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女給ー君代の唄 (小松君子)。

小松君子の歌う「女給ー君代の唄」。西條八十作詞、中山晋平作曲で、広津和郎原作の「女給ー君代の巻」が、新興キネマで制作された際の主題歌です。女給とは女性の給仕の略で、今風に言えばホステスの事。当時は和装な人も居ればエプロン姿の人も居たりで、銀座を始めとして日本各地の盛場の花でした。その花の数だけの悲喜劇があり、物語の題材に打って付けだったのです。本作品は昭和6年1月に新興の前身帝国キネマが公開した「女給」の続編であり、羽衣歌子の歌う「女給の唄」は大ヒットして、街角から盛んに流れていました。早速続編が企画されまして、前回同様に監督は曽根純三、出演は北条たま子、水原玲子、歌川八重子、近松里子、桂珠子など大半を女性キャストが占めております。昭和7年6月15日に常盤座等で封切られ、全12巻のサイレント作品でした🎞️。

「女給君代の唄」は前回と違い、中山晋平が作曲しております。全三番構成の陽旋法で書かれたシンプルで長閑なメロディですが、何処か諦めの気持ちの篭った寂しさが歌全体に現れています。故郷の北海道を後に花の銀座に来てはみたが、夜毎儚い嘘の恋の数々に疲れ果てた女心を、西條八十は巧みに歌詞化。彼は実際に身銭を切って多くの芸者や女給と交際し、彼女らとプライベートな会話をしては、その華やかさの陰に隠れた悲しい物語を数々の楽曲に昇華させた訳で、女心を書かせたら並ぶ者はおりません。小松君子は芳醇なアルトでマイクに向かい、バックでは雨音の様な音色をバンジョーが刻んでいて、歌のもう一つの主役でした。それにしても此の小松君子と云う人、どう聴いても小林千代子であり、何故わざわざ同じビクターで変名を使ったのでしょうか。気になる所です😀。

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