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クライアントの世界の言語を理解するー理想と現実が明らかになった時代に設計者が生き抜くための教科書『建築と経営のあいだ』

創造系不動産の高橋寿太郎さんが執筆された『建築と経営のあいだ』拝読してるけど素晴らしい書籍だと思う。

僕が読んでいる感じでは、これは建築設計分野の人間に対し、ビジネスの世界の言語を分かりやすく伝える書籍のように思えた。

これは、ぼくも編集に関わっている書籍『“山"と“谷"を楽しむ建築家の人生』の中で、建築家の永山祐子さんとのやり取りの中でも語られているのだけど、自分の仕事を説明するときに、相手の世界の言葉で語れると間違いなく事業の成功率は上がるのである。

例えば、行政相手だったら、行政の言葉で建築を語らなければいけないのだ。建築設計のプロポーザルで行われている提案書を数年前から収集しているのだけど、それらの資料は、全て行政向けにカスタマイズされたデザインだと思っている。(つまり建築デザイン業界の言語でつくられていない)
行政側の言語で建築を説明していくことで、プロポーザルが獲得できるのではないだろうが。

入札の仕組みで行政をクライアントとし、建築を実現する友人に話を聞くと、アイデア一つとっても、行政の中で話が通りやすい説明の仕方が存在するのだという。そして、それは建築の世界で最適とされる説明の仕方と一致しているわけではない

だから僕たちは、企業相手に仕事をするときには、相手側の言語、つまりビジネスの世界での言語で話ができなければいけない。その価値観や思いを理解し、寄り添えなければいけない。
そうすることで、相手と今まで以上の対話ができ、信頼関係が築け、自身が設計した建築も実現できる

また、本書は寿太郎さんの、ひたすらに学びつつける真摯な姿勢があったからこそ完成した書籍だと思った。経営の大学に新たに入り直し会社を経営しながらMBAを取得するという並外れた行動力。そこにも学ばなければいけないと思った。

そして、ぼくは自身の著書『建築家のためのウェブ発信講義』において建築には、”学問”と”ビジネス”の両面があると書いたのだけど、この書籍は間違いなくその「ビジネス」の面の教科書であると思う

インターネットの普及は、色々な世界の表と裏を明らかにしてしまった
理想と現実は表裏一体。そのどちらかだけを知っていても生き残れない時代になってしまった。もちろんそれを突き抜ける天才は、いつの時代にも存在している。でも僕は自身のことを凡人だと思っているし、だからこそ僕らは、その両面から目を背けずに、その両方を知ったうえで、自身の立ち位置と、建築の世界で生きていく戦略を立てなければならない。その現実の側面を理解するのにも本書はものすごく役に立つ
そして、この書籍を入り口として更にビジネスの奥深い世界にも潜っていけるはずだ。

建築雑誌やウェブサイトを見て、アカデミックな建築を思考すると同時に、この『建築と経営のあいだ』でビジネスの側面を学ぶ。
それが現代の建築設計者のリアルではないだろうか

間違いなくおススメ


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