てブドウ作りをはじめ、1936年にワイン造りに成功。
1959年にフランス人神父にボルドーの味、と褒められ日の目を浴びるまでの長い苦労が想像される。
購入した地酒ショップには甲州ブドウを用いたワインもあったがブドウは山梨産。せっかく秩父に来ているのでと思い、秩父自園栽培しているシャルドネを使ったワインを選んだ。
ワインをひと口。旅館の部屋にグラスがなかったので豪快に湯呑みに注ぐ。フリーランジュースとプレスジュースを別々に最適な環境で醸造、バトナージュ (醸造中にワインを攪拌し澱との接触を増やす) 、シュール・リー (澱との接触を一定期間おく) を駆使し、酵母の残骸である澱の旨味、アミノ酸をワインにたっぷりと伝える。さらに一年間の樽貯蔵により、奥行きのある、まったりとした飲みごたえを備えている。
秩父ワイン シャルドネ, 埼玉県秩父郡(自園ブドウ), 12%, 3,300円
やや深みのある濃い色調。
メロン、マルメロ、白桃、イースト、バニラの香りも豊かに、切ったリンゴの少し酸化したニュアンスを好意的に含む。
旨味・滋味豊か、酸味は中庸、やや好気的、ふくよかさ、クリーミーさ、マロラクティック発酵が効いている。口内の充実感は半端ないワインだ。
岩魚寿司にワインを合わせる。秩父の逸品は天日塩、赤酢を用いた酢飯、白板昆布で押し寿司に仕立てられている。岩魚の上品で淡白な肉質の奥にある旨味が、天日塩、赤酢、白板昆布のトリオによって力強く目醒める。そこにワインをもうひと口。一瞬、魚の臭みが立ち上がるような気がしたが刹那で、そこからはワインの旨味、滋味が岩魚の風味を有機的に包み込む変幻を見せ、余韻の頃合いには絶妙な調和に。地元の食材に地酒、多少の乱暴な組み合わせであっても最後はうまく纏まってくれる。
相性: ★★★☆☆