街の姫百合 (ミス・コロムビア・瀬川伸)。
ずいぶんと空いてしまいましたが、久しぶりにレコードレポートを。今夜はミス・コロムビアと瀬川伸の歌う「街の姫百合」を。松竹大船作品「春雷」の主題歌で、出演は夏川大二郎、川崎弘子、田中絹代、木暮三千代など。佐々木啓祐監督で、音楽は早乙女光が務めております。昭和14年4月13日に前編、続いて後編も公開されており、合わせて2時間余りの大作でした。当時松竹制作の女性向けメロドラマの数々は「愛染かつら」を筆頭に興行は上々でして、その主題歌を提供するコロムビアの台所も大いに潤ったのです。本作の主題歌「古き花園」はサトウ・ハチロー作詞、作曲は勿論担当の早乙女が手掛けたのですが、実は曲の方が先に完成しておりました。出来を絶賛した服部良一が早乙女の代わりにサトウ宅を訪れて詩を依頼し、二葉あき子が歌って見事にヒットを飾ります✨。
裏面に組まれた「街の姫百合」は、西條八十作詞、江口夜詩作曲で、洒落たブルースで書かれたA面に対して、オーソドックスで無難な作りになっております。歌うは「愛染かつら」シリーズなど、一連の映画主題歌でお馴染みのミス・コロムビア。その相手は通常なら霧島昇となる所でしたが、選ばれたのは北海道函館市出身で、地元開催の歌謡コンクールで入賞した青年新人歌手の瀬川伸でした。江口に師事すべく遠路遥々上京し、長旅の末に持参した新巻ジャケが腐ってしまうと云うトホホなスタートを切ります。歌は四番構成で、一・三番をミス、二番が瀬川で、ラストはデュエットと云う流れ。A面がヒットした事もありレコードは大変よく売れたのですが、B面の方は地味な感じなせいか、然程歌われる事もなく忘れ去られています。映画公開に合わせ、昭和14年春の発売でした😀。