美味しい空気とパンと共に味わえる"軽井沢千住博美術館"
軽井沢で千住博のアートが西沢立衛の設計による美術館で楽しめる。イクラの上にウニがのっかって、大トロが被さるような、もうこれらが合わさったら絶対美味しい、というラインナップ。軽井沢が好きな人はこのアートが好きだし、このアートが好きな人は漏れなく建築も好きなんだろうと思う。
千住博氏は日本画を世界に広く認知させ、高く評価される画家。代表作は何といっても「ウォーターフォール」。1995年、イタリアのヴェネツィア・ビエンナーレで名誉賞を受賞。その他、金剛峰寺の襖絵も手がける。
千住博美術館は2011年竣工。自然と共生する美術館、と言えば、西沢立衛氏。というポジションを確立しつつある。そして、いつもながら想像する人の期待を超える空間を作り出している。
1.内外が曖昧になり、光や緑が溢れる空間
展示空間は、美術館にありがちな不自然な壁の間仕切りがなく、奥まで見通せる。所々に緑を封じ込めたガラスのシリンダーが空間に差し込まれている。作品に容赦なく光や影が差し、緑は作品と共存する。元の地形に倣って、起伏のある空間構成となっていて、奥まである複数の作品が同時に視界に入る。無意識に奥まで進みたくなるような感覚を覚える。
2.作品のしぶきや音が湧いてくる
代表作の「ウォーターフォール」が至る箇所にある。開放的な空間で見る作品から、滝の流れるしぶき、風や音が感じられる。従来の閉鎖的な美術館の箱の中よりも、この空間はより五感が研ぎ澄まされるような感覚になる。千住氏自身も建築に関心が高く、空間の中での作品の見え方にはこだわりを持っているようだ。ここでは画家と建築家の高いレベルでの化学反応が楽しめる。
3.庭も空気もパンもまた主役
美術館を出ると、視覚と聴覚が満たされた状態にるなり、味覚、嗅覚や触覚がカラカラになる。そんなところへ、彩り鮮やかな樹種で構成された庭が現れる。清々しい気持ちでその庭を通り抜けると、別棟のカフェとパン屋が出迎える。クロワッサンで有名な「浅野屋」である。もう、無視して通り過ぎることができない。贅沢にバターが使用され、生地の層と空気がバランスよく配置されたクロワッサンを買ってしまうこととなる。
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