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公安スパイが安倍晋三首相をマークした話(前編)

 筆者は、「公安(ハム)」に関与したことはない。
 大阪府警外事課の協力者(2006-2018)という立場を隠しながら生きていたが、誰にも理解されないので、「いわゆる『公安』のスパイ」ということにしている。

 「『公安』のしわざ」
 「『公安』にマークされている」
 
 よく目にする言説だが、「公安(ハム)」や「外事(ソトゴト)」という言葉が「市民権」を得ていないのだろうな、と感じている。
 
 2022年・2023年のアニメ作品でいえば『SPY×FAMILY』と『スパイ教室』は特に面白かった。しかし、これらの作品での描写の数々を、「全くの虚構」だととらえられてしまっては、元防諜関係者としてちょっと心配になる。『スパイ教室』でいえば、チーム灯火のメンバーの特技やキャラは、ほとんどすべて心当たりがある。さすがに暗殺・傷害や(物理的な)破壊工作をしたことはないが。
 筆者の体験談は、「小説」や「note記事の編集」という形で、Amazon Kindle を通して電子書籍として世に出している。

【CM。日本は「スパイ天国」か?その判断には関与しませんが、ロシア大使館員との会食風景を大阪府警外事課に「報告」した文書をコピペして、一部の実名を仮名に加工した拙著なら、電子書籍でお読みになれます】


 非常に残念なのは、政治学徒として、すなわち、学術論文として世に出すことができないことだ。誰が真実性を担保する役割を果たされる(たとえば、査読をする)のだろう。
 査読者の候補になりそうな方には何人か心当たりがあるが、その方のお名前がわかれば、その方が著書となっている論文等は、筆者の文献リストにあがる。とはいえ、下記の場面を「査読」して真実性を担保してくださる方は、おられないと思う(たとえ筆者が「真実」を書いていたとしても、その真実性を証明することは可能だろうか。はなはだ疑問である)。
 
 こんな場面を目撃したことがある。
 2012年10月17日。
 日本国際問題研究所のシンポジウム。
 講演者は、アレクサンドル・パノフ元駐日大使。
 場所は、東京メトロ霞が関駅から経済産業省を通って、虎ノ門駅方向に歩き、三井住友銀行のある建物の2階(3階だったかもしれない)。低層階ながら参加者とおぼしき方がエレベーターに向かうので、セキュリティーの観点から「不審者リスト」にデビューするのをさけて、筆者もエレベーターを利用していたことは良き思い出である。
 
 シンポジウム本編終了後の質疑応答の際。
 丹波實元駐露大使が、当事者でないとわからない言葉(人物名などは名のある政治家などだったが、その場にいなければ頭の上に疑問符がともる言葉の数々)を繰り返した後に、こう叫んだ。
 
「1997年7月24日に、経済同友会でね。橋本龍太郎総理と私の二人だけで作った文書なんですよ!」
 
 筆者がメモ帳にボールペンで書き込み、それをPCのメモ帳に書き起こした部分である。どの「文書」なのだろう。同時期の日露外交に関する文献なら、閑居の戸棚にある。しかし、橋本総理と丹波大使の二人だけでつくられる「文書」は、あるのだろうか。いわゆる、「密約」や「密命」といったものか。
 
 丹波大使も橋本総理も鬼籍に入った今となっては、1997年の30年後に外交文書公開という形で公(おおやけ)になるのだろうか。今日(2024年4月)からみれば、2027年といえば近い将来ということになる。公文書公開についての新聞記事が出るのは恒例行事なのだが、新聞記事として世に出るには、有識者コメントが必要とされる。公文書公開に向けてのコメントをもらえる有識者を、新聞記者は必死になって探している場面に居合わせたこともある。丹波大使が橋本総理と二人だけでつくった「文書」にコメントを寄せるリスクをとることができる有識者は、おられるだろうか。
 公文書公開にあわせて「橋本総理と丹波大使の二人だけで作った文書」が世に出たとしても、新聞記事にコメントを寄せる有識者が着目するかどうかはわからない。また、丹波大使がのべたように、本当に「橋本総理と二人『だけ』でつくった文書」であるならば、たとえそれが「真実」だとしても、学術論文になるのだろうか(脚注で言及をすることは可能だろうが)。お二人ともに鬼籍に入った今としては、研究者の(学術的業績としてはカウントされないであろう)エッセイや、作家(文章作家、映像制作者などの表現者)による創作として描かれるだろう。丹波實大使(故人)の名誉のために書いておくと、丹波大使は熱血漢である。作家の筆やアニメーターの絵と俳優・声優の演技によって、非常に魅力的な人物として「作品」ができることになっても驚かない。
 
