友愛曲 (欠畑貞子)。
欠畑貞子の歌う「友愛曲」。サトウハチロー作詞、堀内敬三作曲による可憐な歌で、ラベルには『松竹映画主題歌』と記されておりますが、此の作品は現時点で存在が確認されていない“幻の映画”です。映画と流行歌がタッグを組む様になった昭和初期、其の相乗効果は予想を大きく超えるものでした。商業主義もあってか、互いに儲けようと数多の作品が企画されて世に放たれましたが、主題歌だけが先行してメインである筈の映画が立ち消えになるのは、当時でさえも珍しくはありませんでした。例えば四家文子のヒット曲「私この頃変なのよ」も、表記の上では“映画主題歌”となってはいるものの、それが形となって公開されたと云う資料には巡り会えないままです。何かの理由でタイトルを変更して公開…と云う事もあったでしょう。これらの現象は実に興味深いものがあります🎬。
「友愛曲」を歌っている欠畑貞子は、JOAK唱歌隊の第一期生。童謡を経て声楽の分野で活躍し、後進の指導にも当たりました。東海林太郎のキングでのデビュー曲「知らぬ顔して」を一緒に歌った人…と云えばお分かりでしょうか。昭和12年頃に僧侶である父の仕事を手伝う為、上海に落成した知恩院別院に渡り、そこの付属幼稚園で音楽の指導を行っていたそうです。その後の詳細は不明ですが、無事に帰国されている事を祈る次第です。此の歌は夢多き女学生を歌った可愛いらしいもので、童謡から流行歌に転じたサトウの歌詞もリリカルなタッチでした。伴奏はフリージア・トリオで、ピアノ、バイオリン、フルートで構成されていて、春のホッコリした雰囲気を醸し出しております。裏面は欠畑の他、古筆愛子、石崎花子ら三人で歌う「小鳥の唄」。昭和5年秋に発売されました😀。