リゾートホテルの持続可能性"沖縄 ホテル日航アリビラ"
台風から逃げるように帰ってきた沖縄滞在。
予期していた訳ではないが、子どもの学校や習い事の予定から8月末になってしまった。
まだまだコロナが治まらないので、今回はホテル滞在をメインとした夏休みの家族旅行。
沖縄本島に旅行をする10数年の間、浮気をせずに毎回「ホテル日航アリビラ」を利用している。
アリビラがある読谷村は空港から比較的近く、大型ホテルが建ち並ぶエリアと違い、さとうきび畑が広がるのどかな環境だ。
アリビラは1994年に佐藤工業によって開発された。建物のデザインは、ヒルトンやハイアットなど世界中のラグジュアリーホテルを手掛けるHBA。
スペイン語のAlivio(くつろぎ),Villa(別荘)を組み合わせてできたアリビラの名称。デザインには「スパニッシュコロニアル風」を取り入れ、赤煉瓦と白壁の外観は、カラッと晴れた空と海によく合う。中庭の設えも凝っている。
竣工後30年近く経ち、設備の所々は更新され、客室内もリニューアルされている部分がある。
それでもアリビラはツギハギのリニューアル感はなく、全く錆びれた感じもない。私が知る10数年前から印象が何も変わらない。おそらく30年間変わっていないのだろう。
都心もリゾート地もこれだけ年々ホテルが新築されては、築年数が経つホテルの生き残りは厳しい。
リゾートホテルが時代を経て持続していくためには、何が必要なのだろうか。
1.非日常とアイデンティティ
アリビラでまず印象的なのは、エントランスラウンジ空間だ。さとうきび畑を抜けて長いアプローチの先にあるのは、日本ではないような空間。中途半端なリゾート感ではなく、異国の海辺に面した街にワープしたような感覚を与えるのは、内装、家具、調度品、アートひとつひとつが相当こだわりを持って形成されているからだろう。有機的なアイアンワークと組み合わされた照明器具、ダイナミックなアーチ梁の連続。
完全なる非日常を演出するための労力が伺える。そしてどこかで見た何か、ではなくこの空間でしか味わえない空間の価値感は作り手や運営側の信念から生まれたものだと思う。
2.そこにあり続ける普遍的なデザイン
エントランス正面には庭がありその先には海が広がる。庭を囲むように回廊が配され、はショップやカフェ、バンケットなどが回廊からアクセスできるようになっている。
私はこの回廊が大好きだ。四方に構成されるアーチ状の壁、大ぶりのアイアンフレーム照明、南国を象徴する観葉植物、姿も美しく思い思いに腰かけられる椅子、植物や太陽を想起させる床のタイル模様、、それらが丁度よい具合の密度で配置されている。その合間に変化をもたらし、ちょっと立ち止まって見たくなるようなアートワークもある。ホテルから出かける時、プールや食事に行く時通るこの回廊は、30年変わらず人々を見守ってきた。そしてこれからもずっとあり続け、人々にくつろぎやワクワクを与えて続けられるのだと確信できる。
3.ロケーションをヒューマンスケールに落とし込む
沖縄にあるリゾートホテルの多くが海に近く、宿泊者専用ビーチを備えている。そんな中でアリビラはホテル敷地内のプールから階段を降りるとすぐビーチに出られる。海で子どもが散々遊んで疲れても何とか部屋まで戻ってこられる、この程よくコンパクトな作りがファミリーや年配の人たちにも好まれているのだろう。
エントランスの先に中庭、一段下にプール、さらに海とそれらが一体的に見える配棟計画。リゾートホテルとしてはオーソドックスなパターンだが、それらが途方もなく大きいわけではなくヒューマンスケールにおさまっている。所々に植物や散策路、階段、オブジェが配され、夜にはしっとりした雰囲気となり、朝方は客室のベランダから清々しい景色を繰り広げる。
そのような訳で、私はアリビラを結婚前から利用し、子どもを連れて現在は訪れている。おそらく歩ける限り歳をとってもアリビラへ行くだろう。