整体師のように都市を施術する"隈研吾展"
あー、もう終わってしまいそう、ということで隈研吾展へ行ってきた。仕事でも何度かお世話になったが、ここ最近は建築家というか、世直し人?街直し人のような国内外のプロジェクトにおいて社会的意義の大きい取り組みが目立つ。
隈研吾展は、第一会場では「人が集まる場所」のための方法論として「孔、粒子、やわらかい、斜め、時間」の5原則を切り口として作品を解説する。第二会場では、都市の未来はネコに学べ、というメッセージの基、ネコの行動分析など混じえて「東京2020ネコちゃん建築の5656原則」を紹介する。
展示会の作品やインタビューを通じて感じた隈研吾氏の印象だが、
1.街、人の凝りや詰まりを理解する
立て続けに起こる自然災害の復興にも多く貢献している。熊本地震でダメージを受けた老舗の醤油蔵のリノベーションでは、災害によってどのような状況でどうなりたいか、理想だけでなく予算やスケジュールなどリアルな事情も理解しようとする。その上でなにができるかが相手とコミットできるのであろう。
2.街やクライアントのニーズに応える
国内外で主要な公共施設、駅前開発プロジェクトを多く手がける。取り分け行政のトップからの信頼が厚い。当然公正なコンペも多いだろうが、豊島区では、本庁舎も旧庁舎跡地の開発も手がける。おかわり設計的な状況は設計した建物がその街に受け入れられ、クライアントの要求を満たした結果だろう。国立競技場などのビッグプロジェクトも計画そのもの以外に目に見えない要求事項を汲み取り、バランスよく配慮した様子が伺える。
3.効能が続く
高知県の檮原町には庁舎や雲の上のホテルなど隈研吾氏が世界的な知名度を得る以前の作品が多く存在する。バブル崩壊後、地方の仕事を引き受けた、と言われるが、檮原町での木材を利用した建築手法が今の彼のスタンスを決定づけたと思う。そして今もなお、檮原町は彼と共に進化を続けている。地方にポツンと存在する巨額の箱もの建築ではなく、街との関係性が継続しているのが彼の特徴である。
学生の頃はただ美しい建築に憧れていたが、社会人になると色んな大人の事情を知ることになり、妥協や諦めを建物に感じることもある。隈研吾氏はそれらを高いレベルで両立し、国家プロジェクトの請負人、ポキポキっと凝りを治す整体師になりつつある。