不思議なブルース (伴淳三郎・泉友子)。
昭和の喜劇スターの一人で、訛った口調で呟く“アジャパー”と云うフレーズで一世を風靡したのが「伴淳」こと伴淳三郎。その彼が泉友子と歌ったのが「不思議なブルース」。石本美由起作詞、上原げんと作曲で、新東宝映画「名探偵アジャパー氏」の主題歌です。伴淳は明治41年山形県の生まれで、本名は鈴木寛大。その役者としてのキャリアは戦前にまで遡ります。長らく端役としての活動が続いたのですが、40代半ばを迎えた昭和20年代後半に例の「アジャパー」が大ウケして漸く人気スターの座を得ました。「二等兵シリーズ」など、彼を主役にした映画が制作されるのですが、この「名探偵アジャパー氏」もその一つ。伴淳は主人公の探偵と脱獄犯の二役を演ずると云う、大仕事でした🎬。
「名探偵アジャパー氏」は、雑誌平凡に連載されていた“あおいきくらぶ”原作の小説を佐伯幸三監督で映画化したもので、出演は伴淳三郎の他に、古川緑波、益田喜頓、宮川玲子、柳家金語楼、星美智子などで、約一時間半程の作品です。「不思議なブルース」は、伴淳の歌手デビュー曲「アジャパー時代」を手掛けた上原げんとの作曲で、暗く沈んだ夜の街角を現したような沈んだメロディ。伴奏のウッドブロックの音が木魚の様に響き、伴淳は呟く様に歌います。対して、二番を歌う泉友子は張りのある艶やかで何処か色気めいた歌唱であり、これまた夜のムード満点な歌声。彼女は映画主題歌で活躍し、他にも「おさんどん」「サザエさん」などコミカルな歌が多く、伴淳とは数曲お供しています😀。