ポートランドから学ぶ自分軸に一致した働き方
今日は「BITE! PORTLAND」イベントに参加するため、自由が丘へ。
今年の7月末にインタビューで訪問したばかりのポートランドのSide Yard Farmのステイシーが10月にイベントで来日するとは聞いていたが、それがこのイベントだと知ったのは数日前。
なぜかポッカリ空いたスケジュールはこのためにあったのだ、とハイヤーセルフからのポートランドへの導きを改めて確信した。
参加者にはワイン、コーヒー、ビールが振る舞われ、楽しく美味しいひと時だった。
新しいことに挑戦する起業家に優しいポートランド
私が参加したのは14時からのステイシーの座談会から。
ステイシー曰く、ポートランドには起業家のメンターが沢山いて、ステイシーがレストランの雇われシェフから個人で畑を借りて独立する時に惜しみないアドバイスと共に応援してくれたという。
もう一人のスピーカーのアルサも、ステイシーと同じレストランのシェフとして働いた経験があり、その時にステイシーから「誰かのために働くのではなく、自分が自分のボスとして働く」という起業家精神の刺激を受け、自分も独立したのだとか。
頼りになる親戚家族が東海岸のボストンにいたり、遠く離れているため、サンクスギビングデーなどのホリデーに会いに行くことができない。
そんな中、必然的にポートランドに住む仲間同士での絆が深まり、お互いに助け合う精神が育つのだそうだ。
都心で一人倒れても、後ろ盾がある安心安全な場所
「都会で一人で生活し、たとえ倒れたとしても、必ず支えてくれる後ろ盾がある安心で安全な場所を創りたかった」と語るステイシーにとって、Side Yard Farmは自己実現そのものなのだ。
例えば、ステイシーは自分が父親が死去した時の悲しみで深く落ち込み、自分軸が揺らいだ時期があった。
そんな時、「自分と同じような経験をしている人がいるはずだ」と思い立ち、誰か大切な人を失った時の悲しみを癒す「Lost Table」を立ち上げる。
故人の思い出の食べ物を持ち寄り、故人について語り合うことで、悲しみを一人で抱え込まず、支え合うコミュニティを自分のフィールド内に創ったのだ。
「自分で決めたことはなんでもできる」起業家マインド
16歳でシェフになり、そこから起業家として自分で畑を始め、ケータリングやイベントを通してコミュニティとの繋がりを創り上げたステイシー。
彼女のマインドセットは「自分で決めたことはなんでもできる」。
7人兄弟姉妹という大家族で育ったステイシーのご両親は勤勉なギリシャ人。
お父様の口癖は、「どんな時も常にベストを尽くせ。自分で決めたことはなんでもできる。」だったのだそう。
それを子供の頃から何度も何度も聞いてきたステイシーは、その言葉通りに人生を切り開いてきたのだという。
「失敗してもそれが何だというの?たとえ失敗して倒れても支えてくれる後ろ盾がある。また立ち上がってチャレンジすればいいだけのことじゃない。」
そう言い切るステイシーの表情は爽やかで、その瞳は力強く優しかった。
仕事のために働くのではなく、情熱のために働く
16歳からレストラン業界で働いていたというステイシー。
週80時間から90時間が当たり前というブラックな業界で、朝から晩までとにかく働き続けることが良いことだという暗黙の了解があったという。
Side Yard Farmを起業することで、相変わらず忙しく働いているものの、自分にとって一番大切なことを最優先に仕事をしている。
例えば、彼女には今、1歳半の娘がいて、彼女を農園で育てることが最優先で、それを心から楽しんでいるのだという。
もう一人のスピーカーのアルサも、ハードなレストラン業界で気力体力ともに限界がきた時、休養することで、自分がなぜ料理をするのかを思い出すことができたのだそうだ。
それは、食事やレシピを通して人をつなげることが好きだということ。
たとえ言葉を交わさなくても同じ料理を食べて美味しいと感じることで、人は心を通わすことができる。
自分がなぜその仕事を始めたのか、その原点に立ち返ることで、仕事のための仕事ではなく、自分の情熱のための仕事になったのだそう。
逆境がコミュニティを強くする
起業家として数々の試練を乗り越える中で、一番辛かった時期はコロナ渦だったという。
農園で育てた野菜を卸すレストランやカフェが休業し、ウェディングやパーティーなどのケータリングイベントもなくなり、収入源が断ち切られた。
そんな時、自分たちでできることはなんでもやろうと、野菜で作ったペーストやソースの缶詰を売り、農場やネットで自分たちが育てた野菜を売った。
それだけではない。
「一緒にやろうよ!」と知り合いや友達の店の商品も一緒に売ったのだ。
また、ソーシャルディスタンスを守りつつも、広々としたスペースを生かし、マイクを使わずに歌を歌うイベントを開催したり、ローカルの人と人との絆を作り続けた。
その結果、コロナの前よりも農場に人が集まり、人の流れが生まれるようになったのだという。
ステイシーが父親を失って深い悲しみに暮れ、Lost Tableを立ち上げた話を聞いて、自然と思い浮かんだのが大好きな父だ。
今、生きている73歳の母親と83歳の父親との残された時間は決して長くはない。
