視線、目線、視点
個人的には、「目線」という言葉には違和感がある。
とはいえもはや、日常的に使われる語でもあるだろう。
校正などで「視線」に置き換えられる場合は置き換えるようにしているのだが、
こんにちの活用例を見ていると、必ずしもそこは互換でもないように思える。
そこでその理由を考えてみたのだが、「視線」は主体たる者から対象へ向かう「線」にフォーカスされているのに対して、「目線」では、主体の目の位置、座標にフォーカスされているのではないか。いわば、「視点」に近い意味合いで、「目線」が使われている、ということはないだろうか。
「消費者目線で」とは言えても、「消費者視線で」としてしまうと、何か違う気がする。
「消費者(の)視点で」とすれば、ありえるような気がするのだが、どうだろう。
しかし、そこからさらにうがって考えてみる。
「点」と言わず、「線」という語や字を使うことで、主体である"者"へのフォーカスから、者と対象への間へと"座"が移り、責任が曖昧になる、責任を回避しやすくなる(気がする)ということはないだろうか。
「視点」の責任はその目の持ち主に帰属するのに対し、「視線」では、その責任の所在があいまいになり、どことなく普遍化あるいは匿名化されるような気もする。