 問題は、「二人『だけ』で作った」という部分を削除しないままに、筆者は論文を投稿する勇気はないことである。もっとも、筆者は論文公開ができないという制約で「研究活動」をしていたわけであるから、投稿資格すらあやしいのだが、それはそれとして、「親戚に一人はいる、謎のおじさんが書いた『ここだけの話』」くらいには仕上げられる。その「成果」が本稿である。
 
 あらかじめおことわりしておくと、筆者は、すでに色々な意味で、政治生命を失っている(社会生命を失っている)。だが、伝えたいことは、たくさんある。その一つが、「『いわゆる「公安」のスパイ(2006-2018)』として、最もマークしていたのは、安倍晋三首相(当時)だった」という、おそらく意外と思われることである。

【CM。大阪府警外事課の協力者になったのは、大阪にいた頃。前途に行き詰まって2009年12月12日付けで東京都町田市に転居した当時は、「協力者リスト(仮称)」になるとは思わなかったと思われます。】


 丹波實元駐露大使をひきあいにだしたが、日本国憲法およびその他の法律等を通して正当に選ばれた最高権力者(仮定)は、大阪府警外事課協力者(2006-2018)の筆者にとっては、「安倍晋三首相」だった。奇しくも「日本憲政史上最長の在職日数」を記録することになるが、前段の2012年当時にはそのような「予言」を聞かされたとしても、筆者(2012)は聞く耳を持たなかっただろう。選挙を通じて何が起きるのか、わからない。橋本龍太郎首相が自民党単独で圧勝しながら、その数年後には参院選で退陣する「歴史」を知っていたのだし、2009年の「政権交代。」はほんの数年前の出来事だったのだから。
 内閣総理大臣は日本政治の中で、おそらく、最高権力者だろう。だが、正当な手続きをへて「日本国民」の代表になったのだから、その正当性にもとづいて、決定権もあれば、制約もある。
 時として「権力の犬」とされる、警察。その手先の、協力者の筆者。
 警察官(国家公務員または地方公務員)としての身分こそ持たないが、筆者はその取引先なのだから、さぞかし「『権力の犬』の手先」として、市井を監視していたのだろう・・・・・・と想像されるかもしれないが、筆者の場合、全く異なっていた。大阪市内と違って、東京都町田市内ではほぼ毎年積雪することに欣喜雀躍しながら「而立」を迎えた。
 
 いちおうは、ロシア大使館員やロシア通商代表部職員とのやりとりや会食内容が取引先(大阪府警外事課のカウンターパート)への「情報提供」という観点からは、たしかに、「警察的」である。ペルソナ・ノン・グラータ(PNG:ピー・エヌ・ジー)につながる端緒をつかむことができたのならば・・・・・・という話はおとぎ話の世界だった(「『戦争』でも起きない限り、実現することはないだろう」という空想の世界だった。「『戦争』でも起きない限り」という表現の意味することが、この十年ですっかり変わってしまった)。むしろ、ロシアという国家が日本に駐在させている以上は、いわゆる「スパイ活動」を展開していて当然だ、という変わった価値観はもっていたが。
 しかし、ここで、筆者が協力者(取引先)になったことを考えてみると、「日露関係」という特殊性があらわれる。安倍晋三首相(故人)が現職当時に「日露平和条約(仮)」を目指すとすれば、北方領土問題の解決がたちはだかる。
 北方領土問題についての交渉や研究や運動は、日本国内に関していえば、「(日本)国民世論の高まり」が共通認識の課題となっていたと記憶する(2012年時点)。そうなれば、日露関係をめぐる大きな動きがあるとすれば、「安倍晋三首相」の動向が最大の関心事項となるのは必然だった。
 
 
【つづきは、コチラ↓】


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