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カルッツの中心でムイビエンを叫ぶ
はじめに
2023年8月27日、プロレスリング・ノア カルッツかわさき大会。
ノアのシングルリーグ戦・『N-1 VICTORY』の最終公式戦が組まれたこの日、オープニングからラストまで盛り上がりを見せた。
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そんな大会の観客動員は、1,694人。
2023年初頭には武藤敬司引退というビッグイベントもあり、横浜アリーナや東京ドームといった大会場でも単独興行が打てたノアだったが、武藤敬司引退関連の大会や5月に2,721人を記録した両国国技館を除くと、関東や地方も含めた今年のビッグマッチでキャパシティの約9割を埋めたのは、恐らくカルッツかわさき大会が初めてだったのではないだろうか?
実際、武田有弘代表取締役も「前年の2倍のお客さんがいた」と述べたくらいなのだから、2023年に新型コロナウイルスが5類になった事を加味しても、1年でここまで増えたのは記憶にない。
(2022年が825人)
そんな素晴らしい内容のカルッツかわさき大会で、個人的に満員の立役者だったと思うMVPがいる。
プロレスリング・ノア所属のプロレスラー、大原はじめだ。
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"縁の下の力持ち"が積み重ねた、川崎大会のPR
大原はじめというプロレスラーについて語る時、私が思い浮かぶのは"縁の下の力持ち"という言葉だ。
ユニットリーダーというポジションを務めた経験がありながら、味方の特徴に合わせて自分という存在を変えられる柔軟性。
そして、シングルプレイヤーとしても2017年にGHC Jrヘビー級王座戴冠を果たすなど、今のノアジュニアを苦しい時代から支え続けた功労者の一人である。
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Jrタッグ王座軸次期挑戦者決定トーナメントでは、前日に欠場発表された近藤修司に代わって入った大原が、急遽組んだ吉岡世起と息の合ったコンビネーションを披露した。
"縁の下の力持ち"と言っても、決して否定的な言葉ではなく、主役に躍り出た時の爆発力は凄まじいものがあるし、個人的には「シングル王座といった結果で一番報われてほしい」選手だと本当に願って止まない。
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(2023年11月10日プロレスリング・ノア後楽園ホール大会)
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GHC Jrヘビー級王者・HAYATAに肉薄していった大原
NOAH Jrに欠かせない存在となっている大原だが、2018年8月より現在まで、出身地の川崎で年1回ペースで開催されるカルッツかわさき大会のプロデュースを務めている。
現在はプロレスラーや現役大学生という肩書きだけでなく、NPO法人武蔵小杉周辺エリアマネジメント理事、川崎市内の消防団への所属、川崎市内の福祉施設での体操指導ボランティアなどの役職も務めるなど、大原の経歴は多岐にわたる。
そんな大原は、2023年にスタートしたThreadsにて、川崎大会当日まで連日のように大会告知とPR活動に邁進する様子を発信し続けた。
(個人的に、Threadsを始めて良かった理由の一つが、大原の発信を見れる事だったと思っている。)
連日の発信からは、必ず川崎大会を成功させたいという目標と熱意がビシビシ伝わってきた。
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主役になった"縁の下の力持ち"
そして、迎えたカルッツかわさき大会当日…。
大会開始直前の会場内を見て、私は驚きを隠せなかった。
用意されている座席が、殆ど埋まっている状態だったのである。
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空いている箇所も、スタンドの端やアリーナの最後方くらいしかなく、満員と言っても差し支えない。
今だと、ノアだけでなく他団体でも、ビッグマッチ扱いの大会で9割以上座席が埋まる例はそうそうお目にかかれるものではないのだ。
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この日の為に連日活動してきた大原は、大会のオープニングを飾る6人タッグマッチに出場。
入場時から、会場中からの大原コールが鳴り止むことは無かった。
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正直な所、戦前はシングルリーグ戦期間中の大会とはいえ、「大原は大会の立役者なのにオープニングマッチなのか…」という思いもあったが、結果的にはこの試合がオープニングで良かったのだと思う。
オープニングマッチとは思えない程、大原への声援が相乗効果を生んで、会場中を爆発させたのだから。
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大原も相手選手を追い詰めていったものの、最後は対角に立った『Good Looking Guys』の連携に敗戦…。
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それでも、大会と会場満員の立役者だった大原には、惜しみない声援と拍手が贈られたのである。
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まとめ
今回の川崎大会の告知活動に邁進する大原はじめを見て私が感じたのは、「見ている人は見ているんだな」という、地道な積み重ねによって達成された素晴らしい光景だった。
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正直、ここ最近の大原は中々シングルを始めとしたタイトルという結果に恵まれている訳ではないし、今回のオープニングマッチでも敗戦を喫してしまった。
それでも、大原が川崎大会の為に奔走し、会場の超満員の光景を作り出した事実が消える事は決してない。
開場時の列が両国国技館ビッグマッチ並に長かったことも、列に並ぶ観客の中に視覚障がい者の方がいたことも、大原の弛まぬ広報活動が実を結んだ瞬間だったとも言える。
私は、また来年もノアのカルッツかわさきに行きたい。
そして、川崎大会が行われる時には、大原のタイトルマッチが組まれて、最後には王座を持って勝ち名乗りを上げる時が来てほしいと、私は願わずにはいられないのです。
本当にお疲れさまでした…!