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別れの花束 (春山一夫)。

春山一夫の歌う「別れの花束」。時雨音羽作詞、江口夜詩作曲で、ラベルには“映画主題歌”と記されおります。此の「映画」とは、資料では1932年のドイツ映画「偽国旗の下に」の事で、本作の日本公開に合わせて歌が書かれたものと思われます。此の映画はマックス・キミッヒ原作の物語をヨハネス・マイヤー監督で撮っており、出演はシャルロッテ・スーザ、グスタフ・フレリッヒ、フリードリヒ・ガイスラー、ヘルマン・シュピルーマンス等。物語は第一次大戦時。主人公のドイツ軍士官は負傷するも、献身的な若き看護婦のお陰で快癒します。優しい彼女に惚れた士官は求婚し、その想いは叶えられて新婚生活が始まるのですが、実はその新妻の弟はロシアのスパイであり、ドイツ側が追跡しているターゲットなのです。両国の争いの中で二人の幸せな日々が崩れて行く悲劇でした💬。

「別れの花束」は主題歌とあるも、実際には映画とは関係がないイメージソングと言った所で、当時はこう云う手法の歌がよく作られました。全三番構成で、陰旋法で書かれたスロー・トロットのリズム。時雨音羽の歌詞は曠野を征く騎兵をイメージして書いたのか、出だしは🎵右にサーベル、左に手綱…と決めており、さながら満州で諜報活動に携わる密偵を思わせます。海軍を除隊したばかりの江口夜詩は、当時はポリドール、キング、ニットー等幾多のレーベルを股にかけて曲を提供しておりましたが、御世辞にもヒット曲が多かった訳ではありませんでした。その奔放な人物像と、曠野を行く旅人は何処か似たものがあり、彼の楽曲に”荒野もの“が多いのも頷ける気がします。歌手の春山一夫は本名を松田十蔵と云い、ポリドールから「光は東方」でデビュー。後年は楽士に転じています😀。


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