守備隊月夜 (霧島昇・日蓄合唱団)。
霧島昇と合唱団の歌う「守備隊月夜」。西條八十作詞、服部良一作曲で、東宝・満映が提携して制作した国策映画「誓いの合唱」の主題歌です。本作は島津保次郎監督がメガホンを取り、当時日満双方ナンバーワンの人気女優だった李香蘭の主演、黒川弥太郎、鳥羽陽之助らスターに加え、人気歌手の灰田勝彦も兵士の役として出ていました。彼は少し前に同じ東宝映画「燃える大空」にも出て好演し、続いて「ハナ子さん」にて轟夕起子の相手役を務めており、役者としても認められていたのです。「誓いの合唱」は大陸に暮らす一家の父親が出征し、残った家族らが銃後の暮らしを守ると云う時局色横溢な物語なのですが、その様なテーマでも李香蘭が出るなら、成功はほぼ約束されたも同然でした。全10巻で役1時間半弱の物語、昭和18年8月12日に紅系にて封切られております🎬。
「守備隊月夜」は南方ではなく、大陸の鉄路を護る陸軍兵士を歌っており、全4番から成るやや重いメロディ。一・三番を霧島、二・四番が合唱となっています。後方の線路を護り前線への補強路を守る兵士、地域の子供との交流が描かれており、また四番の歌詞🎵来るなら出て来い共産匪…とあるので、歌の舞台は共産匪=八路軍が主敵である華北地方か満州である事が窺えます。霧島昇の歌声はややソフトですが、その声質で精一杯歌い上げる所に、歌の主人公の高い兵士の使命感が感じられました。服部良一は戦時歌謡を書かなかった…と云うのは、今となっては他の人気曲からの印象であり、実際は国策に沿った楽曲もかなりありました。幸か不幸か、コロムビア発売の戦時歌謡のヒット曲の大半は古関裕而が書いた事もあり、殆ど埋れたのですが…。A面は李香蘭の「母は青空」でした😀。