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お菓子の家 (徳山璉)。
徳山璉の歌う「お菓子の家」。西條八十作詞、橋本國彦作曲で、クラシック畑のホープとして期待されていた、徳山・橋本の組んだ至極の一曲です。共に東京音楽学校出身であり、その当時から仲の良かった二人はプロの世界へ入って更なる躍進を遂げるのですが、この歌で早くもその才能が世に知らされる事になりました。西條八十は既に「お菓子の汽車」「お菓子と娘」を書いておりまして、まさしく“お菓子三部作”と言えるのですが、この「お菓子の家」は大正時代に子供達の愛読書だった『赤い鳥』に掲載された作品でした。この内、橋本は「お菓子と娘」も手掛けており、昭和4年に奥田良三が吹き込んだのですが、その翌年に「お菓子の家」もレコード化される運びとなります。橋本はスローワルツのメロディを付け、自らバイオリンを弾き、ピアノは沢崎秋子が担当しました🎹。
ここでの徳山璉は後年のコミカルな「トクさん節」とは違った、清らかなハイ・バリトンでマイクに向かい、初期の特徴がよく現れた録音となっております。この歌に於ける西條八十のセンスは抜群であり、門柱は飴ん棒、屋根瓦はチョコレート、敷石はビスケット、鎧戸はカステラ…と、徳山が美声で読み上げる度に甘い香りが漂うかの様。バックのピアノがまた、美味しそうな雰囲気を醸し出しているのです。後半で突然メロディは暗くなり、月の光も朧げな夜が訪れます。こんなに甘〜いお家を誰が建てたのか、ふと訪れると貼り紙がしてあり、そこには『ここに泊まって良い者は、二親の居ない子供だけ』…と。それを読み上げる徳さんの一声は、教会の牧師さんのような温もりと優しさが満ち溢れていました。カップリングは同じ顔触れの「山の母」で、昭和5年秋に発売されています😀。