一人暮らしよりも今いる両親との暮らしを大切に慈しみ、楽しみたいとの気持ちが芽生えた自分がいる。
畑をやっている父を手伝い、収穫した野菜でお客様をもてなしても楽しいかもしれない。
「競争」ではなく「共創」のコミュニティ
ポートランドは15分圏内に必要なものが全て揃う地方都市。
個人起業家が支え合う土壌があり、住人も消費者として個人起業家を応援し、大手のチェーン店を敬遠する傾向があるのだという。
例えばポートランドにはドーナツ屋さんは沢山あるが、たとえ近所の同業者であっても、お互いに競争するのではなく、ハートをオープンに開き、必要な情報をシェアし合いながら、共に成長、発展していく「共創」の精神がある。
活動拠点のベースは都心から郊外へ
ポートランドでは、コロナでダウンタウンで大多数の人が亡くなったという。
これを機に富裕層ほど都心から郊外に流れ、郊外(と言ってもダウンタウンから車で10分から15分圏内)の土地がどんどん高くなっているらしい。
これに付随して、郊外の近所のカフェやレストランがどんどん発展し、盛り上がっているとのこと。
ダウンタウンのディナータイムの人気は復活しているものの、ランチタイムのカフェやレストランへの戻り率は4割程度とか。
つまり、ワーキングアワーはオフィスではなく自宅のリモートで働き、ダウンタウンでしか楽しめないシアターなどのイベント時にはダウンタウンに行くというわけだ。
従来の「都心でしか楽しめない」という発想は消え、「郊外を拠点に行きたい時に都心も含めて行きたいところに自由に行く」という発想が定着しつつある。
特に若者はこの傾向が顕著で、オンラインが当たり前の世界で働く中、「自宅でできる仕事なのに、なんでわざわざ通勤するのか」という疑問があるという。
こう聞けば、必然的に通勤ではなく住居圏内のコミュニティ活動が発達し、それとともにビジネス活動も盛り上がるのも頷ける。
ふと、都心から電車で1時間圏内のベッドタウンにある実家を思い出した。
東京のベッドタウンの実家に拠点を移し、活動しても面白いかも知れない。
それは私の中に芽生えた新しいチャレンジ意識だった。
自立した魂が集う出入り自由なコミュニティ
イベント終了後は、都市開発マガジンArchineticsの吹田編集長と話す機会があった。
質疑応答の場で唯一の質問者だったのが印象的だったのか、帰ろうと荷物をまとめる私に、にこやかに笑いながら話しかけ、名刺を渡してくれたのだ。
吹田編集長との雑談の中で気づいたことは、健全な共創のコミュニティが成立するためには、メンバーが
「私ならではのこれができる。これが私のやりたいことだ。」
という、その魂固有の自立した自分軸を持っている必要がある、ということだ。
個人がある特定のコミュニティに依存する場合、そのコミュニティがなくなればもろとも崩れてしまう。
そうではなく、「自分がやりたいことのために、コミュニティに属し、自分のやりたいことがなくなれば、いつでも他に移ることができる」という自立した精神が求められる。
つまり、コミュニティに属することが目的なのではなく、自分軸に一致したコミュニティに属することで、自分のやりたいことをやる自己実現が目的なのだ。
コミュニティのあり方も、閉鎖的な古い日本の村社会的なものではなく、いつでも好きな時に他のコミュニティに移れる出入り自由な流動性のあるものになる。
それは私が支持する並木良和先生から教わった新しい地球の人間関係と一致するものがあり、私は深くうなづいた。
今日のイベントは、今自分がやっていることが本当に自分の魂に一致するものか、改めて検証し、その必要性を再認識するいい機会となった。
答えを探していくプロセスが答えである
ステイシーとの座談会の後半、場を締めくくるモデレーターの宮前氏が最後に残した言葉が印象的だった。
「自分に一致した仕事や働き方について、自分にも明確な答えはないけれど、答えを探していくこと自体が答えになる気がする。」
「わかる、わかる」と心の中でうなずく自分がいた。
何かの形を求めるのではなく、自分の直感やインスピレーションに従って、一歩一歩上がる階段そのものが、自分に一致した働き方や仕事そのものであるならば、とても気が楽になる。
それは、今日の午前中に引いたオラクルカードのメッセージにも共通していて、今の私に必要なことなのだと思った。
「You are just getting started, so have patience with yourself and the process, and do not give up.(あなたはスタートしたばかりなのだから、自分自身とプロセスに忍耐強くありなさい。諦めてはいけません。」
明日はステイシーの料理が食べられるランチイベントだ。
このイベントを知ったのは3日前、すでに満席だったが、キャンセル待ちを問い合わせたら、翌日、キャンセルがでたとのこと。
ステイシーには、7月に突撃インタビューを受け入れてくれた御礼に、生玄米パンを焼いて渡そう。
イベントで振る舞われた白ワインとコーヒーとビールで興奮冷めやらぬ夜だけど、そろそろ終わりにして明日に備えようと思う。
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