歴史研究722号を刊行いたします
2024年7月末に『歴史研究』722号を刊行いたします。
本号の特集は、「怨霊――恐怖と災いで渦巻く社会」です。
7月に入り、いよいよ夏本番です。「怨霊」といえば暑い季節にぴったりの特集になりました。
「怨霊」とは、受けた仕打ちに対して憎しみや恨みを持ったり、非業の死を遂げたりした人物が、その恨みや苦しみから人びとに祟りや災いをもたらす霊のことと定義されています。
代表的な人物としては菅原道真・平将門・崇徳上皇のいわゆる日本三大怨霊があげられ、怨霊といえば平安時代のイメージが想起される方も多いかもしれません。
しかし後鳥羽上皇や後醍醐天皇、足利直義など、中世においても実は「怨霊」となった人物は数多く存在します。
古代・中世は怨霊全盛時代といっても過言ではないでしょう。
そこで、今回の特集では、はじめに怨霊に関する概要を詳しく解説した論考を収録し、古代・中世において怨霊とみなされた人物の事例をあげ、怨霊となった経緯からその伝承までを読み解き、各怨霊はどのように生まれ、どのような災いをもたらしたのかを解説いただきました。
怨霊という存在が、貴族・武将・庶民にどのような影響をあたえたのか、怨霊という観点から当時の社会背景を読み解きます。
【目次】
巻頭随想 いま、伝えたいこと
嵯峨天皇・空海ゆかりの大覚寺 所 功
特集 怨霊――恐怖と災いで渦巻く社会
怨霊と生きる人びと 德永誓子
長屋王の変と怨霊伝承 大塚千紗子
怨霊となった井上内親王・他戸親王 桐生貴明
怨霊となった皇太子・早良親王 佐野真人
菅原道真の怨霊誕生から天神信仰へ 北山円正
室町・戦国期の足利氏と水無瀬御影堂 濱松里美
城井鎮房怨霊の跳梁跋扈 則松弘明
歴史小説 『相照』 第3回
忠臣 小栗さくら
城郭修覆図を読む 第3回
郡山城絵図――城の外郭まで描く城郭修理願絵図 神山 仁
戦国の国衆文書を読む 第23回
結城晴朝、厩橋城将北条景広を通じて上杉謙信の来援を求める 久保田順一
大和王権と古代氏族 第26回
筑紫氏の反乱の事情とその後 松尾 光
学生招待席
壱岐における神棚文化について 加藤紅葉
地域史新論
天文地震と震災復興政策――世田谷を中心とする事例 河原英俊
文化教養講座 歴史の質問帳(第32回)
感染症の歴史 渡邊洋一
新発見! 文化財ニュース 編集部
ヘッダー画像 土佐光弘/保元合戦図◆東京国立博物館蔵
ColBase https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/A-1805?locale=ja