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ザ・ショーケース"NAKAGAMI nakameguro"
洋服を買うのは、なるべく歩かず多くブランドを見られる新宿伊勢丹がほとんどのため、面的にお店が広がる中目黒へ行くことはなかなかない。
そんな中で意を決して向かったのが、「NAKAGAMI nakagami」だ。
サポーズデザインオフィスが手がけたこのショップは2021年のコロナ禍にオープンした。
アパレルブランドのNAKAGAMIは、デザイナーの中神氏がニットを中心に伝統的なアイテムをベースに現代的な視点から再構築したコレクションを展開している。
sakaiのパタンナーであった片鱗がNAKAGAMIのアイテムにも表れている。
以前から色みや繊細な素材の扱い方、高度なプリント技術が気になってオンラインショップを覗いていた。
1.ファサードとショップの隙間
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中目黒駅から目黒川沿いをしばらく歩き、また通りを入ってしばらく歩くと、こじんまりとしたビルの足下にガラスのショーケースが見えてくる。
谷尻氏は、コロナの蔓延で世の中の価値観が大きく変化しつつある混沌とした時期に、ショップの在り方を見直した。そこから「ファサードを持たないショップ」を前提に外と中の境界線を模索したという。
外壁ラインにはサッシがついておらず、セットバックした位置に角度を振って3m×7mのショーケースが鎮座する。その隙間に外でも中でもない曖昧が軒下空間が生まれる。
この軒下空間もテナント面積部分なのだが、外壁に取りつく扉から入る一般的なショップの形態と比べ、ショーケースの中の洋服が際立つ。何か真空状態にブランドを封じ込めた感覚があった。
店員さんに帰り際写真を撮りたい旨を伝えると気を遣ってはけてくれたのもありがたい。
2.チープな素材とミニマルなディテール
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ショーケースはガラスとブラウンのポリカの波板、カーペットで構成されている。ポリカの波板は仮設感満載だが、そのチープでレトロな素材の中で鮮やかな色彩を発する洋服たちがより生き生きして見える。
またサッシの方立のライン、幅がきれいに揃うよう天井のライン照明も配され、ハンガーパイプをワイヤーで吊るレールのやくめも果たしている。
さらによく見ると天井のポリカ板の裏に空調等設備ものが配置されていて隙間から温風が吹き出されていて室内は温かい。
よく考えられたミニマルなディテールとチープなポリカ板のコンビネーションは意匠の緩急があって面白い。
3.ブランドの世界観との一貫性
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ショップはブランドの顔であり、通りからの見え方、ショップのインテリアは最大限注意が払われるべきである。
その点において、高度に計算されたディテール、様々な素材の組み合わせ、伝統的なものをどこか遊び心を持たせて現代のデザインへと昇華させる、ふとした余白を生み出す、などなど展開されている洋服から読み取れる方向性とショップがきちんと合致しているように見える。
私がここで購入したのはチュール素材にブルーやグリーンプリントが施されたもの。2022年のコレクションは建築家のルイス・バラガンの建築からデザイナーが着想を得てデザインしたものが多い。店員さんの話では折り目のついたチュール素材にここまで精度高くプリントするには高い技術が必要なんだとか。
オンラインの時点で気に入っていたが、念のため試着もした。意外に試着室スペースがちゃんと確保されているのには驚いた。